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いまおかしんじ「つぐない 新宿ゴールデン街の女」

新宿ケイズシネマで、いまおかしんじ「つぐない 新宿ゴールデン街の女」 脚本は佐藤稔。

私を裏切った男(伊藤猛)に復讐するつもりが誤って連れの女を刺して服役し、出所してゴールデン街で一人酒を飲む女(工藤翔子)は、このバーのママ(速水今日子)のヒモになった伊藤に会いにやって来て、やっと過去を清算することが出来た、男運の悪い女のブルース。

Bitoが歌う「男運の悪い女のブルース」本作のテーマソングは歌謡ドラマの様相を呈す本作の主役だ。♬なぜに私が殺さにゃならぬ 誰も答えてくれぬ なぜになぜにと 自分を責めて せめて嘆きの天使でいたい 男が悪い~ 男が悪い~ 私は運が悪いだけ~♬

ダブルヒロインで二人揃ってヒモの伊藤猛に振り回されて男運の悪い女、工藤翔子&速水今日子は現役バリバリのバーのママさんであり、新宿ゴールデン街に空気のように馴染んでる。しっかり者の女ととことんダメなヒモ男、この構図で物語は進んでいく。

脚本協力に荒井晴彦の名前もあるし、下元史朗演じる常連客が野坂昭如の記した「新宿ゴールデン街には2千坪の土地に3百軒の飲み屋があって」中村京子やダーリン石川や外波山文明はカウンターの中の接客側の人、どこからどうみても実録ゴールデン街。

劇中、速水今日子がママで、ヒモ男が伊藤猛で、工藤翔子が伊藤を探しに来る店の名前「罪ほろぼし」今日子は伊藤と付き合う前、別の男の情婦だったが恨みを買って刺された。翔子は伊藤に裏切られ刺そうとして伊藤の情婦を刺した、それぞれのつぐない。

ほんとね、ロクな男が出て来ないんですよ。特に女たらしの貴山侑哉。ご存じの方多いと思いますが内田春菊の元夫です。彼が翔子にしつこく付きまとい、それが翔子がゴールデン街を出られなくなる理由になるんだけど、C調お調子者でホント腹立つ(笑)

基本的にはヒモの伊藤の元カノ翔子と現カノ今日子みたいな三角関係に思えるんだけど、伊藤は一体何股してたんだよ、と思う位に女にだらしなさそうだし、それに輪をかけて女と見れば口説いて一発ヤろうとする貴山に至ってはもう天然記念物もんだよねw

伊藤や貴山と付き合ってしまう時点で男運が悪いとしか言いようがないが(笑)私は曽根中生「新宿乱れ街 いくまで待って」思い出すんだよね。荒井晴彦のホンで、ヒモ男のあまりのダメンズぶりにヒロイン山口美也子が「もうイヤ!こんな生活」絶叫したw

それに比べれば、伊藤も貴山も常識人の範疇に入っちゃうかもしれないね。仕事しないでブラブラしてるけど学はありそうだしホントにやっちゃダメなことはしない。しかも男前だから、母性本能をくすぐるんだろうなあ。ホストになれば稼げるだろうになあ。

伊藤&今日子&翔子の三角関係に、プラス貴山が絡むほぼ男女4人のしっとりと官能的な恋物語なんだけど、脇で登場するゴールデン街オールスターズみたいな面々が豪華で、映画への集中力を削がれる位に豪華なんだよね。そっちの紹介の方が面白いかもw

まず、成人映画的にはなんと言っても中村京子。リアルに「中村酒店」経営してますからね。まだ10年前の作品だから80年代にロマンポルノなどで活躍してた頃の童顔ロリ巨乳の熟したイイ感じに仕上がっていて、まだ結婚願望を口にしてますからねw

次にダーリン石川。パッと見分からなかったけど、オカマバーのマスターで、オネエ言葉で完全なる女装子。対して外波山文明は着流しの和装で漢っぽい。下元史朗は滔々と能弁垂れるおやじで、新宿タイガーは単なる通行人。ここまでがゴールデン街。

今日子が常連客の吉岡睦雄と駆け落ちまがいなことして、偶然その地を訪れた翔子と再会する郊外の広々としたバーのママが水原香菜恵で常連客がぶっちゃあ。しかも、ぶっちゃあは姪が付き合っていた男の元カノに刺されて死んで7回忌というかなり重要な役。

