お釈迦さま以外はみんなバカ_Fotor

面白い本を面白く紹介した面白い本〜『お釈迦さま以外はみんなバカ』

◆高橋源一郎著『お釈迦さま以外はみんなバカ』
出版社:集英社インターナショナル
発売時期:2018年6月

本書は、高橋源一郎がパーソナリティを務めるNHKのラジオ番組『すっぴん!』のワンコーナー「源ちゃんのゲンダイ国語」での話をもとに書籍化したものです。といっても、私はその番組を聴いたことはないのですが……。

本を書く人は基本的に本を読む人でもあります。作家でもあり読書家でもある源ちゃんがハンティングしてきた面白本から、思わず膝を打つ表現や笑える言葉を拾い出していきます。面白い本をさらに面白おかしく紹介するのですから、面白い本には違いありません。

有名ラブホテルのスタッフであるらしい上野さんが主人公のマンガ『ラブホの上野さん』。ホテルにやってきたカップルに関して含蓄のある意見をいうのが可笑しい。故伊丹十三が若き日に記した『ヨーロッパ退屈日記』の、今となっては牧歌的ともいえるスノビズムからは滑稽味も伝わってくるような。

野村順一の『私の好きな色500』では源ちゃんは色の名前に着目します。ある会社が開発した色鉛筆の名前が、なんとも詩的というかワケがわからない。「子供の頃の茜雲」「ナイチンゲールの歌声」「ジェラシー」「鹿鳴館の舞踏会」「たぬきの鼓笛隊」「ためらい」「神話の中の悲哀」「山東省の田舎道」……これ、全部の色の名前なのです。

『忙しい現代人のための 2秒で読める世界クイック名作集』は企画力の勝利(?)といえる本かもしれません。世界の名作が本当に(ほぼ)2秒で読めるほどに圧縮されているらしいのです。
たとえば「桃太郎」。包丁をもったおじいさんとおばあさんが巨大な桃の前にたたずんでいる。おじいさんが桃に包丁を入れる。桃が割れる。中では桃太郎が鬼の首を絞めている。お終い。

バカの語源は何か。もともと僧侶の隠語で、「痴」を意味するサンスクリットの「モハー」に漢字「莫迦」を当てたというものらしい。「莫」は否定の意味であり、「迦」はお釈迦さまの「迦」。つまり「バカ」=「お釈迦さまではない」ということらしい。これは玄侑宗久の『さすらいの仏教語』に書かれている解説です。

……などなど、思わず手にとりたくなるような本が次から次へと登場します。大半が私の読んでいない本で、まだまだ私の知らない世界が果てしなく広がっていることを実感させられます。かろうじて一冊だけ私のnoteでも取り上げた本が出てきました。エラ・フランシス・サンダースの『翻訳できない世界のことば』

フリートークがベースになっているので、当然ながら文章も軽快なタッチ。新書がすべてこんな本になったら困りますが、たまにはこんな肩の凝らない愉しい本が混じっていてもよろしいでしょう。

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