『稲盛和夫一日一言』5/30(火)
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5/30(火)は、「仕事をする人の完成」です。
ポイント:「仕事の完成よりも、仕事をする人の完成」という言葉がある。哲学は懸命の汗から生じ、心は日々の労働の中でこそ錬磨されていく。
2004年発刊の『生き方』(稲盛和夫著 サンマーク出版)の中で、働くという営みの尊さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
お釈迦さまは、悟りの境地に達する修行法のひとつとして、「精進」することの大切さを説かれています。私は、それが私たちの心を高め、人格を錬磨するためにもっとも大事で、一番有効な方法であると考えています。
一般的には、労働とは生活するための糧(かて)、報酬を得るための手段のひとつであるから、単価のいい仕事を選んでできるだけ短い時間で高い報酬を得、残った時間で自分の趣味や余暇を楽しむ、それが豊かな人生の過ごし方だといわれています。そのような人生観を持っている人のなかには、労働をあたかも必要悪のように訴える人もいます。
しかし働くということは、人間にとってはもっと深遠かつ崇高で、大きな価値と意味を持つ行為です。そこには、欲望に打ち勝ち、心を磨き、人間性をつくっていくという副次的な機能、効果があります。
ですから、日々の仕事を精魂込めて一生懸命に行っていくということがもっとも大切であり、それこそが、魂を磨き、心を高めるための尊い「修行」となるのです。
働くという営みの尊さは、そこにあります。心を磨くというと、何か宗教的な修行などを連想されるかもしれませんが、心から仕事を好きになり、一生懸命精魂込めて働く。それだけでいいのです。
ラテン語に、「仕事の完成よりも、仕事をする人の完成」という言葉があるそうですが、その人格の完成もまた仕事を通じてなされるものです。いわば、哲学は懸命の汗から生じ、心は日々の労働の中で錬磨されるのです。(要約)
汗水たらして働かなくても生きていけるごく少数を除けば、私たちは実社会に放り出される前後の年齢から、労働することによって報酬を得るという行為を、好むと好まざるとにかかわらず行ってきています。
ある転職サイトが行ったアンケートで、高額の宝くじが当たったら今の仕事はどうするか?という質問に対して、「辞める」「辞めない」が約40%弱で、ほぼ同じ比率。
また、「宝くじが当たったら今の仕事を辞める」と答えた人に、どの程度の額なら辞めるかを尋ねたところ、「1億円以上」と答えた人の合計が70%弱で、決断するためのボーダーラインは「1億円」あたりにありそう、との結果だったそうです。
2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)の中で、懸命に働くことをせず怠惰に生きることが、人生にもたらすものについて、名誉会長は次のように述べられています。
例えば、あなたが高額の宝くじに当たって、一生遊んで暮らせるだけの大金が手に入ったとしましょう。しかし、その幸運が本当の幸福をもたらしてくれるものではないことに、必ず気づくはずです。
目標もなく、働くこともせずに毎日遊んで暮らせる。そのような自堕落(じだらく)な生活を長年続ければ、人間として成長することができないどころか、きっと人間としての性根(しょうね)も腐らせてしまうことでしょう。そうすれば、家族や友人などとの人間関係にも悪い影響を与えるでしょうし、人生で生きがいややりがいを見つけることも難しくなると思います。
安楽が心地よいのは、その前提として、労働があるからに他なりません。毎日、一生懸命に働き、その努力が報われるからこそ、人生の時間がより楽しく貴重に感じられるのです。それが労働を通じた人生の姿というものなのです。(要約)
「精進」、まさに日々懸命に働くことが「修行」となり、心を磨き、人間性を高めてくれる。そう固く信じて、日々過ごしていこうと思っています。