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乱文2


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帰り道に泣いていたら自分の視線がどんどんと低く歩みが遅くなるのを感じて不思議に思ったのですが原因は単純で自分自身の身体がみるみる小さくなっていって。そのまま自分の涙の雫に溺れてしまいそうになりました。ところで先日の打ち合わせの際にお伝えした書類の県ですが本メールのフォーマットを添付いたしましたのでご確認の程宜しくお願いいたします。

痩せ犬が路地に、一人。明日は明日はいつどこにあるのだろうか。

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むかしむかしあるところにお爺さんとお婆さんとお母さんとお父さんとその娘と息子やその他人類牛や羊にタスマニアデビルやトンボと蝉とカブトムシ、白樺にススキとマングローブのような植物など、この世のあらゆる生きとし生けるもの、そして貘が暮らしていました。

貘、それは夢を食う獣。
夢の続きは昨日の夢に。皆暮らしているようで暮らされていることに気付きもしない。

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宛名のない手紙が床を転がるので私は電車に乗っています。ささくれだった生活はゴミ箱にたまるティッシュのように淡々と積み重なっていつか空っぽに。半透明な頭の中と不透明な会話。四捨五入をしたら0になってしまうような優しい嘘も、クジラと比べたら些末なことね。悲しいときに涙が流れるのは、人がかつてイルカだった頃の名残。右利きの猫を左手で撫でる。撫でる。撫でる。

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畳に爪を立て、ぬるくなった麦茶、肌にまとわりつく風が行く当てもなく何処かへと去って、まだ覚えていますか?蝉の声は遠く、乾いた額に一抹の希望が見えるのは私だけでしょうか。

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雨に光るアスファルトの反射に、窓枠の隅のこびりついた汚れに。トイレットペーパーの芯溜まる溜まる溜まるばかり。六畳間はとてつもなく広くサッカーぐらいはできるんじゃあないかな。下校のチャイムが鳴って。何もかもそこから去っていった。

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洗濯物ふわり飛ばされてどこまでも。歩くよりも少し早い風に街を見下ろせば、もうこれ以上Tポイントカードの話はしないでと八百屋の店主。大根と人参は略して大人ですか?巨大なセロリ。そんな話は置いておいて老いてゆく何もかもカフェもラテもモカもかも。すみません。話は逸れて風の話に。魚屋の店主風を見て明日の仕入れを案ずるのですが、これはいい機会と備品の整理。どうやら魚を入れる桶が腐っている。買い直さなければということになりまして。桶屋が儲かったのは遠い昔の話。今はAmazonなんかが儲かるのでしょうね。

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