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【めくるめく表現】 Nerhol 水平線を捲る 千葉市美術館

初めて耳にしたアーティスト名。だが、千葉市美術館の企画だ、期待できる!と片道1時間半、総武線の快速でぶっ飛ばして訪問。

ホライズン。英語の教科書「NEW HORIZONS」だったな


じつはサカナクションのアートワークも担当していたりと知らぬ間に見ていたり。

まず、Nerholのお2人について。


Nerhol
田中義久と飯田竜太により2007年に結成されたアーティストデュオ。紙と平面的構成によるグラフィックデザインを行う田中と、紙や文字を素材とする彫刻家の飯田からなる。2012年に発表された人物を数分間撮影し、出力された200枚のカットを重ね、彫刻を施したポートレートシリーズで大きな注目を集める。写真と彫刻を往還する独自の表現を通じ、現代的な視点から人間社会と自然環境、時間と空間に深く関わる多層的な探究を続けている。

千葉市美術館

展示概要

Nerhol(ネルホル)は、田中義久(1980–)と飯田竜太(1981–)により2007年に結成されたアーティストデュオです。二人の対話を契機に、人や植物など「移動」にまつわる様々な事象のリサーチを通じ、他者に開かれてきた長年におよぶ表現活動の歩みを、美術館で初となる大規模な個展によって紹介します。

ー中略ー

「Nerhol 水平線を捲(めく)る」展では、これまでの活動における重要作や未発表作に加え、千葉市の歴史や土地と関わりの深い蓮をテーマとした最新作、さらには二人が選ぶ美術館のコレクションを展示し、この場所だけでしか体験できない空間を創出します。人間の知覚や現代社会における一義的な認識では捉えることができない、Nerholによる時間と空間の多層的な探究は、千葉の地で豊かな展開を見せることでしょう。

千葉市美術館


作品を見終えて

手法、技法、表現方法

地層、階層、時層。
という言葉が浮かぶ。
画面をずっとみていられる。
テクスチャーに惹かれる。
見応えあった…面白かったー!

ゴッホっぽさ。「ドービニーの庭」みたいにウネウネしているから。
接近。
写真にすると全部潰れる。当たり前だけど。

写真撮影も可能だが、撮りながら「あ、まったく意味ないなー」と思いながら現物そのものの表情の豊かさに惹かれた。

ここで見る、ってこういうことか。

例えばゲルハルト・リヒターのアブストラクト・ペインティングのような、あれは絵の具の層だが、今回は紙の層だったり。
絵を描く支持体になりえる紙そのものが展示されているわけで。
印刷は施されているから図版は描かれているけども。

紙の地層
ザクザク



と、思うとやはり絵っぽい様相をした彫刻という表現があっているのだろうな。描いてはあるけど描いていないから。
…だんだん訳わからなくなってきた。不思議。

紙で重ねた上を彫っていく。グラフィックと彫刻というこの2人組の面白さが発揮された作品たち。展覧会タイトルにある「捲る」を実感する展示だった。こういう手法が思い浮かぶ人は他にいるかもしれないが、それを画面として成立させること、作品として成立させることはやはりこの2人でしか仕上げられないのだろう。

大木の作品

これは薄くスライスした木なのかと思っていた。
あ、紙だな
紙だ。


目の前にカットした本物の木から香る匂いで、紙に写された木が本物のベニヤ板から掘り出した様に感じてしまった。
この作品も先述の作品と同じ紙なのに。でも紙も元を辿れば木だな。


目の前あるスライスの木。この木から木の匂いがする。



千葉市美所蔵品とのジャムセッション



所蔵品(時間を重ね、蓄積されたもの)と重ねた紙を彫ってくるNerholの作品とリンクしている所蔵品たち。

これの隣にこれ持ってくるの面白いなーと、過去から現在への時間軸が貫かれる。

高松次郎と。
この部屋もよかったな。
この対面には李禹煥の「突きより(撮影禁止)」がある。
なんかわかる!
河原温のデイペインティングと木の化石。時間の経過。
肖像画、とは。



何となく、画面が似てるもの。
考え方が似てるもの。
高松次郎、河原温、李禹煥、もの派との共鳴。
河口龍夫や中西夏之との親和性。


こちらとしては千葉市美の所蔵品も見れて大満足である。
今期の常設展示室にあった辰野登恵子の作品もそうだけど、千葉市美は本当に良い作品を持ってるなぁー!と。

見て行くうちに思い出したこと


子供の頃、社会科の授業で使った等高線を立体化した地図教材の様だ。
あれ好きだった。フェルトで再現した事もあった。

次男が小3の頃、社会科で使い持ち帰ってきた教材の中に等高線を自分で貼り合わせ作った教材があってめちゃくちゃ羨ましかった。

これ。
この等高線、私も作りたかった。好き。
その名も「ヤッホー!東京くん」


あの頃は「触ってはダメ」と言われていたが、息子が自作の等高線を持ち帰ってくれたおかげで家で思う存分楽しむことができ、長年の素朴な小さな夢が叶った気分。

千葉市美術館のスタンス


この美術館の年間スケジュールのジャンルは多岐にわたっている。
日本画や近代日本美術に加え、今回ような活動から10年〜の若いアーティストの「初の個展」を開催している事が多い。
今ではかなり認知度の高い現代アートチーム 目 [mé]の初個展も千葉市美での開催で、当時大きな話題になった。

千葉、というテーマを持たせることもあり、この美術館で見るという意義を感じ電車で1時間半かかっても行きたくなる。行く。

そして行くと必ず、常設展示とつくりかけラボというお楽しみも待っていて子どもも同伴し易い。

つくりかけラボの報告書に
息子2人の写真が採用されていた。


そして館内の方々が親切だなーと思う。ここに来ると看視業務の方と一度はコミュニーケーションを取っている気がする。

何気ない話から千葉市美の思いやリアルな話を聞けたりおもしろい。

このフランクさは続いて欲しいなぁと思う。

恐らく、巡回のない展覧会となると思うので千葉駅まで行ける方はぜひ、おすすめしたい美術館、展覧会だ。

ここの休憩ポイント、好き。
作り付けのソファがなんか好き。

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