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渡邊孝好「エンジェル 僕の歌は君の歌」

神保町シアターで、渡邊孝好「エンジェル 僕の歌は君の歌」 脚本は長谷川康夫。

最愛の恋人(和久井映見)にフラれた元ラガーマンの青年(織田裕二)が偶然出会った天使(大地真央)から教えられた、映見は一週間後に死ぬ運命。織田の映見に対する想い、ラグビーの聖地に飛んだ映見に届くのか?織田の純愛爆走と真央の秘めた想いが交錯する熱血恋愛ドラマ。

ここまで一人の人を好きになってとことん情熱的に追いかけたら気持ちいいと思う。当然、織田がイケメンだから成り立つ話だけど(笑)映見はホント、イイ女なんだよなあ。でもね、対抗馬として真央も出てきますから。三角関係になるんだよね、いつの間にか。

和久井映見について私的な想いなんだけど、学生時代に交際してた女性に似てるんだよね。知的で地味目でしかも美人。私のどストライクのミューズがよりによってこんな暑苦しい織田に追いかけられて何なんだよ!と思うも、それだけ魅力的だってことなんだよね。

和久井映見は当時ピチピチの21歳。まだあどけなさの残るルックスで、織田の記憶の中で映見とのラブラブだった日々がエルトン・ジョンの名曲に乗せて回想される場面とか、もうデレデレしちゃって仕方ない。私的には映見のチャーミングさを堪能するだけでも満点!

でね、これだけ映見!映見!言っといて何なんだけど(笑)ホントのヒロインは間違いなくエンジェル役の大地真央だと思う。人間の姿でフツーに登場して役柄は「天使」だから最初は馴染むまで時間がかかるんだけど、花屋の三木のり平だって天使だから、思い込めば天使に見える!

織田が別れた恋人の映見を一途に想うお話が、途中からそんな織田を愛しく思う天使の真央のラブストーリーに変わって来るのよね。で、織田が真央にお願いするの、頼むから映見を死なさないでくれ!真央は私をギュッと抱いて!自分が犠牲になって願いを叶える。

真央が織田に出した条件。映見の命は救うけど織田は映見と会ったことが無い全くの他人になる。それでもいいのか?と。映見の命は救われたがアンティークショップの前で一度は擦れ違っただけの二人の前に急に大雨が降り出しその後を予感させながら終わるのよね。

映画のモチーフはエルトン・ジョンが歌う「僕の歌は君の歌」から以下、訳詞。♪ちょっとおかしいかな 今の気持ちを伝えたい 気持ちを隠くすのがどうも下手なんだ お金なんて大して持っていないけど 持っていたら君と一緒に住める位の 大きさの家を買いたいな♪

このエルトン・ジョンが歌う名曲、「ユア・ソング」と言った方が通りはいいのかな。冒頭でいきなり織田が別れた映見と過ごしたラブラブの日々に劇伴でかかり歌詞の字幕まで出て「いきなりかよ!」ハッタリ的な開巻からラストで再び流れ出した時のカタルシス!

映見は暑苦しく追いかける織田が口説き文句で死んでしまう映見の姿を、声を、仕草をずっと自分の記憶に焼き付けたいと言って「全然違う!」映見に拒否られるんだけど、これこそまさに僕の歌は君の歌、君の歌は僕の歌、相手の気持ちになって考えることの大事さ。

映見はラガーマンとして活躍した織田のことが好きだったけど、審判に暴力行為を働いて永久追放になった織田のプレイする姿を見たことが無い。映見は織田と別れた後も織田のミニチュアのジャージ姿を机に飾り続けてる。ホントは織田のことがずっと今でも好き。

映見は織田に車の中で別れを告げ、狼狽する織田に対してサイドブレーキ引く攻撃で織田なすすべ無し。新恋人は医師と聞いて、自動車修理の営業をしてる冴えない自分じゃ勝ち目がない、卑屈になったりもするんだけど、そんな彼に大事件が起きるの、地下鉄で。

織田は地下鉄の階段で擦れ違いざまにぶつかった美女が写真をバラバラと落として拾ってあげてる最中に映見の写真があってびっくり!その中にはテレビで死亡が報道された政治家とかいて、その数日後には大竹まことも入院先で死亡したと聞いて、映見、死ぬんかよ!

