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ダーツの真ん中

2年前、どこかのバーで出会った自称経営者のおじさんに、
「ビジネスが上手くいくためには何が必要だと思う?」
と、問われたことがあります。

「本当にそれが正しいと思う?なんで?」
持論を展開した後、再度聞かれました。

「素晴らしい回答だと思うけど、実は間違っている。」

ある程度自信があった僕は、言い返すように
「しっかり勉強して考えた、ケースによっては成り立つ正しい答えだと思っている」
と伝えると、自称経営者は
「君は、ダーツで6点のところに刺さっている矢を指さして、これはブルです。と言い張っているのと同じことを言っている。」
「なんで?と聞くと、それが正しいと思ってます。だって勉強したから。っていってるのと同じだよ」
と言ったのでした。

反射的に、少しイラっとしてしまい、その後の流れはあまり覚えていませんが、その帰り道に、頭の中に残る太字のセリフを何度も何度も繰り返し、いくらかの焦燥感と学びを得た充実感が湧きあがったことを覚えています。


正解がない世界といえばそれまでだけど、回答の抽象度を上げれば上げるほど正解はぼんやりみえるはず。

「ビジネスが上手くいくためには何が必要か」

その問いは、どのビジネスなのか、など細かくすればするほど具体的な回答にもなるけども、彼は大きな塊として僕に尋ねた。その解答は、僕の抽象度のコントロール次第では当たる確率は大いにあっただろう。だけど、それすらも外れていた。

いや、外れていなかったのかもしれない。
きっと彼は、その質問をする前に、固定観念とくだらないプライドを奥底にしまっている僕の本性を見透かしていたことだろう。

自分の視点だけで生きるな
課題の定義を疑え
経験から学べ

あげればキリがないほど示唆に富んだ衝撃だった。

もしかすると、彼は誰に対しても同じ質問をして、どう答えても同じセリフで返していたかもしれない。高尚な人種になれたような悦に浸ることが楽しみだったのかもしれない。

だけど、自分を優秀であると勘違いしていた男にとって、その言葉は真ん中に突き刺さる矢よりも鋭く、今も頭に痕跡が沈み込んでいるのです。

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