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藤田敏八「十八歳、海へ」

神保町シアターで、藤田敏八「十八歳、海へ」 原作は中上健次。 脚本は田村孟と渡辺千明の共同。

釧路から夏期講習で上京した天才美少女(森下愛子)が今治出身で二浪中の年上の青年(永島敏行)と出会い、海で心中を図るも失敗。居合わせた多浪生(小林薫)や愛子の姉を巻き込んで、悲壮感の無いドライでクールな心中遊びの果てに、尽きた若くて儚き命。この時代の空気を色濃く反映した唯一無二の青春映画の金字塔。

藤田敏八監督は作品ごとに私に合う、合わないがはっきり分かれるのだが、これはドンピシャ私のハートを直撃した。私は映画にアクションやコメディを求めていないのだ。悲しい結末に終わるロマンチックな映画を求めているのだ。だから、私にとって本作は不朽の名作なのです。

1979年の作品だが、私が高校生の頃にリアルタイムよりほぼ遅れて観て、その後の人生観にも影響を与える強烈なトラウマになった作品。楽に死にたい、生きていることの方が苦痛だ・・・と感じる人間にとってこの作品自体が魂を救済されるような解毒作用のある映画だとも言える。

この映画を森下愛子が主演のロマンポルノと下心丸出しで観始めた人、手を挙げて下さい!ハイ(^^)/(←お前もかよw)日活がロマンポルノ全盛期に制作公開した一般映画って脱ぐ脱ぐ詐欺の作品が多いんだけど、森下愛子と秋吉久美子は裏切りません、私にとってまさに「ミューズ」

藤田敏八監督の作品は男根主義と言うか、悶々とした男の性欲をレイプとか自慰になぞらえて撮った作品が多いと思うが、本作に関しては絶対的なヒロインである森下愛子の視点から全ての物語が紡がれ、他の登場人物は愛子を通して相対的に描かれてるヒロイン第一人称の作品。

森下愛子18歳は釧路の公立進学校に通う優等生の少女で、夏期講習の成績は全体のトップ。でも偏頭痛持ちで、この痛みが少しでも和らげばいいのに、と常に悩んでいる。それはいくら良い大学に進学し卒業した所で本当に自分の幸せな将来を思い描けない彼女自身の苦悶なのだ。

先にロマンポルノ的にはですね(←おいおいw)やっぱり森下愛子の神々しいヌードでしょう。可愛い顔して脱ぎっぷり見事なんですよ。劇中設定キャラと同様、サバサバとして強い女の子。男は彼女にとって心中する相手であっても、決してロマンスを求めるような間柄じゃない。

風が吹けば桶屋が儲かる式に、どんどん偶然が積み重ねって行くのだけれど、偶然って言うのは意志の力に導かれるものだ。森下愛子の「理想的な死に方をしたい。この18歳の夏に」という強い意志が周りの人間たちに偶然を装ったドラマを多発させ、それは必然の結末に繋がる。

先に森下愛子のヌードについて振り返っちゃいましょう(←こらこらw)最初は心中未遂で拾われた大物経済人の小沢栄太郎宅でシャワーを借りて、思い切りよくバサッと脱いで小沢が目のやり場に困ってるんだもんwその後シャワーヌードで桜色の可愛い乳首が爽やかエロで堪らん!

森下愛子のベッドシーンは2回ある。最初から永島は愛子と一発ヤリたくて悶々してるのがスクリーン越しに伝わって来るんですけどw観客としても早く観てえや!と思ってたらホテルサンルート東京に二人で泊まった日、永島の「ヤラせろや」に「イイわよ」あっさりOK出すw

愛子の濡れ場2回目は箱根の小湧園にあるホテルの離れの庭で、永島にとって念願の青姦(*´ω`)それにしても森下愛子の脱ぎっぷりの良さと濡れ場での余裕が堪らない。彼女、実は経験豊富なんじゃない?とも思えるし、最初から死を怖がってないエロスに満ちた悪女だとも言える。

もう一つ、ロマンポルノ的には森みどりと高橋明。みどりの方は小林薫が働いてるホテルサンルート東京の部屋掃除係で、高橋の方は小林薫の父親が雇ってる運転手。ほんのちょっとしか登場しないけど「ああ、あの人じゃないか!」爪痕をきちんと残して去るのが素晴らしい(笑)

