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作家を買い、時代を買う〜『現代美術コレクター』

◆高橋龍太郎著『現代美術コレクター』
出版社:講談社
発売時期:2016年10月

精神科医である高橋龍太郎は現代アートのコレクターとしても知られています。草間彌生、森山大道、会田誠、山口晃、村上隆、奈良美智、横尾忠則、森村泰昌などなど所蔵作品は約2000点。高橋コレクション展は独立の企画展として何度も開催されているほどです。

高橋はアート作品を購入する喜びを率直に書きしるします。初めて草間彌生の作品を買ったときにはひとつの絵が自分を「祝福」し「興奮」を与えてくれたと述懐するのですが、それは単に「鑑賞」するだけではもたらされることのない喜びであるらしい。
後段では作品購入を異性と付き合うことになぞらえたりしていて、自らの俗物性(?)を隠そうとはしません。コレクション展に来訪してくれた安倍首相を表敬訪問し、現代アート振興をお願いしたこともあるとか。

日本の現代アートの特色を「ネオテニー」「マインドフルネス」「なぞらえ(ミラーニューロン)」などのキーワードで語るくだりが私にはいちばんおもしろかったけれど、ことさらに「日本」ばかりを意識している点には引っかかりました。そもそも最初から特定の国のアートに肩入れするのは「マインドフルネス」の態度とは相容れないでしょう。
著者の現代アートにかける情熱には敬服するに吝かではありませんが、それを国家間の「闘い」と煽る姿勢にはまったく共感できません。自分を感動に導いてくれる作品の作者が日本人だろうが外国人だろうが、私にはどうでもいいことですから。

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