おやじパンクス、恋をする。#222
DJが音楽のボリュームを上げて、会場内は元のガヤガヤした雰囲気に戻った。カウンター前に人だかりができ、バンバンと酒が売れていく。
人はいつの間にかまた増えていて、涼介らのライブ動員は確実に超えただろうな。フロアはもう人とその熱気でいっぱいで、俺はなんでこんな胡散臭いパーティに人が集まるのかマジで分かんなかった。
俺達は雄大が来ねえかとそれぞれ目を凝らしていたから、梶商事の社員らしき人間がフロアをウロウロしながら客に声をかけ、そのまま佐島さんらのいる奥のテーブル席、厳密に言えばその周辺のテーブル席へと連れて行っていることにも気がついた。
そこで客は嵯峨野と喋ったり何か書類のようなものを受け取ったり酒を振る舞われたりしていた。そういうことが繰り返し行われていた。
客が佐島さんらのいるVIP席にまで通されることはなかったが、高そうな酒とかわいいお姉ちゃんをはべらしたその姿をチラ見しながら、客達はみなニヤニヤしながらフロアに戻ってきて、連れに何かを耳打ちする。
「何やってんだろうな、あれ」俺は隣のボンの耳元で言った。
「お仲間を増やしてるんだよ、それが目的のパーティだろ」
ああ、なんか彼女がそんなようなこと言っていたっけ。
それからも嵯峨野らは、客を引っ掛けてテーブル席に呼び、一人ひとりに話をするという作業を続けた。それは五分に一人くらいのペースで行われていて、あいつらはもしかしたらこのフロアの全員をあそこに呼び寄せるつもりかと思うくらいだった。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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