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〈リアルタイム産地〉鹿児島県出水市 島中さんを訪ねてきました part2

今回は前回の続き。

そもそも美味しい海苔とは何か?
島中さんたちが言われていたのは、口の中に入れた瞬間にほどけて、しっかりと旨味を感じることが出来る海苔。

市販のものと比べると色味も香りも、もちろん味も違います。島中さんのお孫さんはパッケージに入った状態の海苔を、開けずにどれが美味しい海苔かわかるそうです。

20210929-天恵海苔取材5

一般的に海苔がどのような経路をたどって私たちの手元に届くのか。
生産者が板海苔の状態まで加工した段階で漁協に出荷され、等級付けが行われ、それに伴い価格が決まっていきます。

どうやって等級がつけられるのか?
海苔の表面の色つや、なめらかさといった外見を基に等級付けが行われ、値段が決められます。残念ながら味は評価基準に含まれていません。

ですので、より高い等級をつけられる品質の海苔を多く生産することが生産者の目的となります。
海苔をより大きく成長させてから摘み取りを行うと、より黒く、色つやの良い海苔になります。しかし、大きく成長させた海苔は、細胞が固くなり、小さい状態で収穫された海苔よりも味が劣ります。

なぜ小さい状態で収穫しないかは、先に挙げたようにより高い等級を付けられる品質のものを多く生産するためと書きましたが、他の理由として、
1枚の海苔網から収穫できる海苔の量が少なくなる為、より多くの海苔網を必要となり、また収穫頻度が高くなります。

20210929-天恵海苔取材8

一方でメリットとして、味が良いものが採れる以外には、海苔を巻き上げる負担が減るということが挙げられます。海に入って網を巻き上げながら海苔を収穫するのですが、大きく成長させると機械で巻き上げるのが難しくなるような状態が発生することも。小さい状態で収穫すれば、機械で巻き上げスムーズに収穫作業を行うことが出来ます。
海苔養殖も他の一次産業と同様に生産者の高齢化が課題となっています。

海苔の養殖という、境界のない海を共有して行う生産は、誰がどんな方法で生産しているかが品質や、周辺の環境へ影響します。
近年は環境変化が著しくなり気温は上昇傾向にあります。水温が1度上がることは、陸上の生物にとって気温が10度上がるのと同じ影響を、海の中の生物に与えると言われています。海苔の旬は冬。冬場の海水温が高くなると海苔の生育に影響が出てしまい、海苔を養殖するためにはもっと北でないとできないという日がいつか来るかもしれません。

20210929-天恵海苔取材12

帰りの車内で島中さんにいただいた海苔をみんなで食べたのですが、スタッフの子供がバクバク食べていました。繊細な味覚の子供たちが、本来のおいしさを食べ続けられるように海を守り、伝え繋いでいきたいです。

最後に昨年の2月に海苔の手漉き体験に行った際の1枚。みんなで漉いた海苔を堤防沿いに広げて、天日と風で乾燥させます。今では行われなくなったやり方ですが、海苔との接点を広げるために毎年行われています。来年もその季節になったらお知らせします。

文章 川嶋

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