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『稲盛和夫一日一言』4/28(金)

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 4/28(金)は、「大家族主義で経営する」です。

ポイント:経営者と労働者という対立関係ではなく、あたかも親子や兄弟のような関係で、互いに助け合い、励まし合いながら、苦楽を共にしていく。「大家族主義」とは、そうした従業員が経営者と同様に会社のためを考えて行動できるような関係のこと。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、大家族主義で経営するということについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 創業当初、何も頼るものがない中、私は「全従業員の心の絆を大切にするしかない」と思いました。ただ、「心」といってもあまりに漠然としているものですから、一番心が強く結びついているものは何かと考え、それは家族の絆ではないかと気づきました。
 損得など抜きにして助け合っていくのが親子であり兄弟姉妹です。そのような関係を会社の中に作りたい。それが「大家族主義で経営する」という考え方です。

 本来、株式会社とは、家族などとは全く形態の異なる組織です。経営者の会社に対する責任も有限であって、無限に責任があるわけではありません。ところが、家族のお互いに対する責任は、無限に近いものです。

 私は、中小零細企業であればあるほど、このような思想で経営すべきであろうと思っています。つまり経営者と従業員が、資本家と労働者という対立関係ではなく、あたかも親子、兄弟姉妹といった家族のような関係にある。そうした絆を大切にする経営をやっていこうと訴えてきたのです。

 ただし、大家族主義には家族間に見られるような「ちょっとぐらい失敗しても大目にみてくれよ」といった甘えが出てくるという弊害もあります。そうした甘えが出てくると、効率的な経営から逸脱してしまいかねません。

 ですから私は、「実力主義に徹する」というフィロソフィ項目で示しているように、単に年功や経歴を重視することなく、その人が持っている真の実力をすべてを測る基準とする、ということを全従業員に明言してきました。
 つまり、立派に仕事を遂行できる能力を持っていると同時に、人間としても尊敬でき、信頼できる人を組織の長に据える、ということを会社経営のベースとしてきたのです。
(要約)

 今日の一言には、「家族のような関係であれば、経営者は従業員の立場や権利を尊重し、従業員は経営者と同様に、会社のためを考えて行動できるはず」とあります。

 つまり、大家族主義とは、企業の規模によらず、家族のような関係を企業全体まで展開したものということができると思います。
 従業員はお互い他人同士ですから、どんな人間関係を築くにしても、鼻から事なかれ主義を決め込んでしまえば、他人の厄介事に首を突っ込むようなことはほぼ回避できるでしょう。しかし、相手が家族の一員であるとするならば、ちょっとしたトラブルや悩み事であっても、それはもう他人事では済ませられなくなります。

 昨今、人間関係の希薄化がどんどん進み、他人と一定の距離感を保持し続けなければ、一般生活にも支障が出る、といった人が増えているように感じます。そして悲しいことに、たとえ家族間であっても、こじれた関係しか構築できないといった人が一定数存在しているのもまた現実です。

 そうした社会環境においても、「大家族主義」が標榜する、損得抜きに助け合える、苦楽を共にできる家族のような信頼関係を大切にしていきたい。それが、京セラにおける社員同士のつながりの原点といえるものなのです。


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