見出し画像

ナイトクラブとゲイ友と幽霊👻80'sマンハッタン生活 #世界貿易センタービル

友人が地下鉄内で発砲事件に遭遇して命からがら走って逃げたとか、強盗がダイヤの指輪を取るのに女性の指まで切って持っていったとか、そんな物騒な事件が当たり前だった頃のニューヨークのマンハッタン島に住んでいた。

仕事は、今はなきツインタワー(世界貿易センタービル WTC)の日本企業の支社で残業している社員に、夜食用のおにぎりを売って歩いていた。銀行、証券会社など、WTCには日本の企業が多数あった。

おにぎり販売は就労ビザがないので違法だったが、独身や単身赴任の日本人男性たち、そして日本語ができて現地採用されていたアメリカ人たちにも結構人気があり、それでなんとか生計が成り立つ。

おにぎりはウエストサイドのアパートの自宅で作る。お米は近所の韓国人が経営するデリで買えるアメリカ産の日本米、確か「錦」。これが結構美味しい。

海苔は知り合いの日本料理店で寿司海苔を安く分けてもらい、梅干しなどは日本食料品店で調達していた。おにぎりの価格は1個1ドルから2ドル。シャケ、おかか、昆布、梅干し、天むすの5種類。

2011年9月11日に世界を震撼させたアメリカ同時多発テロ事件で犠牲となったWTCは、110階建ての高層ビルが2棟並ぶニューヨークの象徴であった。

当時のWTCはエンパイアステートビルと並ぶ必須の観光スポットで、110階の展望台に上がるためにいつも観光客が大勢来ていた。

1階の広いフロアには大きなエレベーターが5基くらい並んでおり、
平日の夕方に毎日エレベーターに乗る私に、フレンドリーなセキュリティの男性がよく声をかけてくれた。

実はひどいことに私は英語はほとんどできない。でも、なんとか会話は成り立っていたので、彼の笑顔とコミュニケーションは嬉しかった。

(ちょっと思い出したので別の話だが、ある日、イタリア人の八百屋のオーナー男性に「学校は?」と尋ねられた。話してみると、25歳の私を小学生だと思っていたのだそう。東洋人は若く見えるというけれど、これはひどい話。笑)

数社の企業の責任者が快く入室を許可してくれていたため、私は中に入って残業している社員一人一人に声をかけ、希望者におにぎりを販売する。
毎日楽しみに待ってくれていた人も数人いた。何ヶ月、何年も海外にいると、やはり日本の手作りの味が嬉しいのだろう。

住友銀行のニューヨーク支社には、友人のマークが働いていた。マークは白人ゲイのナイトクラブで遊んでいた時に、日本語で声をかけてくれてから仲良しになった。マークもおにぎりを買ってくれたけど、梅干しは絶対に食べない。

売れ残ったおにぎりは、私と道端のホームレスの夕ご飯になった。

ホームレスに梅干しのおにぎりをあげたことがあったが、どんなにお腹が空いていても梅干しはきつかっただろう。

向こうみずな私は、そんなことをしながらニューヨーク生活を楽しんでいた。

しかし、そんな思い出をくれたWTCがあんなことになるなんて。日本でリアルタイムでTVであのニュースを見ながら、現実とは信じられなかった。

私が日本に帰国してから20年以上後の惨事だったが、あのセキュリティーのおじさんや日本企業の方々はどうされているのだろうか・・・





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?