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関本郁夫「スクール・ウォーズ HERO」

ラピュタ阿佐ヶ谷で、関本郁夫「スクール・ウォーズ HERO」 原作は山口良治。 脚本は佐伯俊道と山田立の共同。

元日本代表のラガーマン(照英)が、学級崩壊で荒廃する伏見工業高校に赴任、不良の巣窟だったラグビー部監督に就任。抜群の身体能力を持つ伝説の不良「弥栄の信吾」らを鍛え上げ、名門花園高校に勝利するまでの汗と涙のサクセスストーリー、熱血青春映画。

観る前からどんな映画かだいたい想像は付いてる訳ですよ。正直言って、他の作品を観る時間調整で観ただけでハードルが凄く低かったことも認めます。でもね、いやあボロボロ泣きました。私もアラカンになって涙腺が弱ってるのかなあ、ド直球の青春ドラマなんです。

本作が制作されたのは2004年。1984年に山下真司が熱血泣き虫先生を演じてイソップとか魅力的で印象的なキャラとか加えて大ブームになってから20年も月日が経ってるのよね。私は当時、予備校に通ってた頃でこんなドラマ、一番自分から遠ざけたかった時期だったw

リアルには、1975年に京都市立伏見工業に赴任した元日本代表の山口良治先生が、112vs0で惨敗した名門花園高校を熱血指導で翌年には撃破、全国大会の常連になり1980年にはついに念願の日本一を勝ち取るまでの、事実は小説より迫力がある、感動の実話が元なのです。

今の若い人には伏見工業ラグビー部とか泣き虫先生とか言っても「何それ?」ピンと来ないかも知れないけど、平尾誠二とか大八木敦史がラグビー部立ち上げ初期から同志社大学、神戸製鋼までラグビー黄金時代を築いた歴史については最低限知っておいて欲しいと思う。

ということで(ということで、じゃねーよw)私はテレビドラマ版はあまり熱心な視聴者ではなかったのであまり内容は覚えていないんだけど、そもそもが舞台を京都でなく関東(実際には神奈川県)に移してるじゃん!とは思ってた。だからリアルには感じなかった。

テレビドラマが大ブームになった1984~85年頃って、伏見工業が全国でも有数の強豪になって平尾とか大八木とかスター選手も登場し、あの不良の巣窟だった工業高校がこんなラグビー強豪校になったのかよ!驚きで迎えられた虚実入り混じった興奮があったのだと思う。

翻って本作は山口良治先生の自叙伝に忠実に撮っていて、かつ伏見稲荷駅周辺から伏見工業そのものをロケしていて、喋ってる言葉も関西弁だし圧倒的にリアルなんだよね。さすが、東映京都出身の関本監督の力量だと思うし、吉本興業が製作委員会に入ってるのデカい。

吉本興業のタレントで登場するのは間寛平、宮川花子、中川家剛、中川家礼二の4人で、一番良い役どころは寛平ちゃんなんだけど、美味しい役は中川家剛だね。だって不良たちに授業中に服に火を着けられて炎上する(笑)その生徒、後に消防士になったらしいけどw

あとね、神田沙也加(本作はSAYAKA名義)が若干18歳、等身大でラグビー部のマネージャーで健気に先生と部員たちを支え続ける若さ溢れる演技がイイねえ。もう一人、マネージャーのフーローこと望月君の白血病で死去エピソードはこうくると分かってても泣けた。

山口先生を献身的に支える良く出来た妻役で、私の人生におけるサイコーのミューズの一人、和久井映見が出てるじゃありませんか!男臭いドラマなんだけど、美人どころの神田沙也加と和久井映見がラグビー中心の共同生活で映画的にも貴重な癒しになってるんだよね。

主題歌は、スクールウォーズと言えばこの歌「ヒーロー」エンディングで流れ出すと私ら世代はなんとも言えない気分でボロボロ泣けるんだけど歌声が麻倉未稀じゃない?大黒摩季がリメイクしてんだ!こんなバージョンもあったなんて、やっぱり映画の世界って奥が深い!

