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成長ステージ(創業期~成長期)に応じたバックオフィスの組織づくり

皆さん、こんにちは!
私はこれまで30年来、様々な成長ステージの企業で人事を担当してきており、その経験をもとに今回はバックオフィスの組織づくりについてコメントさせていただきました。よろしくお願いします!

 さて今回は企業のバックオフィスに関して、成長ステージ(創業期~成長期)に応じた組織体制やオペレーション上の留意点について、私がかつて複数の企業を人事として渡り歩く中で経験してきたポイントについてコメントしたいと思います。フロントサイド(事業側)の組織には、その事業固有の要件があり各社で目指す方向性が異なりますが、バックオフィスに関しては概ね共通項で括れる部分が多く、それらを社員数を軸に組織体制(人員配置)、人材要件、業務(インフラ)の観点で整理してみます。

 ちなみにここでのバックオフィスは経理や法務、人事、総務、情報システムなど管理系機能組織(ファンクション)の総称として使っています。いずれの会社も創業期以降、まずはフロントサイド(事業側)に人材を優先的に配置していきますが、とはいえバックオフィスが脆弱では成長の足かせになりかねません。その意味で最適なバックオフィスを擁することは会社の継続的な成長を成し遂げるためにもとても重要ですが、一方でバックオフィスはコストセンターでもあり単純に強化一辺倒ともいかず、常にその時々で可能な限りミニマイズする必要がでてくるのです。

 今回は会社の成長ステージを社員規模に応じて4つの段階にわけ、その時々でバックオフィスの組織づくりのポイントとなることをお話ししてみようと思います。

①社員数~20名前後(創業期)

 社員数が20名くらいまでの時期は、まずは事業最優先で組織づくりが行われます。バックオフィス的な業務も小さいながらも必要ですが、多くの場合、社長や役員が外部のリソースなどを活用しながら自らまわしていくケースが多いのが実態です。よってこのステージにおいては組織づくりの面で、あまり工夫の余地はありません。

②社員数20~50名前後(創業期~成長期へ移行段階)

 <組織体制(配置)>
 この時期になると徐々に専任のバックオフィス人材を配置する必要がでてきます。とはいえまだ人数を多く割ける状況にはなく専門性については若干、目をつぶってでも、1人で複数のファンクションをジェネラルに対応できる人材を配置していくことになります。

 <人材の要件>
 そのような人材に必要な要件は、まずは社長や役員と円滑にコミュニケーションしタイムリーに指示を仰げること、加えてわからないことは社内外問わず詳しい人にひたすら貪欲に聞き続け解決をはかる、ある種のタフネスさや粘り強さです。このような人材は事業サイドの担当者の中から管理系の素養がある人が選ばれるケースがほとんどです。当然に事業への理解、会社へのロイヤリティも高く、さらには多少無理なことでも愚直に対応してきた人達ですので、経営陣の信頼も厚く、高い専門性の発揮とまではいかないまでも、成長ステージに見合った役割を十分に担うことができます。このような人材配置ができれば、このステージにマッチした安定したバックオフィスを構築することができるでしょう。
※補足ですが、この時期であってもお金周りは優先順位が高く経理機能は、担当者クラスでよいので専門性のある人材を配置しておく事が望ましいでしょう。

 <業務(インフラ)>
 可能であれば、オペレーショナルな業務の多い経理や人事のシステム(SaaS的なもので十分)は早めに導入しておく方が、のちのステージにおいて円滑に会社の成長をドライブできるはずです。ひとたびエクセルベースでの仕組みや紙のオペレーションにどっぷり浸かってしまうと、それを切り替えるための負荷は思いのほか大きいものです。そのため将来、システムの導入や最適化を図ろうとしても対応が後手後手となり会社の成長をドライブできない、そんな状況に陥りがちですので・・・。

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③社員数 50~100名前後(~成長期)

 ※弊社ROBOT PAYMENTもこのステージにあります

 <組織体制(配置)> 
 この時期になると、ファンクションごとに担当者が1名ないし複数配置され始め、チームが組成されるようになります。ただし1ファンクションに1つのチームをつくるほどの人数規模にはなりませんので、複数のファンクションをマネジメントしやすい単位にまとめるケースが多いでしょう。(機能論というより、人に応じたチーム編成をするイメージです)
 そしていよいよこの時期から強いバックオフィスの早期立ち上げを目指し専門性のある人材を社外から採用することになります。もちろん全員を専門人材とする必要はありませんので、いずれのファンクションもマネジメント、もしくは担当者のいずれかで専門性の高い人材を擁する編成としていけばよいと思います。

 <人材の要件>
 社外から採用する専門人材の要件としては、マネジメントクラスを採用する場合、できれば同規模の会社でハンズオンの経験があり、また加えて複数の会社での経験があると望ましいです。私自身も過去に経験がありますが、一定規模(数百人以上)の会社に長年在籍すると、いくら専門性があったとしても転職で人脈や会社固有の知識がゼロリセットされた際、パフォーマンスを発揮できるようになるためにかなりの時間を要してしまうケースが多いからです。一方で担当者クラス(20代~30代前半)であれば、一定の経験値と意欲があれば、柔軟性も高い世代ですしそこまで神経質になる必要はないですが、やはりカルチャーフィットだけはきちんと見極めた方がよいでしょう。

