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いま、民族音楽を知らなければならない理由【琉球音楽編】〜寅次郎の!音楽道(仮)〜

お久しぶりです!寅次郎です!
更新が遅くなってしまいました汗 図書館やらに足を運び文献調査をしていると楽しくなってしまい、リサーチ作業に没頭しておりました汗

それでは、後編!と言いたいところでしたが、趣向を変えて民族音楽をシリーズ連載します!
民族音楽について調べていくとあまりの奥深さに「これは一つ一つ分けてご紹介した方がボリューム面でも、見せ方としても親切である!」と判断しました苦笑

という訳で、今回のテーマ!

【本日のテーマ】

新しいヒットの法則としての民族音楽的楽曲づくり(琉球音楽編) 〜琉球音楽の3つの特徴〜

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前回は、日本民族の代表的な音階である『ヨナ抜き音階』をご紹介したところで終了しました。
今回は琉球音楽に触れるだけでなく、更にそこから深掘りして音楽の新たな可能性を模索します。

特徴その1:音階

本州の民謡にヨナ抜き音階の曲が多い一方、かつて琉球と呼ばれた沖縄には琉球音階=ニロ抜き音階というものが存在します。

「ニロ」とは「2」「6」に由来し、その名の通り第2音と第6音を抜きます。

ニロ抜き音階自体も長音階と短音階の2種類に分かれ、短音階を用いた楽曲は非常に稀なケースであると言えます。
音が与える印象としては、長音階はまさに沖縄らしい音色です。一方、短音階は長音階の特徴に加え、悲しげでありながら芯の強さを感じさせる音階です。

●ニロ抜き長音階を使用した楽曲

※『島人ぬ宝』ーBEGIN

言わずと知れた沖縄を代表する曲で、本州でもカラオケなどで親しまれています。

※『海の声』ー浦島太郎(桐谷健太)

海の声もまたBEGINが楽曲を手がけており、沖縄を代表するアーティストが作る楽曲にニロ抜き音階が使用されていることからも、如何に地域に根ざした音階であるか、お分かりいただけると思います。

●ニロ抜き短音階を使用した楽曲

※『曇天』ーDOES

ニロ抜き音階独特の悲しげでやるせない雰囲気とどこか力強さのある音色が見事生かされています。

※『修羅』ーDOES

間延びした音色とニロ抜き音階が上手く合わさり、気怠さの中にも危険な香りを感じさせる楽曲となっています。

●結論
ヨナ抜き音階よりも楽曲での使用例も少ないということは、例えば琉球の世界観に引っ張られやすいなど理由はあるとは思います。
しかし、それを強みとして活かした楽曲があるのも事実であり、現代ポップスに取り込むことで新たな創作の幅も生まれるのではないでしょうか。

特徴その2:リズム 〜オフ・ビート(裏打ち)〜

現代ポップスの世界に安室奈美恵・SPEED・BEGIN・MONGOL800・ORANGE RANGE・HY・三浦大知など数多くのアーティストを輩出した沖縄。

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その理由として、「沖縄の人はオフ・ビートに強く高度なリズム感も持ち、異なる文化の音楽をも理解して習得できるバイ・ミュージカル能力も高い」ということが調査の結果分かりました。
では、なぜそう言えるのか。ここでは、沖縄音楽の背景も踏まえて詳しくお話ししていきます。

沖縄でフィールドワークも行い沖縄音楽について研究した金城厚さんは面白い発見をしました。

沖縄北部、大宜味村の盆踊り「七月エイサー」を撮影していて気付いたことだが、踊り手の人々が歌に合わせて歩むときに、次の一歩に踏み出そうとする瞬間、オフ・ビートのところで体を軽く弾ませ、また両手首をスナップさせて、軽いアクセントをつけながら歩いているのだ。まさにオフ・ビートのリズムにのっているのである。
(中略)
このことは、オフ・ビートで弾むような歩き方が、ジャズや現代ポップスの影響ではなくて、もともと伝統的にあったことを示している。
著書『沖縄音楽入門』より

