誰にもわかるハイデガー2_Fotor

難解な哲学書への道標〜『誰にもわかるハイデガー』

◆筒井康隆著『文学部唯野教授・最終講義 誰にもわかるハイデガー』
出版社:河出書房新社
発売時期:2018年5月

マルティン・ハイデガーの『存在と時間』は難解をもって鳴る哲学書として知られています。文学部唯野教授こと筒井康隆がその難物にチャレンジしました。本書はその講演記録を書籍化したものです。

ハイデガーは私のような哲学の素人がいきなり読んでもチンプンカンプンですが、なるほど標題どおりわかりやすい読み解きを行なっています。何より鍵言葉がやたら難しいのがハイデガーの特質なのだけれど、たとえば〈現存在〉は「はやく言ってしまえば、人間のことなんです」とみごとに噛み砕かれます。〈実存〉は「人間の可能性のこと」とこれまた単純明快。そんなざっくりした理解で良いのかと不安になるほどです。ちなみに〈不安〉もハイデガーでは重要な概念ではあるのですが。

補遺を寄せている大澤真幸によれば、「唯野教授の「よくわかる」解説は、『存在と時間』の理解としてまことに正確である」と太鼓判を押しています。その大沢の補遺も新約聖書を参照したスリリングなもので、たいへん面白く読みました。ハイデガーをあらためて読んでみようかなと思わせる内容で、入門書としての役割を充分に果たしているのではないかと思います。 

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?