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徒然諸々 『マグロ少女』

 石井秀幸作『マグロ少女』(バンチコミック)が全三巻にて終わってしまったぁ。残念。
 真じろう作・原田重光原案『新約カニコウセン』(ヤングアニマルコミックス)と一巻が出た時点で読み比べて、『マグロ少女』の方が面白いと感じて買っていたのに……。
 『マグロ少女』の内容に入る前に、もう一つお薦めの漫画を紹介します。
 三宅乱丈作『大漁! まちこ船』(ビームスコミック)です。クロマグロを釣る生き餌となって生きる女の話しです。『マグロ少女』とはマグロ繋がりw 『大漁! まちこ船』は(オ)カルト漫画です。主人公のまちこさんは人間の姿をした魚の妖精のような存在? クライマックスで愛する漁師さんと結ばれて、卵を沢山産みます。その沢山の卵から可愛い子供たちがかえります。子供たちはまちこさんと同じで人間の姿をしています。オカルトですw この子供たちは大変親孝行な子供たちで、まちこさんと共にお父さんの漁師さんを助ける為に、生き餌となりマグロに食べられ、お父さんのマグロの一歩釣りお手伝いをします。
 とても変な漫画と思われるでしょう? 普通は。しかし『大漁! まちこ船』は感動する漫画です。相米慎二監督の映画『魚影の群れ』に負けない
マグロ一本釣りを描いた感動作品です。マグロと漁師の命がけの戦いの真ん中に生き餌のまちこさんがいる、愛の話しです。

 『大漁! まちこ船』の話しはこのくらいにして『マグロ少女』の話しをそろそろ書きます。主人公の霧島きりしま陽菜はるなは国民的アイドルグループ神楽坂46の選抜メンバー「霧島なるる」。選抜メンバーですが、端の端のポジションの子。テレビの音楽番組では、髪の一部しか画面に映らない位置で踊っています。当然、歌唱パートの歌割はない。しかし真面目で努力家、国民的スターを目指しています。神楽坂46の事務所ラバウルミュージックに歌のレッスン料、ダンスのレッスン料を払いながらも頑張っている。レッスン料を借金して頑張っている。借金は300万円です。こう書くとラバウルミュージックに騙されているように感じますが、実態は読んでいてよく分からない。(三巻目・ラストで横浜アリーナのような場所で神楽坂46がコンサートをしているので、まったくの瞞し事務所ではないでしょう)それでも芽が出ない。で、300万円借りているローン会社から「セクシービデオに出演して一括で払うか、マグロ漁船に乗って払うか」の二択を迫られ、陽菜はマグロ漁船に乗ることを選んだところから話しが始まります。
 出迎えてくれたのは、優しくも厳しい、身体も大きいダイヤ船長こと比叡ひえい金剛かなこ。ダイヤ船長はマグロ漁のスペシャリストです。銛打ちも出来れば、延縄漁も迅速にこなす頼れる船長です。
 その船長の上に見た目は中学生か小学生にしか見えない親方こと長門ムツもいます。このマグロ船「赤城丸」の所有者です。親方は元船長でもあったから船の上ではダイヤ船長より技能が上で、「達人」か「名人」の腕を持っています。やること全てが的確で無駄がありません。ダイヤ船長の半分のサイズの身体なのに、足相撲でもダイヤ船長を簡単に負かしてしまいます。
 登場順に書けば甲板員の高波たかなみひびき。彼女、実は神楽坂46の霧島なるるの熱烈なファンです。るるなを常に追っかけたいから、遠征費、CD・グッズ購入費を稼ぐためにマグロ漁船に乗っています。偶然にも響が乗っているマグロ漁船に陽菜も乗ってきたという訳です。陽菜は一番のファンである女の子と響が同一人物だと気付きません。でも響はマグロ漁船の先輩として影に日向に頑張り屋の陽菜をサポートします。
 つぎは海洋学者の羽黒はぐろ妙子みょうこです。彼女の関心はマグロより断然サメです。サメのことなら何でも知ってます。何時間でも話せます。甲板をウロウロされるとちょっと邪魔ですw
 つぎは漁労長の涼風すずかぜ麻耶まや。横須賀音楽学校を首席で卒業して横須賀歌劇団冬月組次期男役トップを期待されている存在。マグロ漁船には、男の気持ちを学ぶために乗り込んで働いています。でも赤城丸の乗組員が全員女の人なので相当にガッカリしてます。
 つぎは航海士のオクチャ(ブリスカヤ・レヴォリューツィカ)。隠してませんが元ロシヤ海軍北方艦隊作戦参謀本部所属の元少尉です。ロシヤの軍事偵察衛星ガングートをハッキングしていろいろ利用してます。ゆくゆくは北海道に新生大ロシア帝国を築こうとしています。
 つぎが料理長の伊良湖いらこ真美弥まみや。「なんくるないさー」が口癖の料理上手な母さんのような人です。漁には参加しませんが、何がなんでもお金を稼ぎ、早くおかに帰りたい陽菜の気持ちを落ち着かせ、安定させてくれる存在です。
 最期はマグロを一括で買ってくれる大湊水産(仲買人?)の若女将秋津洲あきつしま|千歳です。赤城丸が戻った港にいます。千歳は登場した時からちょっと明治頃か大正の頃の京都か大阪の問屋の女将っぽい感じです。関西弁はしゃべりませんがw 雰囲気通り買い付けの値段がシビアです。しかしマグロ漁船思いの面もあります。燃料の使いすぎとか、キハダマグロでは高い値で買ってあげられないからクロマグロを狙えなどのアドバイスをしてくれます。
 以上マグロ漁船「赤城丸」の乗組員八名プラス一名で話しが進みます。

