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産業医を精神科医にお願いするメリットとデメリット

昨今、産業保健においてメンタルヘルスが大きな課題となっています。

50人以上の従業員を雇用する事業場では産業医の選任を義務付けられており、精神科を専門とする産業医を希望する企業もあります。

はたして精神科医を産業医として雇用することはメリットがあるのでしょうか?精神科も産業保健も両方ともに精通する医師は多くはありません。

実際産業保健の現場で悩む事例の多くは労務上の問題であり、精神科医療よりも就業上のメンタル不調の取り扱いを熟知する産業医の方が実務的だと思います。

精神科医に依頼するメリット

精神科医療を専門としている医師である限りは専門領域のスキルは持ち得ていると考えていいでしょう。

メンタル不調を訴える従業員や、それが疑われるケースにおいて、精神科や心療内科に受診が必要かを見極めることは可能です。

そのような場合に、紹介先を考えたり、情報提供により治療と就労の情報共有がやりやすい利点はあります。

復職の際ですが、精神疾患の病態や、主治医からの情報提供の把握はある程度はできます。しかし、短い面談時間で把握できる情報は限られています。

内服薬からの病態把握や就労への影響を予想して、面談時に確認することなど熱心な医師であれば、一般的な助言はしていただけるかもしれません。

産業医面談は診断や治療を行う臨床場面ではありません。就業上、精神症状からの影響の有無が優先的評価項目です。

産業医が担う役回りとは

つまるところ、メンタルヘルスにおける産業医の役割は、従業員を含め、主治医、管理監督者、人事部などの関係者の橋渡しや調整役です。

内服薬による眠気やうつ症状による能率減退など、精神疾患による影響は、あったとしてもアプローチできるのは主治医になります。

症状や再燃の配慮を実施するのは、安全配慮義務の代理履行者である管理監督者になります。労務上の対応は人事部の管轄です。

産業医に求めるべきスキルとは

このような産業保健体制を理解し、それぞれの情報を抽出し、共有を促すなどの調整が産業医に求められる役割です。

どんな疾患で症状であっても就労上問題なければ、そのまま就労で構わず産業医の出番はほぼありません。

就労状況から治療が必要と思われれば主治医に情報提供すればいいです。このようなケースでは精神科医療を知っている方が敷居は低いかもしれません。

就労上の配慮が必要な症状であれば、主治医に情報提供依頼を出し、その内容を職場に伝える対応が望まれるでしょう。

まとめ

産業保健のメンタルヘルスにおける産業医の役割としては、関係者間の調整役が重要です。

精神科医療を熟知していることは望まれますが、現場の状況や衛生管理規定に即した支援を行える産業医の方が現場としては重宝されることかと思います。

さらにいえば、メンタル不調者に優しく、かつ、職場への影響も配慮された衛生管理規定や産業保健体制の再構築するスキルを持つ産業医こそが、求められる人材なのではないでしょうか。

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