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日本美術的な感性を愉しむ〜『モネのあしあと 私の印象派鑑賞術』

◆原田マハ著『モネのあしあと 私の印象派鑑賞術』
出版社:幻冬舎
発売時期:2016年11月

アートを主題にした小説作品で知られる原田マハがクロード・モネの魅力について存分に語った本です。モネとの個人的な出会いの回想にはじまって、モネの生涯、彼が生きた時代の背景、印象派の美術史的な意義づけなどを要領良く解説しています。

話の内容は、日本の浮世絵からの影響やチューブ入り絵の具の開発と風景画との関連など、毎度おなじみのもので特に斬新な視点が打ち出されているわけではありません。ただ個展というスタイルの展覧会の嚆矢がニューヨークにおけるモネ展だったというのは初めて知りました。そういえば米国は世界のなかでいちはやく印象派を受け入れた国のひとつです。

原田は「草や花を、命が宿っているように」描いている点に日本人との共通の感覚を見出し、「ひょっとしたらモネが感じ取って作品に表現しようとしていることを、私たちはモネ以上にキャッチしている、そんなふうに思えてならないのです」と締めくくっています。印象派絵画の日本での人気はよく指摘されるところですが、睡蓮を一つのモチーフとして描いたモネはことのほか日本人の感性と親和性が高いといえるのかもしれません。

本書は講演記録に加筆修正したものですが、末尾にはモネを収蔵するミュージアムについての一覧も付されており、実際的な情報も含まれています。初心者にとってはモネ鑑賞の指南書として有益な本といえるでしょう。

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