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コレクションをして思うこと

 私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。


《 目の眼 》 を養うこと

ー 「きっかけ」と育てかた

 アンティークレースを蒐集しはじめた「きっかけ」の物語は以前お話ししましたが、何事もこの「きっかけ」は大事だなと思います。

 「きっかけ」のインパクトが大きければ大きいほど、そのモチベーションは長く続きますし、好奇心というものも大きく膨らんでいくものなんですよね。

 「好奇心や、探究心って生まれもった性質なのでしょうか?」

 「それとも、物心がついたころから育てていくものなのでしょうか?」

 これって、とても難しい問いですよね。

 この要素ってそれぞれのパーソナリティにも関わると思いますし、育つ環境にもよれば、先天的な性質も大きく影響しますよね。

 しかし、ひとつだけ言えることがあると思うんですよね。それは、

 《 少しずつでもよいので、長く続けること 》

18世紀前期のメヘレン(マリーヌ)と呼ばれているレースのクラヴァット・エンド(ネクタイ飾り)
筆者のコレクションから

ー 個人コレクションの面白さ

 どのような蒐集でも公的な美術館や博物館でないかぎり、それは体系的・網羅的になされる学術的な面よりもその蒐集家の個性がきらめき、コレクションに輝きと愛情面がきわ立つものだと私は感じているんですよね。

 そこに個人蒐集やプライベート・コレクションの面白さがあるのだと思います。

 洋の東西を問わず個人の蒐集が基となった美術館や博物館は存在しますし、なかには公的な小さな施設よりも素晴らしいコレクションを所蔵しているものもたくさん運営されていますよね。

 では、「アンティーク・レースの世界ではどうでしょうか?」

 海外の美術館もしくは博物館には、とくに「応用芸術」に関する展示を主体にされている施設ではアンティーク・レースの蒐集もされています。また、個人コレクションが寄贈されていることが少なくありません。

 しかし日本に限って言えば、公開をしているレース・コレクションは皆無です。ごく稀に企画展の形式で展示されることはありますが、そのコレクションのほとんどは私蔵されて一般には目に触れることもない存在なのです。

ー 基準の曖昧さは個性を生む

 アンティークレースを手に取る機会を自ら探しに行かなければ実際に目で見て比べることもできないのでは、「何を基準に探したらいいの?」「どう調べたらいいの?」ってなりますよね。

 この曖昧な状況、アンティークレースに関する日本語で書かれたかまたは和訳された専門書も少なく知識を深めることが難しい状況こそ、

 《コレクションに個性と面白さを与える》と、私は思っているんです。

 最近では便利な翻訳機能がインターネットサイト上にもあるので、和訳されていない海外の専門書も苦なく読むことは可能となっています。

 しかし書籍はあくまでも文字と写真で情報を伝えるものですし、それぞれの著者がそれぞれの考えに基づいて書いているものなのでその記述は千差万別です。そして書かれていることが全て正しいとも限りませんし、個人的主観というものも多いのです。

 一部をのぞいては、著者の多くは学術研究として発表しているわけではありません。彼らは蒐集を重ねるなかで《 研究家 》なる存在となった方も多いのです。

 そのような状況では、何が大切なのでしょうか?

 それは、《 目の眼 》を養うことではないのかな?って私は考えているんです。


興味があらゆるものの肥やし

ー 好奇心の連鎖反応

 私は好奇心や興味は蒐集にはなくてはならない肥やしのようなものだと思っています。

 「もっと色々と知りたい!」

 これ以上に蒐集の原動力となる感情はないと思うんです。

 好奇心や探究心は次の好奇心や探究心へと連鎖反応を起こし、「コレクションをより豊なものへとしたい」「もっと素敵なものを見つけたい」「蒐集品への知識を深めたい」

 と、気づけば、《自分らしさをまとったコレクション》は、質も量も高く大きくなっていくものだと私はそう考えています。

 それに、最も大切なのはこの《 好奇心の連鎖反応 》は、人との繋がりも広げてくれるということ。

 人との出会いはコレクション作りには欠くことのできない宝物であり、ディーラー、コレクター仲間、そしてこのnoteでスキをいただいたり、フォローしていただいた方もアンティークレースが「きっかけ」となって繋がりとなりました。

 そしてアンティークレースに対する好奇心は今でも、調査や研究によって、語学をはじめとする様々な能力を鍛えたり私の探究心を鍛えてくれています。

 

 

 

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