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身体のシステムはいかに転ばないようにするかで働いている

タイトルの言葉は、私のロルフムーブメントの恩師の言葉。

人は重力下の中で、常に“いかに倒れないようにするか”というシステムの下動いている、ということです。

初めて聞いた時から16年。改めて最近それについて感じることがあったのでそれをシェアしたいなと思います。なので、今日書くことは、私のアイディアというより、多くの恩師や、ロルフィング®︎の創始者アイダ・ロルフさんの知恵を紹介する感じにもなるかと。あしからず。

小さい子の歩き方を見てみよう

例えば、歩く動作も、大人になると上半身が後ろにいって足に連れられていくような感じで歩いている人も多いけれど、

小さな子供でそうやって歩いている子はあまりいません。ちょっとつんのめるくらい上半身がほんの少しだけ足より先に前に出る。これは、子供たちが「どこかに行かなきゃいけないから歩く」というよりも「そこに手を伸ばしたいもの、見たいもの、触れたいものがあるから、気持ちに引っ張られて歩いている」からです。

触れたい、という思いで手が伸びる、それに伴って上半身が前に向かう、そうすると、その上半身を支えるかのように足が前に出てきてくれる。これが本来の歩行のシステム。(と教わり、今もそう思っている)

試しに、立ったまま、体を板のように真っ直ぐのまま前に傾けてみてください(マイケル・ジャクソンのゼログラビティーみたいに)。思わず足が前に出ませんか?出なかったら、地面に倒れ込んでいるかと思います。

そう、歩行は、前に向かおうとする気持ちに引っ張られて足が前に出ていく動きなんです。

重力は常に向き合っている不変的要素

そもそも、体を板のように前に傾けていった時になぜ足が前に出るかと言えば、そこに重力があるから。重力がなければ、宇宙のように、体を前傾させたところで転ばないので、何もする必要がありません。

重力は、ロルフィングの創始者アイダ・ロルフさんが着目したユニークなポイントの1つ。重力だけは地球上にいる限り、常に私たちの身体に不変的に働きかける要素。そんな理由で重力に着目しているロルフィングってすごいなぁ、と。

余談ですが、アイダ・ロルフさんは、姿勢が重力下で楽に保つ場所にいることができれば、立っていることに使われるエネルギーが減り、その余ったエネルギーで活力が高まるのではないかとも考えていたのです。(詳しくは、『ヒントは自分のカラダの中にある』を読んでみてね)

話がそれましたが、この、「倒れないように身体は重力下でバランスをとっている」というイメージは、私が長年アシスタントをしてきたアナトミートレインの著者トム・マイヤースさんも仙腸関節と背骨の話をするときによく話題にします。

重力の中でいかにバランスをとっているかが肝、ということですね。

重力下でバランスをとるという課題から解放される大切さ

このように常に私たちの身体に影響を与えている重力。ここまで読んで、重力の中で、身体が転ばないようにバランスをとっている、ということをなんとなくわかってもらえたでしょうか。

私が最近あらためてそう感じているのは、ダンス基礎基礎WSシリーズという、その名の通りダンスの基礎の基礎を伝えるレッスンを教えるようになってから。

例えば、片足に体重を乗せるような動きをする時、軸足が安定しないことには、動く足がうまく使えません。なので、そういうことに繋がるエクササイズや練習をレッスンの中でするのですが、

何にも掴まっていない状態だと、どうしてもベストな位置にいけない時があるんです。どうしても軸足に体重が乗りすぎてしまったり、膝に力が入ってしまったり、スネに力が入ってしまったり。

なぜかというと、何にも掴まっていないと、どうしても重力下でバランスをとらなくてはいけない、という課題が生まれてしまい、身体のシステムとしてそっちに引っ張られてしまうんですね。

頭ではわかっていても、こればかりはどうにもならない。だって、身体は転びたくないんだもん

そんな時、バレエバーや、壁、椅子の背、何でもいいんだけれど、比較的体重を預けたりかけたりできるものに掴まれると、少しそこに体重を委ねたり、少しぶら下がる感じにしてみることで、「ほんとはここに乗りたいんだね!」という場所が感じやすくなるのです。

何かに掴まることで、重力下でバランスをとる、という課題から解放され、身体が転ぶ心配なく調整することができるんですね。

これって、とってもすごいこと!!

ダンスでも、私が長年やってきたコンテンポラリーや、ジャズなどのクラスではバーレッスンはなくセンターから始まることが多いんです。けど、バーがある環境であれば、毎回ではなくとも使わなきゃ勿体無いのでは、と思うようになりました。

重力下でバランスをとりながら、最適な使い方を探し、使えるようにしていくって、すんごい大変!!もし、「いろいろ気をつけているのに、なかなか使い方が変わらない…」と悩んでいる人は、常に重力下で必死にバランスをとっていないかチェックしてみてください。

重力下でのバランス問題から解放されるのは、何にでも適応するのでは?

