芸術とスポーツの融合!「アーティスティックスポーツ」とは?
前回の文章を読んでからこちらに来ていただくと、より理解が増すと思います♪
こんにちは。元新体操選手ろるです🎀
前回は、上の記事にて「スポーツと芸術」の関係について考えました。スポーツは芸術ではない!ですが、芸術とより近い位置にあるスポーツがあり、それらのスポーツを、元フィギュアスケーターの町田樹さんは「アーティスティックスポーツ」と名付けました。
今回は、その「アーティスティックスポーツ」とはなんぞや?ということについて、町田さんの書かれた『アーティスティックスポーツ研究序説』(白水社・2022)(以下”本書”とする)を参考に考えたいと思います。
スポーツの分類
まず、スポーツは一般的に以下のように分類されます。
スポーツには”競争”が伴いますが、競争の仕方によって3つに分類できるということです。
更に、本書では、新たに以下のような分類が為されました。
採点競技の中身をさらに分類しました。
器械体操(formalistic sports)と新体操(artistic sports)の違い
では、なぜ採点競技をさらに分類する必要があったのでしょう。これには、「採点規則」で使われている文言に大きな違いがあることが関係しています。
まず、器械体操の採点規則には、
新体操の採点規則にも、上記と同じようなことが書かれています。
体操競技には「美的」(英語だと「aesthetic」)、新体操には「芸術的」(英語だと「artistic」)と記載されています。つまり、体操は「美的」な演技、新体操は「芸術的」な演技が求められているということです。
「美的」と「芸術的」の違いは前回触れているのでここでは省略しますが、つまり、体操が「見た目の美しさ」を求めるのに対し、新体操は「解釈を求める、意味のある表現による芸術的な美しさ」が求められているということです。
さらに、演技の内容にも注目してみましょう。器械体操は、技の正確性で点数が決まります。それは、規則にはっきり定められた正しい型があり、選手はその型通りに、足先指先まで神経を尖らせて演技を行います。技の途中や技の合間に、審判員にアピールしたとしても、そのアピールは直接点数にはなりません。(ただし、女子体操の床は、アーティステックスポーツに値する要素があります)
一方新体操は、技の正確性に加え、「音楽との一致」が重要視され、音楽と合う、技ではない動きが欠かせません。また、技と技の間にも表情やしぐさで表現を行えば、それが点数に生きてきます。逆に、技ばかりやっていて見ている側に何も伝わらない演技は、技の点数で評価されても、「芸術点」においては評価されません。
このように、「芸術性」という観点で、器械体操と新体操には大きな違いがあります。さらに、この芸術性は、新体操にとってはかなり大きな主題の一つです。ここを無視して次に進むことはできないというのです。
アーティスティックスポーツとは?
このように、体操と新体操には大きな違いがあることを踏まえ、新体操のように芸術的な要素を含むスポーツを、町田さんは「アーティスティックスポーツ」としました。
実は、新体操のように「芸術性」「表現」を規則に盛り込み、採点の基準にしているスポーツはほかにもたくさんあるといいます。『21世紀スポーツ大辞典』(大修館書店、2015)には、たくさんのスポーツが載っていますが、その中総勢237種目のうち、アーティスティックスポーツに相当するスポーツを町田さんは以下のように示しました。
これらのスポーツは、全て規則が芸術性を求めており、スポーツにも芸術にも成り得るとしています。スポーツは芸術なのか?ということについて前回触れていますが、これらのスポーツは、「スポーツ」と「芸術」をはっきり分けることのできない形で存在していることから、芸術の要素も含むスポーツであるというのです。
定義付けをしよう
そろそろアーティスティックスポーツの定義をがっちゃんと決めたいのですが、その前に「スポーツ」と「アート」の定義について述べておく必要がありそうです。
「スポーツ」にも「アート」にも、昨今様々な定義付けが為されており、その考え方は時代を経て変化しているのも事実です。ここでは、その変遷を述べることはやめておいて、本書では、それぞれ以下のように定義されているということを書いておきます。
◎スポーツ
スポーツの定義には多々あり、最近ではeスポーツと呼ばれるものもありますが、万人がイメージする「スポーツ」に当てはまるような定義にしたそうです。
◎アート
特に、「作者ー作品ー観賞者」の3者の関係が重要であるといいます。
こうしたそれぞれの定義を踏まえ、「アーティスティックスポーツ」を以下のように定義付けが為されています。
スポーツでもあり、アートでもある。これまで誰もが考えていなかったこの世界のことに、目を向けてくれたのが町田さんです。スポーツの競争性や遊戯性を含みつつ、芸術の成立に必要な条件も持っている。ほかのスポーツとも、ほかの芸術とも違う世界がここにあります。
もう少し、アーティスティックスポーツの原理について考えたいのですが、また次回。
次は、「アーティスティックスポーツ」における芸術性(アートの部分に注目して)を考えたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
アーティスティックスポーツにおける芸術性
さて、これらのスポーツは全て規則の中で「芸術性を求めるよ~」と言っているということでした。では、アーティスティックスポーツにおける「芸術性」とは、どのようなことなのでしょうか。
ところで、本書において町田さんは「アート」の概念を以下のように定義しています。
特に、「作者ー作品ー観賞者」の関係は、「アートの必須条件」としていますが、アーティスティックスポーツは、この関係が「あらかじめ競技規則の中にプログラミングされている」と言います。この3者の関係、新体操で言うと、
になると思います。時に、自分で作品を作って演技までするような選手もいますが、この関係は大方変わらないでしょう。
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