記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

城定秀夫「セフレの品格 決意」

T・ジョイ梅田で、城定秀夫「セフレの品格 決意」 原作は湊よりこ。

セフレ関係に戻ったバツイチの産婦人科医(青柳翔)とバツ2のシングルマザー(行平あい佳)彼らの前に現れた、親から虐待を受け傷ついた女子高生(高石あかり)と禁欲的なボクサー青年(石橋侑大)に嵐の予感!二人はそれぞれ大人の男女に憧れて恋をした。セフレなんて割り切れない若者の純情が弾ける傑作。

もうね、大阪に出張中に旅先で映画を観るという感動3倍増し前提だとしてもこれはちょっと私としては流した涙の量が半端じゃありませんでしたよ。これまで観た城定監督の作品の中でも上位に入ると思う。色々と不格好で論理的に破綻しかけてるところまで実は面白いのだ。

前半で教科書通り型通りに撮り、後半で一気に弾ける、城定監督お得意の2本撮りはVシネ時代には何度か観られたものでほとんど成功している。例えば「18倫」と続編の「18倫アイドルを探せ」など、前編があってこそ続編が面白い、でも各々で完結している典型的な作品だ。

本作に関しては主役の青柳&あい佳を一回り以上も若いあかり&石橋が完全に喰っちゃってる。セフレと割り切る大人になれない子供の幼さを残す若者にこそ私たちは「共感」できるんじゃないか?前編も確かに面白かったが「共感」できなかったんだよね。そこが最大の違い。

もうね、途中からボロボロ泣いた。あかりちゃんが出て来てまず余りに可哀想な彼女に号泣して、あい佳さんラブ!一直線で特攻隊のようにツッコむ石橋君に更に号泣した。やっぱりね、青柳とあい佳の二人は精神的に枯れてるんだよね。セックスはしたいけど恋はしたくない。

前編で「もう恋なんてしない」をポリシーに生きる青柳のセフレになって自らも「もう恋なんてしない」生き方を選んだあい佳。でもね、恋をしないと決めることってそうそう簡単なことじゃない。特にバツイチ、バツ2でしくじった訳じゃない10代、20代の若者にはね。

前編ではピンク映画のフォーマットの如く濡れ場をきちんと描いて男女のどろどろしないセフレ関係を描くことに終始した物語は、続編に入って濡れ場なんてかなぐり捨てて、重いネグレクト過去を持つ少女と恋を賭けた特攻ボクシングで盛り上がる、もうセフレ全然関係ないw

前編ではあまり気に留めなかったエンディング曲の前野健太「ああ」がずっしり心に刺さる。♬ああ この時もいつか ただの風になり 誰かの頬に触れるの こんなことあったよって そういう歌を歌わせて 花咲くようにちょっと♬そう、これはそんなこともあったねってお話。

本人たちにとってドラマチックで人生を賭けた一大事でも他人にとってはちょっとこんな話もあったっけ、という程でしかない。所詮は恋に生きる男女の精神的高揚と修羅の世界でしか無いんだけど、そこから遠ざかるためのセフレ道がいつのまにか凄まじいドラマを生んでる。

メジャーに進出してからの城定監督は100分前後の長編を撮っているかと言えば余り撮っていない。現時点で城定監督の最大のヒット作と言っても良い「アルプススタンドのはしの方」にしたって75分の尺で、これは成人映画のスタンダードな尺と変わらない、強みの部分。

対して、「私の奴隷になりなさい」の第2章と第3章、これなんか行平あい佳がヒロインと言う点でも本作と共通してるんだけど、これまでは100分近い尺を持て余してる感じがしたのよね。正直な所、前編の「初恋」に関しては尺がもっと短くても収まるボリュームだった。

対して本作は前編での種蒔きが非常に上手く行ったこともあるだろうが、次から次へとニューキャラ、エピソードを惜しげもなく投入しジェットコースタームービーのように仕上げる、端正な演出に見えて来た城定作品の新しい一面を見た気がするね。破壊衝動こそが高揚感。

高石あかりはまだ若いけどホントにいい役者さんだと思う。「べいびーわるきゅーれ」の時のぶっ飛んだキレキャラは本作でも引き継いでると思うけど、途中から反省して素直なナイスキャラに激変する部分がキモだと思うのよね。両面の演技ができるんだって新発見した。

石橋侑大の方は熱血マジメキャラで最後の最後まで押し通す。暑苦しいような体育会系の感じがあい佳さん好きです!恋してはっちゃけるのは本作がセフレを扱っている作品の中においては完全に特異な存在で、しかも恋を実らせるための無謀な対チャンプ・ボクシングに震えたw

我らが麻木貴仁さんが満を持して登場はあかりを夜の街で買おうとするゲス客。指を2本立てて2万円アピール気持ち悪いw挙げ句に「淫行だぞ」青柳にあかり連れ戻される。あと、あい佳がレイプ未遂に遭った時に声かけて服をかけて上げる優しい人が山本宗介なのかな?

冒頭、あい佳がセフレの青柳と騎乗位で大胆FUCKして腰を痛める姿に爆笑(笑)このスタートの時点で「ああ、前編を利用したスピンオフモードだな」と直感し、それは良い予感として当たります。出勤して職場で腰を「いてて」押さえるあい佳をガン見する清掃員の石橋(笑)

もう青柳に恋なんてしない、セフレで結構と割り切ったあい佳に青柳から「声を聞きたくなった」ビーンボールまがいの電話が来て、日曜日に家を訪ねてみれば見知らぬ少女のあかりが「おばさん、誰?」涙目で家を出るあい佳はせめて私と会う日だけは別の女連れ込まないで!

