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『稲盛和夫一日一言』 8月19日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 8月19日(土)は、「本当のチャレンジ」です。

ポイント:「チャレンジ」という言葉は、困難に立ち向かう勇気、長期の苦労にも耐え得るスタミナといった裏付けがあってはじめて口にできるもの。
単なる「蛮勇(ばんゆう)」とは異なる。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、「チャレンジ精神を持つ」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人は得てして変化を好まず、現状を守ろうとしがちです。しかし、新しいことや困難なことにチャレンジすることなく現状に甘んじることは、既に退歩が始まっていることを意味します。

 「チャレンジ」とは、高い目標を設定し、現状を否定しながら新しいものを創り出していくことです。「チャレンジ」という言葉は勇ましく非常に心地よい響きを持つ言葉ではありますが、そこには常に、困難に立ち向かう勇気、どんな苦労をも厭わない忍耐、努力といった裏づけ、あるいは前提が必要なのです。
 
 逆に言えば、勇気にもとる人、忍耐力に乏しい人、努力を怠る人、そうした人に「チャレンジ」という言葉を軽々しく使ってもらっては困る、ということです。
 軽々しく挑戦すれば、とんでもない大失敗を招いてしまいかねません。どんな障壁にぶち当たろうとも、それを乗り越えて努力を続けていくというタイプの人でない限りチャレンジしてはならない、と私は思っています。

 「チャレンジ」とは、戦いを挑むということですから、そこには格闘技にも似た闘争心が必要です。つまり、新しいことを成し遂げようとするならば、「何があってもこれをやり遂げるのだ」という、野蛮人にも似た貪欲さ、闘争心が必要なのです。そうでなければ、いくら「チャレンジ」という言葉を口にしてみたところで、ただ空ろに響くだけでしょう。(要約)

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)の「裏づけを持ってチャレンジする」の項で、企業経営におけるチャレンジについて、名誉会長は次のように述べられています。

 企業経営において、新たなる革新への挑戦を続けていくには、実は大変な困難と危険が伴いますから、そこには測り知れない労苦、忍耐、勇気が必要となります。
 加えて、そうした精神的な準備とともに必要となってくるのが、新しいプロジェクトを企画し、それを確実に完成させるための豊かな資金力を伴う健全な財務内容です。


 何かを革新しようとするならば、何物にも動じない信念と勇気、ひたむきな日々の努力、そして経験によって培われた確かな努力が必要です。
 チャレンジし、イノベーションをおこすには、そうした徹底した精神的準備と財政的な裏づけが必要なのです。
(要約)

 軽々しく「チャレンジ」という言葉を口にする人に対して、「それは単なる蛮勇ではないか。裏づけ、勝算を示してみろ」と迫るのは、勢いだけで突っ走ろうとする身勝手な行動の抑止には大変有効な手段となります。
 しかしブレーキを踏み続ければ、次第に推進力は失せ、その後の成長もおぼつかなくなるのは目に見えています。

 陸上の世界には、アクセル筋とブレーキ筋を効率的に使い分けることでパフォーマンスを各段に向上させようとするトレーニング方法があるそうです。
 ブレーキ筋とアクセル筋の使い分けができていない人の走りは、例えば自転車に乗る場合、ブレーキレバーを握ったまま全力でペダルを漕いでいるようなもので、かなり非効率な運動となります。
 そうならないためには、アクセル筋をメインで活動させ、ブレーキ筋の活動は最小限に留めるといった身体操作能力が不可欠です。

 最も大切なのは、「チャレンジ」するための裏づけ探しやその確保に終始することなく、果敢に「チャレンジ」していこうとする勇気を持ち続けることではないでしょうか。


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