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【モノラルな変遷】吉田克郎展 ―ものに、風景に、世界に触れる 埼玉県立近代美術館

もの派、と言われた作家の一人、吉田克郎。
私はドンピシャの時代よりその少しあと、シルクスクリーンの作品群が印象深く、好きだった。

シャープな画面が好きなのだ


多摩美大側のもの派の作家。
関わりの深い関根伸夫、小清水漸、師匠の斎藤義重。
このあたりの人の作品が頭の中にあると見てて面白いと思う。

神奈川近代美術館葉山から巡回。
あちらでは師匠の斉藤義重作品も同時展示だったとのこと。




概要

1960年代末に日本の戦後美術に変革をもたらした「もの派」の中核作家であり、その後、実験的な手法を通して絵画を探求した吉田克朗(1943-1999年)。この展覧会は、その全貌に迫る待望の初回顧展です。

埼玉県立近代美術館 吉田克郎展

版画に惹かれる


第2章 絵画への模索 ―うつすことから 1974-1981


特にまた路上の風景の版画がすごく良くて。
目黒区美で見た、イギリスのトラファルガー広場の作品と同じものと再会。

鳩の形の抽出、よいな。
今、Googleストリートビューでこの場所を見ても鳩がバッチリ映っている。
この作品の鳩の何代あとの鳩なんだろうか。


単純に素材としての人物写真も惹かれる。題材がよい。

お父さん…かな


止まれ、の標識


今回初めてみた標識の作品もよかった。路上にあるもの、は良いモチーフになる。いつも見ているものだが、あらためてその存在を抽出するとなんだか不思議だ。

第3章 海へ/かげろう ―イメージの形成をめぐって 1982-1986


何かわからないのだけど何かが見え隠れする

このグレーの画面のかっこよさ。シルクスクリーンの作品にも言えることだが画面のセンスの良さはグラフィックデザインに近いところもある。

では、その後はどうなっていったか。

第4章 触 ―世界に触れる 1986-1998


すごいな、手で絵画を触り始めた。絵画というより平面の中に彫刻をしていくような、そんな作品が並び始め圧倒される。

墨で描いたような画面



木炭で描くその作品は水墨画のようだと思ったら、やはり屏風仕立てにされているものもあり、馴染んでいたと思う。

山水画的


最後の最後は…敢えて載せまい。
ここまで、画面の中を触って「もの」を浮かび上がらせたのだ。

最後も「もの」だった。
表現の術を「もの」にしたのかも知れない。

レクチャー・プログラム 1 「吉田克朗を語る」


運良く遭遇

当日の入場が可能だったので、参加してきた。

美術評論家の千葉成夫氏が語る吉田克郎。
「ええとですね、吉田克郎についてなんですが〜」
と話し始めてフムフムと真面目にかしこまって聞き始めたら、急に

カっちゃんは〜、あっすみません、あのだいぶ親しい間柄だったもんであの、これ以降カっちゃんと呼ばせてもらいます」

と言い出したものだから、かなり場が和んだというか…肩の力を抜いて楽しく拝聴することができた。

お話の項目は以下。


メモしやすくありがたいプログラムペーパー。吉田旅行社の話は思わず吹き出してしまった。




この中で吉田克郎評以外に「日本の近代美術の始まりの『おかしさ』」についてなど。そこから前衛との親和性について語っておられ、なるほど!と思えて大変興味深かった。

曰く、
・長い西洋美術の歴史の中で、過去の芸術を否定し大きな変革が起きた時期と日本が西洋美術を学ぼうとした時期が合致する。

・日本が学んで取り入れようとした文化はそもそも古いものを否定し新しい美術!として西洋で前衛と呼ばれていたものを「これが西洋のスタンダード」と認識して取り入れてしまったという。

・印象派として日本で絵画のスタンダード的に親しまれている絵画も元を追えば超前衛グーループ「印象派」な訳で。


うむ、「原曲じゃなくてアレンジ版から聞いちゃったみたいな」感じかな、と解釈したのだけどもこの話が妙に腑に落ちた。

講演会、レクチャーと聞くとちょっと難しいのかな、と思ったが蓋を開けてみると親しみやすくわかりやすい話が多かった。
良いタイミングで訪問できて鑑賞体験にもプラスになった。

またこういうイベントと遭遇したいものだ。


埼玉近美名物、椅子のコレクション、
今回は常設展示室にドーンと💋
写真にしたら、思わずマン・レイみたいになった。シュールレアリズムだから当たり前か。

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