あ、そうそう、この作品には大八木敦史も出演してるんですよ!ヒムセルフ、なんてことは無く(笑)ラグビー部員たちが「弥栄の信吾」と喧嘩して補導された時に弥栄警察署の警官役で「この野郎、ふざけんな!」机叩いて怒る演技のド迫力、こっち側の人だもんなw

でもね、いろんな人が登場していろんなエピソードが紡がれるんだけど、常に中心にいるのは照英なんだよね。バラエティ番組などでしか見たことが無かったから「こりゃスゲエ」一人で映画一本背負う力量ある。鍛え上げた身体の強さ、筋肉にも説得力抜群だからね。

ガチでラグビーの試合するシーンが2回ある。京都府春季総合体育大会で花園高校に112対0の大敗を喫した試合、翌年同大会決勝で花園高校を18対17(史実では18対12だが)で破り初優勝を果たした試合。試合展開とかも入念に描き込んでいて、手間暇をかけてる、素晴らしい!

クライマックスが花園高校に大敗した試合後に山口先生が「これからお前たちを殴る!」負けて悔しい思いをどこにぶつけたらいいか分からない部員たちを殴りまくり1ヶ月の謹慎(コンプラ的にはやっぱりアウトだったw)でもね、暴力って当事者同士の捉え方の問題。

山口先生自身の成長物語でもある。不良生徒たちと対峙する時、ラグビーの指導をする時、俺は元日本代表というプライドで生徒を下に見ていたのではないか?この反省を生かして生徒ときちんと向き合うことが出来た山口先生、不良たちのハートを鷲掴みにしていく。

面白いのは、山口先生が中学自体に指導して韋駄天ぶりに目を付けていた荒井(弓削智久)、絶対に口説き落としたい弥栄の信吾こと後藤(小林且弥)のケツをガン見したりナデナデして「いいケツだ」お前、誤解されてるよ(笑)にしてもちょっとゲイテイストあってワロタw

感想の書き方は、もうごちゃごちゃしてよく分かんないからw絶対主役の照英演じる山口先生だけそう呼んで、他の個性的な生徒たちは役名で「小渕」「後藤」「荒井」でOK!というよりも、フィフティーンだからたくさん出て来るけどエピソード的にはこの3人だけよね。

「小渕」はラグビー部3年のど不良の中でも牽引するリーダー格で、名門校との練習試合ボイコット騒動の首謀者、留年しちゃうんだけどw2年生の精一杯やってる姿に感動して花園高校にこてんぱんにやられたが山口先生の「お疲れさん」に感動して最後まで頑張ることに。

「荒井」は山口先生が中学時代から目を付けていた俊足で、最初は「絶対に入らねえ」抵抗するけど「1週間だけやってみろ」の約束にノセられそのままラグビーの魅力にハマっていく。当然、主力選手として大活躍し、その将来は海外を飛び回る商社マンになるんですから!

でもね、生徒側の絶対主役は「弥栄の信吾」こと「後藤」で、父子家庭で父親の間寛平は阪神戦みながら大酒飲みで母親は男を作って逃げちゃった。家庭訪問で後藤を投げ倒した山口先生。名古屋遠征の練習試合で彼に嫁の和久井映見お手製弁当を差し入れてハートをゲット!

でね、真一直線のサクセスストーリーだとひねりが無いから、選手志望だったけど体力無くてマネージャーに転じた望月君を最大限に使う。彼は白血病で、花園高校との全国大会を賭けた決勝戦は病床でテレビ観戦していた。オールフォーワン、ワンフォーオールの戦い。

京都大会の決勝は手に汗握るシーソーゲーム。花園高校が4点先行すれば伏見工業が6点を返し、でもその後は花園高校がペナルティゴールで3点決めるとトライを立て続けに決めて17対6まで点差が開き、これまでかと思われた後に終盤でトライを重ね1点差に迫った。

そして最後の運命を決めるコンバージョンキック。スタジアムが静寂に包まれる中、みなが息を呑む中で成功し2点が入って劇的な18対17の逆転勝利!顔をクシャクシャにして涙する山口先生は生徒たちに胴上げされ、赴任して以来サイコーの瞬間を味わった。ところが、その頃、望月君は勝利を見届けて永遠の眠りに就いた。

全国大会出場を決めた生徒たちは、白血病で命を落とした望月君に涙の報告。母親(原日出子)が取り出した望月君手書きのラグビー部員全員の似顔絵ポスターには「目指せ、日本一!」と書かれていた。一人はみんなのために、みんなは一人のために、のラグビー精神。

望月君の遺体を乗せた霊柩車が駐車場から出て行く。自然とラグビー部員たちはオールブラックスのハカ(なのかな?詳しくないから良く分からないんだけど)を踊りながら熱唱した。望月のためにも絶対取るぞ、全国の頂点を!

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