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#153 EUへ紙が輸出しづらくなる?!『EU森林破壊防止規則』について解説!

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

EUが輸出入の規制強化

さて、今回は「環境問題」が絡んでくるテーマです。
これから紙を流通させていくうえで、切っても切れないキーワードですよね。
これまでも、「環境と紙」を題材にしたテーマは数多くやってきました。

今回は、ざっくりと「今後EUへの紙の輸出が厳しくなりますよ」といった内容です。
EUと言えば、皆さんも“環境への意識が高い”というイメージがあるんじゃないでしょうか。
そんなEUが、2023年6月に、とある規制を発効したんです。
業界の方ではご存知の方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。

『EU森林破壊防止規則(通称、EUDR)』です。
規制の中身については、後で解説していきます。
まずは、この規制が発行された背景について解説していきたいと思います。

EUDR発効の背景

まず、このEUDRが発効された背景ですね。
ズバリ、「森林伐採への危機感」です。

皆さんもご存知の通り、森林伐採は現在進行形で行われています。
国連食糧農業機関調べによると、2015~2020年の間に世界の森林は、年間1,000万haずつ減少しました。
6年間で6,000万haです。
日本の国土面積が3,779万haなので、この6年間で日本の国土面積の約1.6倍もの森林がなくなったということになります。
こんなに多くの森林がなくなっているのって、けっこう驚きじゃないですか?

最近だと、温暖化の影響で山火事が多く発生しているみたいなニュースもよく耳にするかと思いますが、一番の原因は、「農地転用」だそうです。
日本は人口が減少傾向にありますが、世界的には人口は増加傾向にあります。
つまり、「食料が足りない→食料を確保しなくちゃいけない→森林を農地転用」みたいな感じでしょうか。

主たる対象は、食品

とにかく、EUは、ここに危機感を抱いたわけです。
つまり、EUDRの主たる対象は、食品です。
「違法に農地転用された場所で作られた作物じゃないですよね?」を取り締まる規制です。

もちろんその範囲は、違法に伐採された木材、それからその木材からつくられた紙にも及びます、という訳です。

実は、これまでも『EU木材規則(通称、EUTR)』という規制が適用されていたんですが、それをきっつくした感じです。
まずは、規制対象範囲を増やした。これまでは、農作物とか森林関連製品は含まれていませんでしたが、それらを追加しました。
それから、管理体制を強化した。
とにかく、これまでの規制をきっつくしたと思っていただければ結構です。

規制の中身

それでは、具体的な規制の中身を見ていきましょう。

まず、いつから始まるか。
今年の6月に発効されてはいますが、この規制が実際に適用されるのはまだ先です。
大企業は2024年12月、中小企業は2025年6月に適用されます。

そして、どんな規制が適用されるのか。
「EU域内に輸入・販売、ないしは域外に輸出する際は、森林関連製品のサプライチェーンを細かく遡って、収穫地の緯度・経度情報を突き止めるという完全なトレーサビリティ確保が求められる。」というものです。
製品になるまでのサプライチェーン、それから、その原材料の収穫地の緯度・経度情報を報告する必要があるということですね。

そして、ここでポイントなのが、世界中の国がリスクで「高い」「標準」「低い」と、階層分けされているという点です。
A国はリスクが高い国、B国は標準、C国はリスクが低い国、みたいな感じです。
もちろん、高リスクの国で収穫された原材料は監視が厳しくなります。
逆に、低リスクの国で収穫された原材料は監視がやさしくなります。

それから、規制をしていくわけなので、当然、規制を破った場合の罰則もあります。
規制を破った場合、まず、該当事業者のEU域内での年間売上高の4%以上の罰金が科されたうえで、公共調達から一時除外されます。
年間売上高の4%以上の罰金ですよ!めっっっちゃ厳しいですね!(笑)

EUだけでなく国内の今後の動きにも注目が必要!

木材とか紙に関しては、FSCのような森林認証制度を活用したりすることで、割とスムーズにトレーサビリティを確保できる技術はあります。

とにかく、EUはかなり本気で環境問題と取り組み始めている、ということです。

日本では、違法木材の流通を禁じる「クリーンウッド法」が既にありますが、ここまで厳しい規制は今のところありません。

EUの動きを見て、国内の規制が厳しくなることも十分考えられますので、今後の動きも注目ですね。

というわけで、今回は、EUで新たに適用される『EU森林破壊防止規則』について解説してきました。
いかがだったでしょうか。

それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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