おやじパンクス、恋をする。#198
式が終わり、出棺となって、いかつい霊柩車がビヤーっと汽笛みてえなクラクションを残して消えていった。
悲しみの賞味期限が切れたみたいに、みんなはどこかほっとした顔をして、その場には穏やかって言ってもいい空気が流れた。
「あのぅ、さきほどは」
後ろから声をかけられて、振り返ってみれば、佐島さんだった。さっき会場の前で揉めそうになった、おっかなそうなオッサン。
ちょっと驚いたが、わざわざ声をかけにきてくれたのかと嬉しくなり、「ああ、どうも」と応えた。
「まったく……ウチの社員は、前時代的というか、喧嘩っ早い奴も多くてね。さっきもあいつらの手前、仕方なくお声がけした次第で」
「え……ああ、いやいや、俺たちこそなんか、こんなナリですんません」
佐島さんはそして俺らを見回して、微笑んだ。
「いやいや、謝ることなんてないじゃないですか。社交辞令じゃなく、格好がいいと思いますよ。若者は、そうでなくちゃ」
おいおい、なんだよ。さっきまでの雰囲気はどこへやら、なんかめっちゃいい人だぞ。
「そりゃ……ありがとうございます。まあ、もう若者って歳でもないですけど」
そう言って俺が頭をかきながら苦笑いすると、佐島さんはどこか遠くを見るようにふっと目を細めて、溜息をつくように言った。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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