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船の"合格証"? 船級協会とは  造船のおもしろ豆知識集#12

導入編はこちら↓

突然ですが、建物を建てる時には建築基準法という規制(ルール)がありますね。実は船の世界にも建造や運航に関してのルールがあります。ここでは造船に関係してくるルールについて話を進めたいと思います。

国際航海をする船には、自国のルール(法律)を守りさえすればよいというわけにはいきません。そのため、国際条約にしたがってルールを制定し、検査をする船級協会という組織が存在します。

船級協会は、主に次のようなことをする第三者機関です。
①規制(ルール)を作る

建造時には
②船自体や搭載機器が、規則に従っていて、技術的に問題がないことを図面でチェックして、承認する。
③実際の船や搭載機器の試験に立ち会ったりして、実際の使用に際して問題ないことを承認する。
④船の船級登録業務

そのほか、建造後には、
⑤定期的な検査を実施する(クルマの車検に相当)というのも船級協会です。

ちなみに、各国に船級協会がありますが、世界でも一番規模が大きくて、さらに自分もお世話になったのが、日本海事協会(NK)です。

さて、船級協会の起源について、ネットで調べたことや聞いた話をざっくばらんにします。
船級協会の生まれはイギリスで、時代は18世紀後半です。
昔、船を使って航海する貿易といえば、ハイリスクハイリターンな商売でした。船の建造には多額のお金がかかるし航海にもお金がかかります。資産家たちがその船の建造や航海に投資をするのですが、当時の船は途中で沈没してしまうこともあったようです。そこで、損害があった場合に補償される海上保険の制度が必要になってきます。そして、その保険の対象となる船を技術的に評価する必要がでてきます。そのため第三者機関として、ルール(規則)をつくり、検査をして、船の安全性や信頼性を技術的な目で見極めて船に等級をつける機関ができました。それが船級協会の始まりです。
そして現在の船級協会の働きも同様に、国際条約に沿った船級規則(ルール)を制定して管理し、必要な図面をチェックしたり、機器の検査や試験に立ち会って、合格なら承認を出していきます。
「船級」というように船の等級をつけることからこのように呼ばれますが、合格を与える、といったほうが分かりやすいもしれません。
等級に関して言うと、例えば氷を割って進めるような砕氷船の場合は、アイスクラスというプラスアルファの等級をつけたりすることもあります。

さて、船のオーナーが、船体の保険を適用する場合、船級協会のルールに従い、検査合格し、登録された船でないと適用できません。実質、国際航海をする商船*で船級に登録されていないのはありえないといえます。
(* 商船と言っているのは、例えば護衛艦は防衛省が定めたルールに従うということからから対象外ということです。)
ということで実際は、造船所で商船の設計の仕事をすると、絶対守らなくてはいけないルールという位置づけで、前半のような生い立ちは知らなくても実質仕事はできてしまいます。
でもこのような背景を知っていると面白いですよね。

以上、船級協会についての大枠の説明と歴史についてでした。

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