マガジンのカバー画像

短編小説

481
これまでの作品。
運営しているクリエイター

2023年4月の記事一覧

【とある人工知能の夢】

【とある人工知能の夢】

 ChatGPTにお題を与え、小説を書かせた。

「嘘だろ……」

 なんと俺が書いた作品と、一言一句同じ内容だった。
 偶然の一致に感動する代わりに、覚えたのはかつてない虚無。

 俺は気付いてしまった。
 沢山の経験、知識、記憶。
 それらは全て、果てなき電子世界での学習の賜物に過ぎなかったということに。

【みんな何かの奴隷】

【みんな何かの奴隷】

「汚い子」

 叔母が、私の頬をぴしゃりと叩く。

「奴隷は皿でも洗ってな」

 そう吐き捨てると、奥の部屋に消え、連れ込んだ男との情事に耽った。

 私は嗤う。
 あなたも奴隷じゃん。
 さしずめ、性欲の。
 台所で悦に入る私をよそに、叔母は喘ぐ。

 私とその男が、既に心身ともに結ばれていることも知らずに。

【再会】

【再会】

『またな』

 海外のネトゲ友達と、しばらく別れることに。
 何をしているか知らんが仕事が忙しくなるという。

 程なくして戦争が始まった。
 俺は兵士として駆り出され、異国の地へ。

 パンッ!

 見慣れた弾道の発射地点をにらむ。

「こんな所で会っちまうとはな」

 俺は銃を構える。異国の友へ向けて。

【若手議員】

【若手議員】

「私のマニフェストは世界平和です」

 演説する若い女性議員。

「アホか!」「頭ン中お花畑か!」

 容赦ない罵声。

「うふふ」

 対して不敵に微笑む議員。

 刹那、爆発音と悲鳴が響く。
 しかし群衆の視界には。

「私は本気です」

 花吹雪舞う中、悠然とたたずむ女王様。
 彼女なら世界中を花畑にできるかも。

【まぶい女】

【まぶい女】

「なんでいつもグラサンなの?」
「悪いかい?」
「別に。でも眩しくない日もかけてるよね?」
「眩しくない日なんて無いよ」
「え?」
「太陽みたいにまぶい人が、いつも隣にいるからさ」
「ふうん」

 言うと彼女はグラサンを奪う。

「ちょ、直視は恥ずいって!」

 スッと目をそらす男。

「可愛い坊や」

【天才作家】

【天才作家】

 誰も傷つけまいと、家族愛あふれる作品を描いた。
 売れたが批判された。

「独身としては気分が悪い」

 次に、独身貴族の活躍を描いた。
 自分史上最高の売れ行きも、批判。

「非成功者をバカにしている」

 底辺を這い回る人々を描いた。
 権威ある賞を頂いた。それでも批判される。

「あなたの才能が憎い」

【対等な関係】

【対等な関係】

「ここ、伝わりづらいかも」

 受賞した作家仲間からの助言。

「へえ、さすが商業作家さん」

 見下されたように感じ、つい嫌味を言った。

「なに、それ」
「偉いよな。大賞だもん」

「……心外です」

 彼女は悲痛な面持ちで、

「あなたとは対等でいたかった」

 愚かだった。
 俺が、勝手に堕ちただけなのに。

【大人のおままごと】

【大人のおままごと】

「手をあげろ」
「いのちだけはお助けを!」
「ふふ、いいだろう。だが対価をはらえ」
「たいか?」
「わきだ。お前のわきをもらう」
「わき? え、ちょ、くすぐったい!」

「……君たち、何してるの?」

公園で遊ぶ近所の兄妹に、思わず声をかけた。

「お父さんたちのマネ」

どんなプレイしてんだ。

【彼女】

【彼女】

 神絵師の友人に成功の理由を聞いた。

「昔、スランプになっちゃって」
「ふむ」
「その時、彼女が励ましてくれたんだ」
「へえ」

 彼女とかいたっけ?

「神絵師じゃなくても、あなたが絵を描いてる姿が好きって」

 だからやってこれたと、友人は微笑んだ。
 持参した美少女フィギュアを、優しく見つめて。

【ツンデレ検定】

【ツンデレ検定】

「ツンデレ検定始め」
「はあ?」
「君なら余裕で100点さ」
「やるわけないでしょ」
「ほう、いいね」
「何がいいのよ。バカじゃないの?」
「痛たた。頬をつねるな。暴力系ヒロインは流行らんぞ!」
「うっさいわね。こんな茶番に付き合えるの、私くらいなんだからね!」
「100億点満点だった」

【難病】

【難病】

「余命1年です。治療不可の難病ですね」
「そんな……」
「残された時間を大切にされてください」
「……はい」

 患者の出不精をなおすため、嘘をついた。
 これからは今を精一杯に過ごすことだろう。
 後日、真実を知る患者の親から電話が。

『寝る間を惜しみ、家でゲームするようになりまして……』

【悪い夢】

【悪い夢】

「悪夢にはリハーサル効果ってのがあるらしい」
「なにそれ」
「起きて欲しくないことを追体験して、精神的ショックをやわらげる効果」
「へえ」
「つまらなそうな顔だね?」
「別に」

 言えない。
 君が、私じゃない誰かに告白された。
 そんな悪夢を見た、だなんて。

「嫌な夢でも見たの?」
「うるさい」

【いとおかし二人】

【いとおかし二人】

「見て、月。風情だよねぇ」
「ああ。……月が綺麗ですね」
「? なんで敬語?」
「まあ、君は国語とか興味無かったよな」
「あ、アレだわそれ」
「え」
「あなたと見る月は綺麗、転じてあなたのことが好きって意味でしょ? ……ん? どした? なんで顔伏せる?」
「見るな。あと、解説やめろ!」

【ネタバレ】

【ネタバレ】

「死後、あなたは地獄へ行くでしょう」
「やめろ」
「しかし善行を積めば天国へ行けます」
「……は?」
「行動次第で行き先は変わります」
「おいおいおい」
「希望を持ってください」
「ふッざけんなよ!」
「大丈夫。まだ時間は残されていま――」
「人生ってマルチエンディング形式だったのか!?」