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『稲盛和夫一日一言』 6月24日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月24日(月)は、「善意と悪意」です。

ポイント:同じ問題を扱ったとしても、善意で考えるのと悪意で考えるのとでは、おのずとたどり着く結論は異なってくる。「思いやり」のありなしがその差を生む。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、善に見る習慣をつけることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 正しい判断を行うには、状況に対して正しい認識ができなくてはなりません。しかしそれは、「言うは易く行うは難し」です。

 真実は一つしかないのですが、その認識は観察者の視点によって左右されます。現象は、それを観察する人の心のフィルターを通して見えるので、同じ事実であっても善にも悪にも解釈されるのです。
 それは私たちが毎日経験していることです。見えている事実というのは、心のフィルターで「漉(こ)しとられた」ものなのです。

 例えば、ここに全力で働いている人がいるとします。その人のことを、たった一回の人生を人一倍働き、一生懸命に生きようとしているまじめな人だと見るならば、その働きぶりは善といえるでしょう。
 しかし、家族や自分の健康も顧みず、仕事を楽しむことも知らず、ただガムシャラに働く「働き中毒」だと見るならば、その働きぶりは悪とも考えられるわけです。

 一概に、どちらが正しくてどちらが間違いだということはできません。世の中の出来事はそう簡単に判別できるものではないからです。しかし、どうせ見る人の主観に左右されるのであれば、人の善意を信じ、物事を善に見ていく習慣をつけるべきではないかと私は考えています。

 否定的な見方は、問題の解決をもたらすものでも、また人を成長させるものでもありません。しかし、肯定的な見方にもとづく認識や判断は、人の成長を促すことにつながり、必ずや善き結果をもたらしてくれるはずです。(要約)

 また同著の中で、思いやりの心が信頼につながるとして、名誉会長は次のように説かれています。

 経営者は、率先して積極的に仕事を進め、従業員の良い手本となるべきです。また誠実でなくてはなりません。しかしさらに重要なことは、後ろを振り返って、本当に従業員が自分についてきてくれているかどうかの確認を忘れないことです。

 従業員が経営者についていくには、経営者を信頼しているだけでなく、「尊敬」していることが必要です。そしてそのような尊敬の絆を築く唯一の方法は、日々、心と心のふれあいを大切に仕事をすることなのです。

 忙しさのあまり、従業員との接触を怠ると、いつのまにか思い上がった、権力を振り回す経営者となってしまうかもしれません。ですから、あらゆる機会を見つけて従業員との触れあいを大切にすることが必要です。
 一緒にくつろいでコーヒーを一杯飲むとか、通りすがりにその仕事ぶりに対してねぎらいの言葉をかけてあげる、といったことが大切です。

 そうしたちょっとした、心のこもった気づかいが、従業員の心を打つのです。そして、そのような思いやりにもとづく触れあいが長く続くことによって、社内に和やかな人間関係と調和が醸成されていくのです。

 経営は、信賞必罰(しんしょうひつばつ)でなければなりません。しかし、厳しい姿勢の陰に温かい思いやりが垣間見られる、そうした経営者の行動があってはじめて、従業員はついてきてくれるのです。(要約)

 ここでは、経営者が持つべき姿勢の一つとして思いやりの心を持つことの大切さが説かれていますが、これはどのような相手に対しても言えることではないでしょうか。

 今日の一言には、それを次のような事例で示されています。
 「例えば、人と議論をするにしても、何とかやり込めてやろう、悪いのは相手のほうだから、その非を認めさせてやろうと思ってやるのと、相手も困っているのだろうから、いい解決策を一緒に考えようと思ってやるのとでは、同じ問題を扱っても結論はおのずと異なってくる」

 「情けは人のためならず」
 人のために行った善き行いは、必ずその当人に返ってきます。日々の行いを通して、相手に対する「思いやり」を片時も忘れることのないよう、心の中を善に満ちた状態に保っておきたいものです。


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