物語についてはね、尺は87分あるんだけど、さっぱり前に進まない、ゴールデン街の飲み屋でくだを巻く酔っ払いたちのグダグダした感じのスピード感まんまで鈍行する心地よさ、いまおかワールド自体は希薄なんだけど空気感みたいなのは確かにある。

ザックリ言えば、今日子がママを勤めるバー「罪ほろぼし」に一人でフラッと入って来た訳ありな女・翔子が流しの歌手に「男運の悪い女のブルース」をリクエスト。その後、色々となんやかんやあり、郊外のバーで今日子と再会してカラオケで「男運の悪い女のブルース」を歌う。

出所した翔子が、実家の山梨に帰る前に立ち寄った新宿ゴールデン街で、この沼から抜けられなくなりそうになって、でも伊藤を忘れるために殺した情婦の骨を盗んで伊藤に渡し「この女も私のことも忘れないでね」ナイフで伊藤を刺す真似して本懐を遂げる。

翔子は自分を裏切った伊藤のことを刺したかったのに誤って彼の情婦を刺してしまった。で、服役して、刺した相手への贖罪の気持ちは重くのしかかっているんだけど、遺族も会ってくれないし山梨に帰るしかない。それしか選択肢がなかったはずなのに。

翔子の行く手を阻んだのはチャラ男の貴山であった。彼は「罪ほろぼし」でしつこくナンパして来て、翔子が「罪ほろぼし」の飲み代を払い忘れてるの気づいて貴山に1万円託そうとすると「これじゃ多すぎるから一緒に呑もうよ」で自宅にお持ち帰りw

( ゚Д゚)え、店じゃないの?戸惑う翔子の服を手際よく脱がせ一発ハメる貴山は火野正平にも比肩するジゴロだねw翔子は貴山と再び「罪ほろぼし」を訪れ、ついに伊藤と再会してしまう。これは今日子が一番恐れていたこと。自分から心が離れるのが辛い。

今日子と伊藤は、バーの2階をヤリ部屋にしてヤリまくっている。今日子の下腹部には傷跡があって、ずっと伊藤はそれを盲腸の痕だと思い込んでいたんだけど、それは昔付き合っていた男が裏切った女に刺された傷。伊藤はその傷をも愛おしそうに愛撫した。

そんな今日子の心のスキを突くように、若くてマジメな常連客の吉岡が「好きです」店の前で待ち構えてプロポーズし、勢いで今日子は吉岡の自宅に付いて行ってしまう。それはゴールデン街からかなり離れた郊外にある、それはそれは立派な豪邸であった。

翔子は貴山のヤリ部屋でセックスした後、「実はね、私、裏切った男の情婦を刺して服役して来たの」身の上を話すと初めて貴山も「バブルの頃にゴールデン街に放火してまだ捕まっていない」とカミングアウト。その言葉は翔子に「そうか!」気づかせた。

ウーウーとなる消防車のサイレンの音に、貴山は「あいつ、やっちまったな」と思った。でも翔子は行く当てもなく郊外を彷徨い、あるバーに入った。ここに、吉岡と一発ヤッた後、夜食を探して一人で外出フラフラ歩いていた今日子がバッタリ会った。

翔子はカラオケで「男運の悪い女」を歌うと今日子と意気投合、刺した伊藤の情婦の墓参りを促され、一緒に行ってみれば「ここに納骨してるんじゃない」よいしょっと墓石をずらして遺骨をちょっと拝借、翔子はこれを伊藤の元へと持参するつもりです!

伊藤は翔子に「いつまでここにいるんだよ」苛立ってきたが、いざ今日子も翔子も揃っていなくなってしまうと寂しくて仕方がない。そんな折り、貴山が「罪ほろぼし」の玄関に灯油を撒き始めるじゃないですか!困ります、うちだけの問題じゃないんです!

貴山はゴールデン街を放火する気マンマンだし、伊藤も黙って見てるだけ、そんな閉塞感漂う状況の中で、郊外バーの客ぶっちゃあが姪の七回忌の話をした時に急に土下座したことをきっかけに立ち直った翔子、伊藤の情婦の遺骨を持って堂々の帰還です!

伊藤は遺骨を渡されて、意味が分からず「何だこれ?」でも、翔子がゴールデン街を出ていく、山梨に帰ると知り「駅まで送ってくよ」そんな伊藤を翔子は手でナイフの形を作り胸を思いっきり刺した。そしてゴールデン街を出ていく翔子の顔は晴れやかだった。

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