この他にも、著書『沖縄音楽入門』で金城さんは「カチャーシー(三線の演奏と歌に合わせて自由に踊る遊び)」を例に挙げて、本土の人が真似しようとしてもなかなかうまくリズムに乗れない理由として「沖縄のオフ・ビートを強調したリズム感は日本本土の大多数の人々のリズム感とは裏返しのように異なっている」と指摘しています。

これは、沖縄音楽には伝統的に偶数拍やオフ・ビートを強く意識する感覚が備わっていることを表しています。

またその理由として、沖縄(かつての琉球)自体が東アジアの中心に位置しており、交易の中心地・音楽交流の場としても機能する中で東アジアの音楽性を取り入れたことが挙げられます。

現に、琉球音階一つとっても似たような要素がポリネシアから東南アジア、中国南部、そしてヒマラヤ地方にぽつりぽつりと散在していることからも日本本土とは大きく異なった音楽性が育まれてきたことが分かります。

また戦後の米軍による占領時代、ジャズやロックンロールの本場で育ち耳も肥えた米兵にジャズやロックンロールのライブを行い実力を更に磨いてきたことからも、ジャズ特有の偶数拍やオフ・ビートに沖縄の人が長けているのも肯けます。

こうして異なる文化の音楽を両方とも習得して使い分けるバイ・ミュージカル能力・リズム感を磨いてきた沖縄は、現代ポップスの世界にも名だたる沖縄出身アーティストを輩出したのでした。

●結論
沖縄がこれまで磨いてきたリズム感覚はグローバルに通用するものであり、本州のアーティストが取り入れるべき魅力的要素もふんだんにあります。

まずは沖縄民謡や歴史から触れることで、自身の音楽性を高めるきっかけになるのではないでしょうか。

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ちなみに、意外なことに沖縄出身でない「あいみょん」も沖縄音楽の要素を汲んでいます
親戚のいる沖縄でお父さんがバンド演奏をするのを観に行った経験や家に三線(沖縄の伝統楽器、三味線の親戚のようなもの)もあり沖縄民謡のCDも良くかかっていたなど、沖縄音楽にも影響を受けたことをインタビューでも語っています。

このことからも、沖縄出身でなくとも音楽性に沖縄の要素を取り入れ音楽的に成功する可能性は十分あると言えるのではないでしょうか。

特徴その3:言霊

最後に、「沖縄音楽の歌詞がなぜ人の心をつかんで離さない不思議な力があるのか」、そこに触れていきたいと思います。

女性たちが踊り神事とも密接なウシデーク、祈りの歌のウムイ(沖縄の方言で「思い」の意味)など神様に捧げる歌なども多い沖縄。
神事とも密接であることから、沖縄音楽には言霊的観点があるとも言えます。
言霊とは、言葉には霊が宿っており、言葉として口から発したことが実現するという考え方です。

沖縄の人は歌った事が実現すると考え、例えば豊漁の歌(すくしきウムイ)や航海安全の歌(上り口説 ぬぶいくどぅち)を歌ったりなど言霊の力を借りて過ごしてきました。今日でもめでたい席などでは歌い演じられるほど、沖縄音楽の奥底に息づいています。

●結論
言霊を大事にする沖縄の音楽文化が現代の沖縄出身アーティストに受け継がれている
ことは注目すべき点ではないでしょうか。
言葉に込める思いが歌詞を神秘的にさせるのであれば、言霊を紐解くだけでも作詞活動に大きなヒントを与えてくれるかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたでしょうか!

ヨナ抜き音階と比べてあまり知られていないニロ抜き音階の個性的な特徴、沖縄出身のアーティストが多く活躍する理由と言える独自のリズム感、歌詞に神秘性や強みを持たせる言霊的観点など、琉球音楽の魅力にたくさん触れていただけたのではないでしょうか!?

次回は、日本にある別の民族音楽について触れます。
ただし、別の民族音楽といっても琉球音楽との繋がりもあるので今回の記事を読まれた方は2倍楽しめる内容となっております!
お楽しみに!

それでは、また次回の記事で!


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