あかりは青柳の産婦人科で堕胎した可哀想な少女。青柳は倫理観から堕胎に反対したが、彼女はネグレクトを受け家出して立ちんぼで客を取り誰とも分からない父親の子を妊娠。ここまで知って青柳は放って置けず家に置く。最初は疑っていたあい佳だが、あかりと仲良くなる。

でもね、大人の青柳さんラブ!なあかりは邪魔者のあい佳が心の底で憎くて仕方ない。セックス中にハダカを鏡に映され「見てみろ!」青柳に羞恥プレイ受けるあい佳が羨ましくて仕方ないのだ(そこかよw)で、一計を案じたあかりはとんでもない計画を実行に移すのだ。

狙うはあい佳の首一つ!青柳を取られまいとメンヘラー少女のあかりは策をめぐらすのだが、それを知った恋する青柳に機先を制するように「私、今度はあの女を殺してしまうかもしれない」と呟くあかりたん、マジ怖ええ!パラノイア的な演技が堪らない本作のあかりたん!

あかりは仲間のチンピラ「ヤラせてあげるから協力して」あい佳をレイプする作戦に出るが失敗。理由はチンピラが「お前をヤルのとレイプじゃ割に合わねえ」だって(笑)青柳はその事実を知りあい佳に「警察には行かないでくれ」この言葉にキレたあい佳は別れる決意した。

青柳はあかりの気持ちを理解しようと頑張るが、屋上で転落しそうにブラブラしながらネグレクト体験を語るあかり「母と再婚した父親が私を犯し続け母はそれを知ると私を殴った」行き場のないあかりを青柳は籍に入れた。あい佳は「やっぱり若い娘がいいのね」諦めた。

すっかり枯れた日常に戻ったあい佳。職場で派遣社員が大事な書類を誤ってゴミに出して大騒動。清掃員の石橋に相談し一日中のゴミをひっくり返して探すうちに、あい佳はすっかり石橋と仲良くなった。でもアラフォーあい佳にとって23歳の石橋は若すぎる、まさか恋なんて。

石橋はボクサーの卵で清掃員は食っていくためのバイト。あい佳に試合のチケットをプレゼント、観戦した夜、彼女は自分もボクササイズを始める決意をした。そして夜のボクシングジム、石橋の引き締まった肉体を見たあい佳が(;゚д゚)ゴクリ…そのまま欲情して抱かれた。

あい佳は石橋に念を押す。「あなたと私はセフレの関係。決して恋してはいけない」でも、若い石橋はセクシーなあい佳にのめりこみ、精神的に結ばれないならとセックスで発散しようとするがそれも拒まれ、もう俺どうしたらいいの?どんどん追い詰められていく石橋。

ある日突然、あかりがあい佳の自宅を訪ねて来る。男を使って私をレイプしようとしたとんでもない女にあい佳は強烈な拒絶反応を示すが(当たり前w)私の話を聞いてくださいと涙を流すあかりを目の前に取り敢えず喫茶店で話を聞くあい佳に、あかりの口から衝撃の事実!

青柳はあかりの両親に1000万円を払って二度と近づかないように約束し、養女にして父娘関係となった。そこにセックスは無かった。充実した日々を送る中であかりはあい佳に対する贖罪の気持ちが強くなりどうしても謝りたかった。そして18歳の誕生パーティに招待した。

年下セフレ石橋の部屋でセックスするあい佳は、無意識のうちに「青柳さん・・・」呟き石橋は強烈に嫉妬。そしてお泊りは絶対に避けるあい佳にかかって来た青柳の電話はあかり18歳誕生パーティの日時の連絡であった。石橋は血走った目で「俺も行く!」もう止められないw

18歳を迎えた晴れの日に、これまでの不良少女のハスに構えた感じがウソのようにあい佳に謝罪と感謝の言葉、そして青柳にも感謝の言葉を述べたあかりは「次はあなたの番よ」パーティで一人だけ浮いている石橋は「俺もう帰る!」あかりの「逃げるの?」に足が止まった。

石橋はこれまで我慢して来たあい佳への熱い思いを口に出す「俺はあい佳さんが好きです。俺がこの試合に勝ったら、あい佳さんにプロポーズします」それは実力差が激しい日本チャンピオンへの挑戦マッチであった。招待券を置き青柳家を出た石橋の表情は晴れ晴れしていた。

買い物帰りのあかりとすれ違った石橋は二人グーパンチして、シャドーボクシングの真似するあかりに手に取ったミカンで勝利を誓う石橋。で、ここから来たよ、来ましたよ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!。本格的な石橋の拳闘シーンが本作の実はハイライトではないか。

顔をボコボコにされながらも「あい佳さんのために」特攻を繰り返す石橋はもう戻れない勝負に、でも負けた。点滴を打つベッドの傍らであい佳が「大好きよ」でも苦笑いする石橋。その好きって恋とは違う。ほろ苦い大人の女との失恋を機に強くなるんだ石橋、君はまだ若い!

あかりは石橋と初対面の時から「可愛いじゃん(*'▽')」満更じゃなかった。元々、青柳とは父娘の関係。退院した石橋に声をかけたあかりが「食事でもいかない?」石橋が「牛丼でもw」二人仲良く歩き始めたあかりと石橋はそれぞれ、青柳とあい佳の束縛から解き放たれた。

そしてまた、同窓会の季節がやって来たwあの日と同じように、遅れて来た青柳をじっとガン見するあい佳の表情は余裕だ。青柳はあい佳と肩を並べて酒を飲みながら「これからどうしようか?」答えは一つに決まってる。あい佳は「ホテル、行こ(´▽`)」ああ、二人は素敵なセフレ関係。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?