 <業務(インフラ)>
 この時期からオペレーショナルインフラの整備にも本格的に取り組む必要がでてきます。多くの会社でとりあえずエクセルや紙ベースでのオペレーションとなっているケースが多いと思いますが、やはりお薦めは早めにシステムを導入してしまうことです。システム導入の価値はもちろん効率化一元的なDB等ありますが、何より業務プロセスの標準化ができることに価値があります。例えば経験値があまりない担当者をアサインした場合、無手勝流でプロセスをつくってしまい、あとになって誰もやり方をトレースできないケースが頻繁に発生します。
 私は人事として過去に何度も痛い目にあってきたのですが、実はこのステージは社内外の人材が混在することもあり組織が不安定な状況に陥り人が辞めてしまうケースが間々あります。その際に業務が標準化されていないと、後任のリカバリーに相当の時間を要してしまいます。やはりこのステージでは業務プロセスやノウハウを属人化させないことがとても重要となりますので、その意味でシステムを早期に導入しておくべきと私は思います。
 ひと昔前はシステム導入したくてもERPなど高価なものが多く、予算的に身の丈に合わないとあきらめたものですが、昨今はSaaSで大きな初期投資の必要もなくリーズナブルな費用で導入できるようになってきていますので、バックオフィスとしては早期の成長ステージからシステム導入の優先順位を上げ、できるだけ早く導入をはかる方がよいと考えます。

 ※弊社も様々なSaaS系システムを導入していますが、使い勝手などを鑑み時に入れ替えをはかっています。自社システムでないため償却などの必要もなく環境に応じて比較的容易に入れ替え検討ができるのはSaaSのよいところですね。

④社員数 100名~数百名(成長期)

 <組織体制(配置)、人材の要件>
 このステージともなると各ファンクションごとの人数規模は格段に大きくなり、それぞれがチームとして独立、バックオフィスとしてはほぼ完成形に近いといっても過言ではなくなります。将来さらに人数が増えたとしても組織のフレームワーク自体は大きく変わることはないはずです。所属する人材もマネジメント、担当者ともに社内外で経験を十分に重ねた人材が配置されてきており、従前のステージのようにやるべきことや抜け漏れに日々追われるバックオフィスから脱却、オペレーションは安定化し、ついには将来を見据え先んじた取り組みもできるようになってきます。
 まさに順風満帆と言いたいところですが、残念ながらそうはいかないのが組織の難しいところです。そうです、この時期からは新たな問題に頭を悩まされることになるのです。専門家はそのプロとしての血が騒ぐのでしょう、つい現場の事業よりも、経営や全社最適、中長期の視点、法令遵守、社会通念等々の観点を優先させがちなのです。結果として事業サイドとバックオフィスの関係がぎくしゃくしてしまうことが往々にしてあり、せっかくバックオフィスが充実してきたにもかかわらず、プラスだけでなく負の側面が露呈してしまうのです。
 それらを回避し、せっかくの充実した組織力を活かしきるためにも、③のステージ後半から人員配置に工夫をこらしていくことをお薦めします。例えばですが事業サイドとバックオフィス間の人材ローテーションを実施するのも1つのよい方法です。事業のことを熟知し現場に人脈がある人材をバックオフィスに配置することで双方のコミュニケーションのパイプを確保するのです。過去の経験からもこの手法はとても有効ですし、実は人の成長の観点でもとても意味があります。事業人材がバックオフィスの経験をすることは、将来の経営視点を養う意味でも非常に貴重ですし、また逆にバックオフィスの人材が事業現場を経験することも同様に有益です。このように単に目の前の組織強化だけでなく、将来を見据えた検討が必要になってくるのもこの時期の特徴です。

 <業務(インフラ)>
 すでにある程度システム対応ができているはずですが、メンバーの専門性が強化されるとシステム面でも注意が必要です。専門性が高いがゆえに細かなところにまで気を配りすぎ、独自カスタマイズに勤しむケースがでてきます。もちろん自社のユニークネスを活かすためのカスタマイズは否定はしませんが、そのための開発費がかさむことはもちろん、先々バージョンアップや他のシステムと連携をはかる際、都度追加コストの発生や気づかないところでのリレーションにエラーが生じる等、後々悩まされることになります。ついてはシステムについては、決してその時々の一過性の自己満足に担当者が走ることないようマネジメントとしては留意が必要です。

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 以上、創業期から成長期にかけてのバックオフィス組織をつくるうえでのポイントについて自らの経験に基づきコメントさせていただきました。
 もちろんこれらは私の経験則ですし、それぞれの会社の置かれている状況によってあるべきバックオフィスの姿に違いは出てきますが、ある程度汎用性もあると思っていますので、1つのモデルとして参考にしていただければ幸いです。



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