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山本一力「辰巳八景」、ほぼ読み終わり。(読書記録_09)

こちら、ほぼ読み終わり。

2007年発行


山本一力さんの小説は読んだことがなかったのですが、図書館で立ち読みした雑誌のインタビューを見て興味を持ち手にとりました。

江戸時代の人情話、恋話が八つの短編に収められています。

縄田一男さんの解説にある通り、長唄の「巽(辰巳)八景」をなぞらえた八つの短編であり、各篇に永代、八幡、佃島などの”八景”が登場します。

また、各篇、以下の通り主人公たちの職業が丹念に描かれているのも興味深い。

(一)永代橋帰帆・ろうそく問屋
(二)永代寺晩鐘・煎餅屋
(三)仲町の夜雨・鳶職
(四)木場の落雁・材木商
(五)佃町の晴嵐・医者
(六)洲崎の秋月・芸者
(七)やぐら下の夕照・飛脚
(八)石場の暮雪・履物職人

煎餅屋さんの話が特に好きです。

煎餅の香ばしい香りが漂ってくるようでした。
主人公のおじゅんの初恋も匂いにまつわるもので、短編自体が芳しく色気があります。

また、全篇、庶民がけなげに生活を打ち立てていく姿に引き込まれます。

大火や、公儀による米価コントロールなど、庶民の生活を脅かす出来事も節々に描かれています。

◆◆

江戸時代の風景とはだいぶ変わってしまっているものの、永代通りをぶらぶら散策するのは好きでした。

永代橋からの眺め。


八篇目の舞台の石場近く。
小津安二郎生誕の地にかかる「小津橋」。


門仲の、おばちゃんが怖い居酒屋、、


「辰巳八景」を読み進めている一方で、「れきちず」という地図サイトを知りました。

江戸時代の地図を現代の地図デザインで見ることができます。

↑の通り、富岡八幡宮の南はもう海。

この辺り、深川の井戸水は塩辛くて飲めない、と小説で描かれているのですが、地図を見てより納得感が深まりました。

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