この映画は、多くの登場人物がいるように見えて、実は若い男女4人の濃密な人間関係と肉体関係を生々しく描写したものであります(←結構マジ)森下愛子と永島敏行のカップルを中心に、それに予備校のクラスメートの小林薫と愛子の姉で同居する栄養管理士の島村佳江のたった4人だけ。

衝動的に次々と発生した事件のように見えるエピソードを繋げたようでいて、それは全て運命に導かれるように予め決まっていたこと。森下愛子に強い意志があるからに他ならない「死にたい」「少しでも自分が納得のいく方法で」「この18歳の夏休みのうちに」3つを満足させるために。

ラストで流れる主題歌は、タケカワユキヒデ作曲、元ザ・タイガースの加橋かつみの歌唱とされる。海に向かって亡くなった愛子と永島を悼むレクイエムのような物悲しい雰囲気のままに映画が終わってしまうことに、この時代を強く感じる。まだバブルではない、その前の独特の空気感を持つ時代。

夏期講習で交錯した3人。愛子は釧路の高校3年生で学業は超優秀。永島は2浪中で今治にある実家を継げと言われてる。小林は父親が医師で裏口入学に失敗したままやる気なし夫の多浪生。18歳の愛子と20歳の永島と、更に年上の小林との男女三角関係で話しは進んでいくのだ。

冒頭、夜の砂浜で愛子が永島とデートしてる。永島はヤリたい盛りで「青姦」を持ち掛け、愛子は愛媛出身の永島をからかうように「それってミカンとかイヨカンみたいなもの?」そこに小林が暴走族の深見三章に絡まれて殴られた後に海に向かって歩を進める心中競争の流れになる。

錘を付けて海に入っていく小林と深見。その我慢比べに小林は勝って颯爽とバイクで去っていく。これを見て「カッケー」愛子と永島は服を着たまま海に向かって歩き始めた。このまま心中したい。でも愛子は海が深くなって足が付くか付かないかのところで溺れそうになってもがく。

愛子は海で溺れそうになった瞬間、偏頭痛がスッと治ったことに驚き、それから同じ状況を希求し始め、人生に絶望した経緯は全く自分と違う永島と連れ立って心中を何度も試みるのだが、最初の入水自殺は海を見ていた老人(小沢栄太郎)に見つかり泳いで救出されてしまう。

小沢は財界の大物で、目の前で若い男女が入水自殺してる場面なんて見たくなくて、二人を助け出し別荘に案内。シャワーを浴びる全裸の永島はどうでもいいけど愛子たんヌードは爽やかエロで胸がどきどき!でも永島が辛気臭い話を初めて小沢老人激怒で10万円小切手が手切れ金。

愛子は砂浜で暴走族の深水に入水自殺競争で勝った小林が予備校のクラスメートで最前列でいつも寝てるあの人か!と興味を持ち、永島と体験した不思議な心中の後の体験談を話すが、小林は(* ̄- ̄)ふ~んと関心示しながらもやり過ごす。それは小林自身の持つ葛藤そのものなのだ。

小林はホテルサンルート東京でボーイのアルバイトしてる。新潟の実家は貧しい訳じゃない。医師の父親を持ち、医学部に入って後を継いで欲しいと期待されたが裏口入学の失敗を契機に父親に反発して家を出て、上京して一人暮らししてる。自活することが彼のアイデンティティ。

永島は10万円の小切手を現金に換えた。愛子は小林のバイトするホテルに宿泊を提案。どスケベな永島はソッコーOKwwwチェックインすると小林は「お前ら、心中するつもりじゃないだろうな!」と様子を気に掛けるが、永島はまず、愛子と一発ヤリたいw心中は後の話だ(笑)

ベッドに横になった愛子たんのブラを押し上げ、乳首を吸う永島は逝ってヨシ!愛子はおっぱいモロ出ししながら「ねえ」とセックスは中断し、ここで心中の相談。睡眠薬を大量に飲んで意識が朦朧となって無くなってしまえばいいのに・・・ということで、睡眠薬を大量に飲んで意識不明状態で発見された!

