マガジンのカバー画像

エセー

4
社会の出来事について、身辺の些事について、おりおりに思ったことを綴っていきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

現代ニッポンに蔓延する政治的マズヒズムについて

政治家の不正や腐敗が顕在化するたびに出てくるのが議員定数の削減論。「こんな役立たずの議員なんかいらない。定数を削減しろ」という声があちこちから聞こえてきます。けれどもそのような意見を見聞して説得力を感じたことは今までほとんどありません。 議員定数削減を叫ぶ以上は「議員が多すぎるから政治腐敗が起きる」という認識に立っていると思われますが、そのような因果関係を立証した論考を未だかつて見たことがありません。そもそも国政に関していえば、人口あたりの議員数はOECD加盟国のなかでは日

「奴隷意識」の称揚に励む大学と放送局の愚について

都内のある私立大学は、就職内定者を対象に昨年から「正しい叱られ方」を学ぶ講座を開いているそうです。最近、NHKが番組で紹介したことからネット上でも議論を呼んでいます。 そのような講座を開いている大学、それを無批判に紹介している放送局に対して、私は違和感を禁じえません。 なるほど昨今の若者は、小さい頃から「叱られる」体験に乏しく、打たれ弱い傾向にあることはしばしば指摘されてきました。教員をしている私の友人知人も、口を揃えて「生徒を叱るのが難しくなってきている」と言います。ち

有能な人材の海外流出について私が思っている二、三の事柄

かつて日本の企業が得意としていた半導体メモリーや液晶パネル事業はすっっかり海外企業にお株を奪われてしまいました。ほかにも凋落が伝えられる業種はいくつもありますが、それに連動するかのように日本人技術者の海外流出が続いています。日本の企業に見切りをつけて海外に渡る技術者に対しては、時に「売国奴」の罵詈雑言が浴びせられたりします。しかし彼らは単に自らの職業的スキルを売っているだけ。的外れのバッシングというほかありません。 「国益」の観点から批判されるべき者がいるとすれば、何よりも

差別や偏見について私が思っている二、三の事柄

東京・南青山に計画されている児童相談所などの複合施設「港区子ども家庭総合支援センター」(仮称)の建設に対して、地元住民の一部から強硬な反対意見が出ていることがマスコミでも取り上げられ波紋を広げています。 私が社会人として生活を始めたとき、最初の数年間を南青山にある会社の仕事で食べさせてもらっていたので何かと思い出深いエリアではあります。 地域のブランドイメージを毀損するという彼らの反対理由にはもちろん賛同できません。とりわけ違和感をおぼえたのが、「3人の子を南青山の小学校に