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【麗子だよ!全員集合!】東京国立近代美術館 所蔵作品展 MOMATコレクション(2024.1.23–4.7)

中平卓馬展が始まる前に、まずコレクション展を見ておかなければ!と駆け込みでコレクション展オンリー開催時期に訪問。
「コレクション展しか見ない」若しくは「企画展だけ見ればOKな状態」という心の安寧が欲しいが為の行動である。

先日磨いたばかりだそうだ。


正直に言うと東京国立近代で企画展、コレクション展をハシゴできる体力と気力がもう無いのだ。昔は二本立て映画を見るが如く、企画展後にバリバリ4階に攻めて行ったのだけど。ここ数年は大人しく別日を設けて鑑賞している。

また、今回は対話型美術館ガイドに参加した。近代美術館で参加するのは初だった。
常々、このnoteというシステムで皆さんの鑑賞レポを読むのが好きで、(豆知識や考証も面白いが、書き手さんがどう思ったのか書いてある文章を何より大好物で鼻息荒く読み漁っている)それを生でやりとりできる様な興奮を初めて味わってしまった。ファリシエーターのガイドの方も素晴らしく。自分が今、地元で参加している小中学生向けの鑑賞ボランティア(趣旨は「ガイドしない」という事)の活動にも少し役立つかも知れない。

そんなこんなでたくさんある中から幾つかの作品ピックアップと、鑑賞ガイド参加のレポートを。

ハイライトの部屋


4階に「この美術館のハイライト」という展示室がある。ここからコレクション展の鑑賞を始めるのだが目次の様な役割をしている。
今回この部屋は川合玉堂から始まりハンス・アルプで終わった。改めて文章にすると「なんかおっかしいな?」と笑ってしまったが、事実なのでぜひ足を運んで頂きたい。

ここからどうしてハンスアルプ。

4階 

近代始まりの頃

楽しみにしていた小特集「麗子生誕110年」。
「麗子だよ!全員集合!」ですね、岸田劉生の名画麗子像のシリーズから国立近代美術館所蔵品の全部出しということですから(東博の麗子はきていませんが)麗子さんにまつわる資料も出ていてとても興味深い。


色味が奈良さんチック



また麗子さん自身が描いた幼児期の絵に対する劉生父さんのコメントが…すごくポジティブでもう感動した。ダメ出しを一切してない。我が子の絵、という視点より絵としてのポイントをしっかり褒めている。子供の自己肯定感ってこうやって育むんやで…と岸田劉生に言われている様なそんな父子の絆の様なものを感じた。

作者名は岸田麗子とある。


しかし8歳の麗子が描いた絵は資料扱いなのか、絵画扱いなのか。絵画だとしたら国立近代、最年少収蔵作家作品になるのかな、なんて思ってニヤニヤした。面白いから事実は調べない。

3階

芹沢 銈介の部屋

いつもと様子が違う

いつも日本画の部屋だから、今回も?と思いこんでいたら、民芸の部屋になっていた。というより芹沢 銈介の部屋だった。この模様替え感好きやで。

写真室は高梨豊

今回、写真の部屋のフォーカスは高梨豊さん!!
うぉー!高梨さんきた!!と、気がついた時にやや早足で入室してしまった。


静かな写真。日記みたいな。その時、を封じ込めたと言うと良いか。高梨豊氏の「なんでもないその場所その時」が伝わる写真が好きだ。

タイトルが住所なのもまたグッとくる。
人んちの部屋は飽きない
スコッティの旧デザイン
あ、この炊飯器と同じデザインのポットあったわ。
この牛乳瓶、うちも宅配されていた。きっと明治牛乳。


そしてなによりカラー写真なのだ。ずーっと見ていられる。

しかし最近、カラー写真が気になる。
「写真芸術といえばモノクロ表現」な先入観はいつ自分が持ってしまったのか
・古い写真を見ていたからなのか。
・カラーフィルムが一般化されても写真家、愛好家がモノクロフィルムの使用を続けたからなのか。
・現像まで一個人がやることを考えるとモノクロフィルムの扱いが楽だったのか。それが普及の一因なのか。
・光と影だけで写す芸術に色は要らないと判断されたのか?
・カラー写真の世界的に代表的な一枚ってなんだろうか?