そう思うと、ダンスに限らず、ヨガやピラティス、その他のエクササイズやトレーニング、時には他のスポーツでも、バーのようなものに掴まり、

「ははーん、ここに乗れたらいいわけね!」

という場所を体感できるに越したことがないのでは!!と思ったりします。

疑似体験って大切なんです。例え、体重はバーに委ねていても、脚のここを感じたいんだ、というところを感じることができると、バーに掴まっていない時にも「ここ」を探しやすくなるし、少なくとも「あ、ここじゃない」というのが明確にわかるようになります。

ずっと真っ暗なトンネルの中でああでもない、こうでもない、と思っていたのが、遠くに光が見えると、「あっちの方に行けば良さそう!」という希望が見えてくる感じ。身体の使い方に悩みまくった私の体感的にはそんなイメージです。

思えば、私の母校であるコロラド大学は、アメフトがとても強かったのですが、アメフト選手がバレエのレッスンを受講していたのを思い出します。

当時そこの大学では、卒業単位の割り振りの中にエレクティブというものがあり、いわゆる一般教養や専門分野の単位とは関係ないクラスをエレクティブの単位として取ることが可能でした。

私のようなダンス学部生は学部生用のバレエのクラスがあるんですが、他学部生が受けられるバレエのクラスもダンス学部の大学院生によって教えられていて、そこにアメフト選手が何人か受けに来ていたのを見かけたことがあったのです。

すごく真剣に受けていた姿を思い出すけれど、ただただ興味があったのか、受けたことでアメフトのパフォーマンスが変わったのかはわかりません。聞いてみたかった!!笑

と、話はそれましたが、バレエのレッスンを受ける、ということでなくとも、何かにしっかり掴まり、バランスをとることから解放し、機能を改善させていく。

それはどのジャンル…それどころか、どんな人にも使えることだなぁ、としみじみ感じます。

バランスを取りながらのエクササイズって良いのでは?

バランスボールの上でトレーニングをしたり、不安定な土台の上でトレーニングをするとコア(インナーマッスル)が強くなるって聞いたけど?…という方もいるかもしれません。

たしかに、バランスを取りながらのトレーニングは、「うまくいけば」コアの強化につながる良いトレーニングになります。

ですが、例えば最初のうちはバランスが取りづらく、すんごく力みやすくなるでしょうし、アウターを使ってしまいがちになります。慣れてきて、「うまく外側の力を抜く」ことが取得できれば良いトレーニングになりますが、もし身体が「力ずくでバランスをとる」ことを覚えてしまったいた場合には、コアのトレーニングとしてはかなり弱くなります。
(これはそこへと導ける指導者がいるか、もしくは本人にセンスがない限り難しい)

ヨガの木のポーズや、片足立ちのバランスを思い描いてみてください。あまりぐらぐらするのもな、と、グッと踏ん張っちゃったりしませんか?グッと踏ん張って、重力下でバランスを崩さないように頑張っている時、身体は緊張し、外側の筋肉がヤッホーしている状態です。

おそらく理想としては、目で見えないくらい、ものすごく小さく揺らいでいたいんですよね。動きの中に本当の静止ってありません。

時に、身体に刺激を与えるために、バランスが不安定なところでのトレーニングも良いかと思いますが、上記したように力んでしまう場合は、そのトレーニングと並行してでも、どこかに掴まって、本来居たい場所はどこなのか感じるトレーニングもおすすめします。

最後に

バレエのバーレッスンにそんな意味合いがあったとは、現役時代にはつゆしらず。勿体無いことしたなー!と思っています。

ダンスなのか、スポーツなのか、日常の歩行なのかはわかりませんが、

もし、どこにも掴まることなく、身体の使い方を変えようと試みている方がいたら、一度、重力下でのバランスをとる課題から解放して練習してみてください。何かが見えてくるかもしれません。試してみるのはただです♡

ちなみに、何かに掴まる時は、握りしめすぎないように。手や指に力が入りすぎると、全身にも力が入っちゃうんですよ。

アイダ・ロルフさんは、「重力はセラピストである」と、重力と共に生きる道を説いていますが、そう、姿勢が悪くなったり、皮膚が垂れてくるのをただただ重力のせいにせず(もちろん影響はあるんだけれど)、重力と共に生き、プラスに利用していく。そんな方法がたくさんの方に伝わるといいなぁと思います。


*そんなロルフィングを体験してみたい方はこちらから日本国内のロルファー検索が可能です。
(ちなみに私は名古屋でワーク中)
https://rolfing.or.jp/category/rolfer/

*こんな面白いロルフィングの動きへのアプローチ。運動指導者対象にセミナーを開催中。
https://holisticsystems.mystrikingly.com/

*紹介したダンス基礎基礎WSシリーズは、こちらのマガジンで体験者によるレポート連載中♪
ホリ研マガジン(毎週木曜更新中)

*ダンス基礎基礎WSシリーズ、パート1を来月か再来月あたりからスタート予定
https://dancebasics.mystrikingly.com/

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