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Frank Zappa “200 Motels”

1971年にFrank Zappa総指揮(監督・原案・出演)のもと制作されたファンタジー・コメディ映画。

ザッパの頭ん中にある200のモーテルを共に駆け巡ろうじゃないか

シュールリアリスティック・ドキュメンタリー

12月17日には、50周年を記念した6CD構成のスーパー・デラックス・エディションの配信が始まった。173曲(約7時間17分)が収録されている。名マスタリング・エンジニア、バーニー・グランドマン(Bernie Grundman)がリマスターを担当し、ザッパの息子アーメット・ザッパと、ザッパの専門家ジョー・トラヴァースがプロデュースを手掛けている。

MUSIC

(元の34曲)

楽曲名だけでもその狂気さが分かるだろう

Disc 1
1. なかば詐偽/ダイレクト・フロム・ハリウッド序曲
2. ミステリー・ローチ
3. ダンス・オブ・ザ・ロックン・ロール・インタビュワーズ(インスト)
4. この町は包装されたツナ・サンド(プロローグ)
5. ツナ・フィッシュ・プロムナード
6. 普通の人たちのダンス
7. この町は包装されたツナ・サンド(リプライズ)
8. 包装されたツナのボレロ
9. ロンサム・カウボーイ・バート
10. ツアーは人の頭をヘンにする
11. スナックでもいかが?
12. レッドネック・イーツ
13. センターヴィル
14. 彼女は顔を塗りたくった
15. ジャネッツ・ビッグ・ダンス・ナンバー
16. 刺激的なスクワット
17. ミステリオーソ
18. まっすぐ突っ込め
19. 退屈したヴァイオリン弾きを誘惑するルーシー

Disc 2
1. 俺はタオルを盗んでいるんだ
2. 歯科衛生的ジレンマ
3. こんな生活、どこが面白いんだ?
4. ダディ、ダディ、ダディ
5. ペニスの寸法
6. 今夜は今朝の俺に何をもたらしてくれるのだ
7. 古びた箱に描かれた修道女の服
8. マジック・フィンガーズ
9. モーターヘッドの深夜の農場
10. 俺たちのイモリの上にふる夜霧
11. 自分のイモリを夜に探す若者
12. 彼にブロスを料理してあげたい娘
13. その娘の夢
14. ちくちくする緑色のセーターとコーデュロイ・ポンス
15. ストリクトリー・ジェンティール

NOTE I

ザッパ・フリークなら周知の1971年に製作された伝説のカルト・ムービーが、貴重な日本語字幕版にてDVD化。 これは国内で1993年にオンエアーされたTV映像がマスターとなるもので、監督・原案・出演の3役をこなしたザッパの映像作品として、過去にはVHS等でも流通していた中、もちろん現在入手困難。そしてそれらよりも画質クオリティーは向上しています。そしてマザーズがツアー中に立ち寄った旅先で繰り広げられた物語という設定の、滅茶苦茶な世界観が描かれており、モンティパイソン風の寸劇、TVショーのパロディ、ミュージカルなど映像のミクスチャーともいうべきこの作品は、やはり字幕がないとかなり理解不能なもので、そのあたり今後オフィシャル化されない限りは、本アイテムがうってつけとなるもの。 また映画本編のザッパ本人役にリンゴ・スター、そしてキース・ムーンが修道女役で登場と、キャストも楽しめるフリーキーかつ、鬼才ザッパが作り上げた音と映像のめくるめく虚構の構築世界を堪能できる1時間40分。

NOTE II

(VHS裏面より抜粋/翻訳)

“Just the right touch of insanity… a stunning achievement.” — Robert Hilburn, Los Angeles Times

『200 Motels』は、フランク・ザッパが今日のロックビデオの先駆けとして制作したサイケデリックな作品であり、路頭に迷ったミュージシャンをどうするかという切実な問題に対する彼の陽気な回答である。モーテルのタオルや灰皿を引き剥がすべきか、それとも単にグループを脱退すべきか?無慈悲なザッパの暴虐に反抗する勇気はあるのだろうか?

ザッパのように無鉄砲なThe Mothers of Inventionは、“典型的な”アメリカの町、センタービルに大混乱をもたらす。Rancid Boutique、Cheesy Motel、Fake Nightclub、Redneck Eats Cafe、グルーピー、そして正真正銘のメインストリート。ザッパの変装でオイルランプを持ったリンゴ・スター(Ringo Start)がナレーションを担当。セオドア・バイケル(Theodore Bikel)は政府機関のランス・ムハミッツ。

「Valley Girl」「Dancin' Fool」「Don’t Eat the Yellow Snow」などのヒット曲を生み出したヒステリックで面白い男であるザッパは、ビートルズの映画『A Hard Day’s Night』以来、最も斬新な映画音楽ファンタジー・コメディーで、その才能を再開花させている。— Daily Variety