小沢老人との件を根に持ってる永島が「小沢さん、今度は死にますよ」と電話番号ごとメモを残してて、それを発見した小林は「なんかヤバいんじゃない?」メモは処分して小沢に連絡、寝込んだ愛子と永島の元に、愛子の姉、佳江が見舞いに来てるところに小沢老人やって来たw

小沢は「あんた、姉のくせに何やってんだ!」罵詈雑言残して病院を去って、ここに小林が登場。佳江は一連の騒動に小林が絡んでること。小林は佳江の持っていた、ロタ島行きの切符の件を知る。姉妹二人で観光に行くつもりだったロタだったのだが、愛子は入院してしまった。

佳江はここで小林に思わぬことをカミングアウトする「ホントは妹との仲は上手く行ってないの」そっかーと小林は誘われるままに佳江と二人でロタ島へのランデブー。ここ、小型セスナ機でちゃんとロタ島に2泊3日のロケ行って撮ってるのスゲエ。まだ1979年の話だからね。

愛子はロタ島に行く予定だった姉の佳江は実家の釧路に帰ってるとばかり思ってた。愛子と永島は退院したら永島の友人である下條アトムが帰省中の留守宅アパートに転がりこむつもりで実際に転がり込んで、初めて20歳と18歳でささやかな神田川同棲生活が始まったと思ったのに。

愛子は、小林から「君のお姉さんとロタ島に行った」と打ち明けられ、( ゚Д゚)小林さんだけは信じていたのに・・・と絶望に打ちひしがれる。永島は心中をするため大事なパートナーであったが、愛子が偏頭痛持ちである心中の悲痛さをホントに理解してるのは小林だけと思ってた。

下條の帰宅で愛子の偏頭痛が始まった。デリケートな永島とのいつ死ぬか心中準備の大事な時間をメチャクチャにされたショックで、愛子の憔悴を見た永島は小林に「どっか泊まる所は無いか?」と相談。その晩、小林もこれまでの上京生活で父と息子関係最大の危機を迎えていた。

新潟で大学病院に勤める父親がホテルサンルート東京に泊まっているという偶然!父親は小林のホテルマンの格好観て「お前、何やってんだ」と激怒り。箱根で学会の発表があるから、そこに泊まりに来いとメモ残して去った。そこに永島から「泊まるとこ無いか」の相談ですよw

愛子と永島は小林に言われたままに箱根小湧園のホテルにチェックインしたらスゲエ豪華な部屋で、しかもお庭まで付いていてびっくり!その庭で、ついに永島は念願の青姦達成!二人して夜空を眺めてたら「そうか!」ちょうどぶら下がるのによさげな木の枝があるじゃないですか。

小林が永島に渡していたおまじない。それは「お父さん、あなたのために二人は死にます」の言葉。封を開けてそれを読んだ永島は冗談じゃねえ!と怒り狂い、愛子は冷静に、その横に予備校のクラス名と小林の名前をメモした。二人にとっての自殺は小林の父親とは何の関係も無い。

木の枝を眺めながら、愛子は思い出しちゃうんだよね。海で溺れそうになった時、偏頭痛が治ったあの一瞬のこと。木に縄をぶら下げて首を括れば、その瞬間に偏頭痛がスッと治ってしかもあの世に逝ける。一石二鳥じゃない!永島と愛子は仲良く縄を木の枝からぶら下げて、同時に首を括った。

体重の重そうな永島が先に首括り中に地面に落っこちちゃって、足をねん挫し「折れたんじゃねえか?」(←死ぬ間際だぜw)愛子の方は順調にグイグイと首が絞められていき、そして二人とも息絶えた。その報を聞き、慌てて駆け付けた小林は霊安室で二人の安らかな遺体と対面。

愛子、十八歳は永島と心中した。小林は二人と初めて出会った鎌倉の砂浜に佇み「俺が二人を殺したんだ」と後悔するが、姉の佳江は「あんたが殺したんじゃ無い」と否定する。愛子と永島は最初から心中する運命だったのだ。その経過で、小林と出会った。ただそれだけのこと。

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