織田は最初、真央のことを死神と勘違いするんだけど真央は天使!真央の方が織田を天使と勘違いしたのは天使仲間の三木のり平の店に1万5千円もする薔薇の花束を映見にプレゼントしようと訪れていたから。でもね、織田は真央の天使ぶりをビルの屋上で見ちゃう!

ガラスのようにキラキラ光る玉を真央がフッと吹いて夜空に舞い上がり瞬きながら消えていく。そんな情景を目の当たりにして織田の中で真央は天使と確信に変わる。で、織田は映見が亡くなるはずの7月7日夜7時まで懸命に映見にアプローチして真実を伝えようとする。

織田が追いかければ追いかける程に映見は逃げる。で、医師とデート中に織田はスクランブル交差点で「映見はもうすぐ死ぬんだ!」とか絶叫して医師は苦笑いw最初は全然信じていなかった映見も織田のあまりの情熱に徐々に心がほだされていくのね、織田を見直す。

そんな織田と映見の恋の駆け引きを陰にちょこんと座ってじっと見つめる真央は、織田のあまりの情熱の激しさに、エンジェル真央が恋しちゃうの。のり平にも自分の気持ちを伝えるんだけど御法度なんだよね。全貯金40万円卸して祈祷師に頼む織田に無駄よと伝えても。

映見を追いかけて会社を欠勤続けた挙げ句、激怒した上司の上田耕一に土下座して給料3ヶ月分の前借りを懇願する織田はサイコパス(笑)手にした大金は映見の実家に父親の川谷拓三と星由里子に結婚資金として収め唖然とする両親をよそに映見の部屋に乗り込む。

で、そんなこんなで織田の熱い情熱ほとばしる6日間があっという間に過ぎて気が付けば映見が死ぬ前日。織田は映見の家を訪ねて初めてゆっくりと話を伝えることができるはずなのに、俺の記憶に映見を留めたいみたいは身勝手な台詞にドン引きした映見は決意する。

「そうだ!」(そうだ、じゃねーよw)ラグビーの聖地、ニュージーランドのオークランドに行こう!織田から貰った切符は使わずに残っていた。ニュージーランド航空で旅立つ映見。彼女の父親の川谷拓三はイイ人で、フライトの時間を何気なく織田に伝えた。

終盤、映見がフライトでニュージーランドに飛び、織田が追いかけることで俄かに活況を呈する物語。舞台となるイーデン・パークでは本場ニュージーランドのラガーメンのプレイぶりや観客の熱狂、そして貸切ってのハイライトまでスタジアムオタクを唸らせる絶景!

でもね、織田は航空券持ってないから空港の中に入れず映見を取り逃がし、慌てて切符を買おうとするがファーストクラスでしかもオーストラリア行しか無いの。仕方ないから愛車のフォルクスワーゲンを売り払い金を作り乗継便を使って汽車でオークランドに到着。

その頃、映見はオークランドのイーデンパークで本場ラグビーを観戦し、一人グラウンドに下りた。ヒッチハイクでやって来た織田が入場ゲートからスッと顔を出し映見の前に現れる名場面!そして映見がキックしても飛ばないボール。織田は華麗にPGを決める姿に感動した映見は初めてプレイする彼の雄姿を見た。

ここに遅れて天使の真央がやって来る。顔色を変えた織田は「頼む、映見を死なせないでくれ!」真央は条件を出した「命を救うけどその代わりあなたと映見は二度と会ったことのない赤の他人になるのよ!」ギュッと抱きしめて!そうすれば映見の命、助けてあげる。

織田がギュッと真央を抱きしめた瞬間、全ては終わった。そして二ヶ月後、アンティークショップでオルゴールから流れるエルトン・ジョン気に入って買い物を終えた映見が店を出て織田とすれ違う。あの時、エンジンが一度でかかれば映見は救われるとおまじまいをかけた車、エンストして織田は修理に没頭していた。

さりげなく擦れ違った映見の頭上に突然の大雨。慌てて雨宿りする映見を車の修理から目をそらして見つめた織田。優しい歌声で僕の歌は君の歌。アンティークショップの店内から見守る老婆は、天使だった大地真央の時を経て老いた姿。店内に飾られたセピア色の写真の中に天使だった頃の真央。


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