『稲盛和夫一日一言』9/29(木)
こんにちは!
『稲盛和夫一日一言』 9/29(木)は、「買収・合併の心得」です。
ポイント:買収・合併とは、まったく文化の違う企業が一緒になることで、企業間の結婚のようなもの。そこには最大限相手を思いやる心が必要。
2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の「パートナーシップを重視する」の項で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
京セラでは創業以来、心の通じ合える、信頼できる仲間作りを目指し、これをベースに仕事をしてきました。したがって、社員同士は、経営者と従業員という縦の関係ではなく、一つの目的に向かって行動を共にし、自らの夢を実現していく同志の関係、つまりパートナーシップという横の関係が基本となっているのです。
稲盛名誉会長は、企業の買収・合併についても、この「パートナーシップを重視する」という基本的な考え方を持って対応してこられました。
経営者と従業員が上下の関係で経営が行われると、指示系統は上意下達(じょういかたつ)の形となり、どうしても上(経営者)が命令を出して下(従業員)を従わせるという関係に陥ってしまいます。例えば、経営者が世襲制の同族企業で働く従業員が、「どうせいくら頑張っても自分は社長にはなれない。つまるところ、自分たち従業員は経営者一族の財産を増やすために働かされているだけだ」と開き直ってしまったら、その会社は成長し続けることはできないでしょう。
以下、実例をひとつ紹介します。1979年(昭和54年)9月、京セラは車載用トランシーバーのOEM生産で急成長したものの、その後経営が立ち行かなくなっていた音響機器メーカーのサイバネット工業に対する支援・グループ入りを発表しました。それに先立つこと半年、稲盛社長(当時)は、京都本社にサイバネット工業のT社長以下幹部10名を招いて懇親会を開きます。互いに酒を酌み交わしながら率直な意見をぶつけ合う中、稲盛社長は意を決して立ち上がられ、「皆さんと会って一緒に頑張れる人たちだと思いました。結婚しましょう!」とサイバネット工業への支援を表明されたのです。
私は本社経営研究部在籍中、京セラ役員OBの方々に、現役時代を振り返って、稲盛名誉会長との接点やご自身のフィロソフィ実践事例などを自由に語っていただく「OBインタビュー」という企画を担当していました。紹介したサイバネット工業との結婚話は、そのとき懇親会に同席された幹部社員のSさんから直接お聞きしたものです。
当然ながら、まったく文化の違う企業が一緒になるには多きなリスクが伴うはずです。特に合併する側の企業にとってはいきなり負債を抱えることもあるわけですから、その判断は慎重にならざるを得ません。そこに、最大限相手のことを思いやる「買収・合併は結婚のようなもの」という考え方を持って臨むことができれば、共にハッピーに歩んでいける道も見えてくるのではないでしょうか。