NOTE III

(NY Timesの記事を翻訳)

ロック界のオーソン・ウェルズことフランク・ザッパが作曲し、ザッパのマザーズ・オブ・インベンションとロイヤル・フィルハーモニーが演奏し、ビデオテープを使った非常に巧妙な視覚効果*があり、『200モーテル』というタイトルが付けば、自称・シュールなドキュメンタリーも悪いものではないだろう。昨日、「Plaza Theater」で公開されたこの映画の一番の見どころは、なんといってもそのタイトルだろう。このタイトルは、ロックグループのツアーメンバーの“第2の故郷”である、似たようなワンルーム・アパートが無限に連なる中で、「グルーピー、温かいビール、チーズバーガー、溢れる灰皿、効率の良い配管、空気を清浄せずに凍らせる効率の悪いエアコン」などのイメージを鮮明に呼び起こすものである。『200 Motels』も悪くはないのだが、いろいろなことが同時に進行する映画なので、あっという間に疲れてしまい、しまいには退屈してしまう。『200 Motels』の核心は、「主観的な『A Hard Day's Night』(初期のビートルズを必要とする)」である。ザッパは、フランク・ザッパ(演リンゴ・スター)とマザーズ・オブ・インベンションが、アメリカの大きなセンタービル(“子供を育てるには本当にいい場所”)のような宇宙を巡りながら、そのツアー巡行が一体どんな感じなのかを、多少誇張しつつも貶して描いている。そこは、「バカなスローガン、孤独、ニコチンまみれのアグレッシブな少女たち」の場所である。 可笑しいサイト・ギャグ**や、退屈してモーテルに閉じこもるミュージシャンが盗んだタオルを吸うしかなくなる非常に面白いアニメパート(「歯科衛生的ジレンマ」)、ある意味で基準に満たない全ての男女に捧げるとんでもないオラトリオ***、ちょっとした振り付け、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅」への言及、少なくとも数十の潜在的に面白いアイデアが、この映画はスピード狂並の集中力をもっているので全く展開しないのである。「 床の上の縞模様が解けて体に巻きつくように見えるとき」、「青い塊が映画のフレーム内を踊り、ついには誰かの鼻にくっつくとき」、「普通に撮影された顔が線画のように溶けて同じ顔になるとき」など、ノンストップの視覚効果は最初は驚くほどである。しかし、このようなことは、スコアに興味がある人にとっては、非常に邪魔なものでもある。私自身、すぐに怖気付いてしまうので、淡い色の塊のように映画の中を出たり入ったりするさまざまなマザーズや、すぐに識別できるがいつも少し落ち着きのないリンゴ・スターに反応することはできないし、識別することさえできないと分かった。ライトショーのように、『200 Motels』には特定の焦点がなく、主に下手なジョークと派手な視聴覚効果のアンソロジーで、そのうちのいくつかは心を広げるかもしれないが、全部を合わせるとノボカインのオーバードースのようである。

↑Vincent Canby「Film: Frank Zappa's Surrealist '200 Motels'」『The New York Times』1971-11-11

*多重露光、ソラリゼーション、擬色、速度、速度チェンジなど。

**笑いを生み出す要素を大きく分類すると、バーバル・ギャグ Verbal Gag(言葉を媒介するもの)とサイト・ギャグ Sight Gag(視覚によるもの)に二分できる。

***キリスト教的題材をオーケストラの伴奏による独唱、合唱を用いて劇的に構成したもの。

NOTE IV

ロイヤル・フィルを含む『200 Motels』の主要シーンはロンドン郊外の「パインウッド・スタジオ」にて1週間で撮影され、マザーズ・オブ・インベンション、ロイヤル・フィル、リンゴ・スター、セオドア・バイケル、キース・ムーンが出演した。しかし、監督のトニー・パーマー(2009年に『200 Motels』をリイシューした際)は、ザッパのトランク一杯の資料から得た脚本のすべての要素は、制作中に完成したと主張している。ビデオテープで撮影され、BBCで使用されていたテクニカラーのフィルムプリンターを利用して35mmフィルムに転写された初の長編映画である。(英語版Wikipediaより)

COMMENTS

「バンド+オーケストラ」という観点でいうと、ほぼ同時期にPink Floydの『原子心母』(1970年10月5日リリース)も存在していて、改めて凄い時代だなと。厳密にいうと、「Atom Heart Mother」はスタジオ・レコーディングする半年以上前に、ライブで初披露しているため、いかにPink Floydが先進的であったかが窺える。

ザッパの頭ん中ヤバい

今まで見てきた映像の中でもトップクラスにぶっ飛んでる。

いつだって時代の先をゆくアーティストや、時代に翻弄された人々の精神状態を映像におこすと、このような到底考えられないものが出来上がる。

フランク・ザッパとリンゴ・スター

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