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7月17日は新聞業界にとって暗いニュースが重なった⁉


「全国紙」の毎日新聞 富山県での販売から撤退

日本の大手企業は絶好調で、この夏はボーナスも大盤振る舞いだ。その一方、すっかり構造不況業種としてのポジションに馴染み、出口どころか光明も見えないのが新聞業界。業界では、辛気臭い話しかない。運悪く、7月17日は悪いニュースが重なり、梅雨の最中に余計気が重くなっている。

全国紙を標ぼうしながら特定の県での販売をやめてしまう新聞社が出てきた。毎日新聞社だ。

毎日新聞社は17日、富山県での新聞の配送を9月末で休止すると発表した。全国47都道府県に配送網を保ってきたが、休止は初めてだそうだ。印刷と輸送コストが増大したことに加え、県内での発行部数の減少で配送体制の維持が困難になった。現地支局は存続させる。

コンビニなどでの1部売りもやめる。富山では朝刊のみの発行で、2023年時点では推計約840部を販売していた。県内読者にはデジタル版への移行を促すが、紙で読みたいという読者には郵送する。

読者の多くは、法人では役所や図書館、個人は高齢者だろう。電子版への移行で高齢層の読者は相当減るかもしれない。郵送を希望する人はそこそこいそうだが…

東京新聞 23区以外での夕刊配達終了

中日新聞東京本社は、同社が発行する「東京新聞」について、2024年8月末で23区以外での夕刊配達及び即売(店頭売り)を終了する。

値上げもする。月ぎめ購読料を3400円(現状は朝夕刊セット3,700円/朝刊のみ2950円)とする、また一部売りを120円から140円に値上げする。電子版の料金は据え置く。

どこも販売部数の減少に加え、紙代、人件費等のコスト増が重くのしかかっている。

地方紙は特に厳しい。

鳥取に拠点を置く日本海新聞は、2024年8月1日から月ぎめ購読料を現在の2600円から3300円に値上げする。

2022年10月1日に月ぎめ購読料を2260円から2600円に上げたばかりだが、2年もしないうちに再値上げを迫られた。

販売店倒産は過去最多 輪転機事業からの撤退も

新聞社本体だけでなく、関連業界も大変だ。昨今の記事から見てみよう。実に不景気な話ばかりだ。

全国で新聞販売店の淘汰が続いている。

東京商工リサーチによると、2023年度(4‐3月)の「新聞販売店」の倒産は39件(前年度比56.0%増)で、1994年度以降の30年間で最多を記録した。2024年2月は10件発生し、2014年5月と並んで月間最多を記録した。

一般社団法人日本新聞協会が公表するデータ(各年10月時点)によると、ネット媒体の情報発信が拡大し、2023年の新聞発行部数は約2859万部(前年比7.3%減)と、1年前に比べ約225万部減少している。

こうした構造的な問題に加え、配送にかかる燃料費、人件費などのコストアップが経営を直撃。コロナ禍で折り込み広告収入も落ち込み、新聞社からの補助金やゼロゼロ融資などの資金繰り支援で窮状をしのいだ新聞販売店も多い。

購読者数が伸び悩み、専売店から複合店、合売店への業態変更などの対応を迫られるなか、支援効果の薄れとともに新聞販売店の倒産、廃業は増勢をたどることが懸念される。

後継者の問題もある。新聞業界の先行きを考えれば、子供に継がせようという店主は少ないだろう。

三菱重工業の完全子会社、三菱重工機械システムは、新聞印刷用のオフセット輪転機の製造を終了する。アフターサービスも最長で2036年3月までに終え、新聞輪転機事業から撤退する。

新聞の販売減少で輪転機需要が減っている。事業に携わる人材の高齢化や部品調達難により継続が困難と判断した。国内シェア5割の大手だが、先行きのない分野を見切り、成長分野に資源を移行する。

電子化へのハードル

7月17日は、日本経済新聞社から2024年6月時点の新聞部数、電子版購読数の発表があった。
日経朝刊販売部数 137万5414
電子版有料会員数 97万1538 

これが2023年12月時点だと
日経朝刊販売部数 140万9147
電子版有料会員数 90万2222

さらに1年前の2023年6月だと
日経朝刊販売部数 156万8181
電子版有料会員数 87万3929

この1年間で日経朝刊販売部数は19万2767減少し、電子版有料会員数は9万7609増加した。2023年12月との比較でも電子版有料会員数は6万9316増えた。

この間、日経は一度離れた電子版読者を呼び戻す半額キャンペーンを実施したので、これが奏功したのかもしれない。

日経はこれまで半年ごとに部数、購読数を発表してきたが、2025年からは1月の発表のみになるそうだ。

日本の新聞業界にとって、デジタル化への意向は経営上の喫緊の課題だ。日経は電子版で他社より一歩進んでいるように見えるが、順調とは言い難い。それよりも、他社の取り組みがしょぼすぎる。

海外を見るとサブスク1000万の新聞も

米新聞大手ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、2023年のデジタル版購読料収入が前年比12%増の約11億ドル(約1600億円)だった。ニュース記事にゲームや料理レシピなどを組み合わせた契約が好調で、初めて10億ドルを超えた。

12月末の有料購読者数は1036万人で、このうちデジタル版は前年より87万人多い970万人、紙媒体は7万人少ない66万人だった。

かつては1つの世帯で新聞を2紙も3紙もとっていた時代があったが、今は逆に家計の負担となっている。ほかのサブスクサービスとの競争も激しい。

NYTに関する日本の新聞の記事を読むと「電子版がすごい伸びてるぞ~」といったことは書かれているのだが、肝心の料金が書かれていない。NYTはいくらで読めるのだろうか。

値段だけ見たら「ぜいたく品」の日本の新聞

日経電子版(個人プラン)の有料会員は月4277円だ。一方、NYTをアプリで読む場合、年契約で1万3000円、月契約で1740円。初めての契約の場合、割引がある。

ちなみにマクドナルドのビッグマック1個の値段は、日本が450円、米国は841円だ(2024年1月時点)。

これを見ると、日本の新聞はけっこうな「ぜいたく品」と言える。

価格に見合った付加価値があれば、新しい読者の獲得も可能だがどうか?

例えばの話だが、U-NEXTは、月2000円程度で映画やドラマなどを見ることができ、雑誌、マンガも読める。さらにポイントを使い、映画館で新作映画の鑑賞もできる。ビジネス雑誌が読めて、テレ東の「ワールドビジネスサテライト」だって見られるのだから、サービスの1つとして、日経電子版が読めてもいいだろう。

日経電子版の無料会員だと、見出しはひと通りチェックできる(それで十分というビジネスパーソンの声は結構聞く)が、全文読める記事は1本(利用者によるようだが)。これを月50本までとすれば、サービスとして手厚くなる。潜在ユーザーにとってはお試し効果があり、フルスペックの新規読者獲得へとつながる可能性も出てくる。

「新聞紙を売る」のではなく「ニュースを売る」のが新聞社の仕事だ。「ニュース」という商品のポジショニングは、動画、音声といった競合メディアが勢力を増すなかで大きく変わりつつあり、収まりどころを模索している。

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