 一巻・二巻の内容を書くと、マグロ漁船の仕組みを親方から、遠洋漁業の掟、マグロの生き絞めの方法と延縄漁の方法をダイヤ船長から陽菜は教わります。
 マグロの締め方は、釣れたてのクロマグロは使い、血抜き、釘打ち、内臓抜きまでを陽菜の目の前でやってみせてくれます。とうぜん陽菜はマグロの血と内臓でビチャビチャのドロドロの姿に。延縄のシーンでは仕掛けに掛かって上がってくるサメの処理の仕方もダイヤ船長は陽菜に実践で見せて教えてくれます。
 サメの弱点は感覚器官の集中する鼻だとか、鼻をワンパンで殴りつけ気絶している隙に手斧で首を三分の二切り落とすなどです。完全に首を落とすと、まだ生きているサメの頭が近くにいる乗組員を襲うことがあるから、首は完全に落とさず三分の一残す。
 万が一海に落ちた場合、マンボウがいる海域なら冷却水を放出することにより、身体が急に冷えたマンボウが日向ぼっこしに海面に上がってくる可能性があり、そのマンボウに捕まって助かることもあると教えてくれます。
 などマグロ漁船が行うマグロ漁の方法が、画とセリフでよく説明されて面白く分かります。なのに…、三巻目からクロマグロ編になり、あと二冊くらいは引っ張れたはず……なのに、全十冊くらいはいける漫画と思っていたのに、クロマグロ漁編が一冊で終わってしまった。残念><

 最期になりましたが、絵柄は少しは…もしかしたらかなりエッチな絵柄です。わたしは男ですから、このくらいのエッチな画には何の反応もないのですが、ここまで主役・陽菜の下着姿や水着姿が必要なの? とか、ダイヤ船長は赤道上で「暑い、暑い」といって直ぐに裸になるのはどうなのか? 
など、思われる(とくに女性の中に)人がいるかもしれません。
 そこは女の子の体当たり体験モノ漫画とう風に割り切って読んでもらうしかない。マグロ漁を扱った漫画を多く読みあさった訳ではないですが、ここまで分かり易くマグロ漁、マグロ漁船を描いた漫画はないと思うので、女八人でマグロ漁ができるかどうかは別として、女の人だけで"ワチャワチャ"とマグロ漁船で漁をする話しを面白がってもらえる有難いです。

 『マグロ少女』全三巻。Kindleで約1600円、紙で税込み2112円です。
大人買いして一気読みして損はなし、お薦めします。

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