【写真用印画紙に現像されたものを写真と呼ぶならば】
モノクロフィルム写真の存在の長さを考えるとカラーフィルム写真の寿命は短かった様に思う。カラー写真は画像に取って代わられてしまった感がある。だからこそ今、中平卓馬のカラーフィルムの写真が再注目されるのでは無いか。
疑問ばかり浮かぶ。1人で禅問答しているようだが、今回は帰宅後、写真好き、一時期現像まで自分でやってた夫に言葉をぶつけながらあーでも無いこーでも無いと話していた。
まぁそういう答えのない会話が楽しかったりするのだ。

ハイ・レッド・センターのこと

これ近代持ってたのかー、と。ちょこちょこ小出しにしているけれど、そろそろ小特集でガンとやってくれないかな。

名著「東京ミキサー計画」もおすすめですよ。
このビックリマークね!


2024年は赤瀬川さん没後10年。
でも赤瀬川さんと中西夏之さんと高松次郎さんが同時期にコレクション展にいる事がただ嬉しい。そして赤瀬川さんが「家元!」と呼ぶ高梨豊さんの写真が同じフロアにあるのも妙に嬉しくてニヤニヤできてよかった。
中平卓馬展も始まるし、少しでもゆかりある人物の作品が「個展開催おめでとう」と言っている様な気もする。

東京国立近代美術館 対話鑑賞 レポート

人数構成

メインガイドの方1名補佐2名
聴講者 8名ぐらい(うち7名初参加、1名常連っぽい)

見た作品

 牧野虎雄 「明るい部屋」
ジェルメール・リシエ 「蟻」
野見山暁治 「風景(ライ・レ・ローズ)」

鑑賞の流れ

・まず、絵の前に立ちしばし作品を見る、観る、視る。
・「なんでも良いので思ったこと気づいたことを言って下さい」と言われる。
・挙手制でポツリポツリと絵について思ったことを発言。1作品目よりも3作品目のほうが参加者の発言も増えていく。場が温まった感。

・1作品に対して8人いれば全員見ているところ、感じ方、受け止め方が違っていて「へぇ!」と思うことが多々。私にとっては参加者個々の視点の違いを知ることが最高に楽しかった。

・たまに、質問から外れて作品に対していわゆる蘊蓄を語り始めてしまう人もいる。まぁ「そういう場面に出くわすのだろうな」ということも想定していた。が、ガイドの方がうまーく論点に戻してくれて、戻し方も感じがよかった。すごいな。

作品としては牧野虎雄氏の作品が見れたのが収穫

と、言うのもディオール展でディオールのドレスとのジャムセッションを見事にこなしていたのだ。

あの時の衝撃といったら…しかしなぜ都現美が所蔵をしているのか、が謎だったのだ。本来なら括り的には近代では?と。

DIOR展の時の作品。
ドレスとともに


こちらが今回の近代に展示されていた作品



その事についてガイドの方にお話ししたところ面白いことを教えてくれた。
「牧野虎雄さんは亡くなる時『作品は全部燃やしてくれ』と言っていたそうで…それではしのびないと牧野氏の没後、所持していた方が東京都現代美術館へ寄贈したと言う話で。なので現美がコレクション持っているんですよねー」と。
なるほど。
東京都現代美術館の所蔵品検索サイトから「作品/資料番号」を調べてみると1975から始まる。となると寄贈されたときは東京都美術館時代だったのではないか、と推測する。それがそのまま現美へ移管されたのかもしれない。
対話型鑑賞といえど、こういうちょっとした話を聞けて大収穫だった。

いつの間にか足がヘロヘロになる国立近代。

今回も盛りだくさんな東京国立近代美術館のコレクション展示。
常時200点展示しているわけで。所蔵品は17000点。
私はここまでで所蔵品何分の1を見ることができたのだろうか。
そしてそのうち何点のお気に入りを発見できたのだろう。

河原温さんも出てるよ


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