おやじパンクス、恋をする。#124
タカはうーん、と言いながら首を傾げ、「どうかなあ」と言った。
「そういう感じには見えなかったけどな」と俺。タカも頷く。
「まあ確かに、そういう感じには見えなかったよ。けど、もしそうだとしたら、心配だなあって。つうか、逆に、それくらいじゃねえと、あそこまでは心配しなくねえかって思ってさ」
「ああ、それはそうかもな。つうかお前、そんな過去持ってたんだな」
「言ったことなかったっけな。まあ、ちょっと嫌な感じっていうか、あんまり思い出したくないことではある」
「ふーん、だから平和主義者なんだな、強えくせに」
「いや、俺から言わせれば、お前だってボンやカズだって、そうだよ。昔の俺に比べれば、ずっと平和な奴らだ」
「涼介はよ」俺は笑って言った。
「涼介はまた、ちょっとアレだけどな」
「そうな、アレな」
「あ、終わっちまった」
タカがそう言って、見れば、空になったコロナの瓶を悲しそうに見つめている。その子供じみた表情、まるでハチミツ瓶持ったプーさんだ。革ジャン着てるけど。
「もう一本飲むか。時間あんだろ」俺が言うとタカは嬉しそうに顔を上げて、「ああ」と頷く。
俺がカウンターで馴染みの店主からコロナを二本受け取って戻ると、タカは俺のiPhoneを手に持って「おい、鳴ってるぞ」と言う。
「ああ、誰だろ」受け取って画面覗きこんで驚いた。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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