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ロシア語の電子書籍・オーディオブックならLitRes

日本人が英語以外の外国語の原書やオーディオブックを購入することを希望する場合、日本のAmazonでもそれなりに本は見つかること、本格的に多数の本を探したいなら各国のAmazonのサイトを利用するのがお勧めなのは、前回の記事で書いた通りです。

ロシア語に関しても前者、つまりロシア語原書やオーディオブックを見つけたいなら日本のAmazonでも見つかります。たとえばアンナ・カレーニナのロシア語音声も日本のオーディブルで手に入ります。しかも40時間分のロシア語音声で会員価格1,190円(定価1,700円。会員価格30%引きで1,700円×0.7=1,190円)とは値段の付け方が間違っているのではないか?と思うほどです。

さらに今回、試しに調べてみて驚いたのですが、トルストイで検索すると英語、ロシア語だけでなくて中国語やヘブライ語によるトルストイに関するオーディオブックまである。

ドイツ語やフランス語、スペイン語などは各国のAmazonがあります。しかしロシアのAmazonのサイトはありません。

ロシア語の電子書籍やオーディオブックはどこかから購入してきているものと思います。後述しますがLitResで同じ音源の朗読が入手できますし、Audibleの価格の半分以下で購入できます。それならAudibleのロシア語版が安いのも納得な気がします。

しかし購入者としては「中間業者を通さずに直接購入」する方が安くなるわけで、この点についても詳しく調べてみました。

まずは本投稿を最後までお読みくださいませ。

1)ロシアの電子書籍・オーディオブック:LitRes

Amazonはロシアではサービスをしていないのですが、ロシア独自の電子書籍・オーディオブックサービスがあって、LitRes (ЛитРес)と言います。

LitRes (ЛитРес)のサイトはこちら。

AmazonのKindleとAudibleの両方のサービスを提供しているような感じですね。

ちなみに私も数年前から黒田龍之助先生の書籍などを通してロシア語にも関心をもつようになってから、少しずつ自習をしています。この辺はツイッターのプロフにも書いてある通りです。
https://twitter.com/RolanAC

アメリカのドラマとか見てます。DC/MarvelではDC系。Star Warsもシークエル以外は見る。クラシック音楽もたまに聞く。note でアメコミネタや特異なガジェットネタまとめてます。 https://note.com/rolanac 黒田龍之助先生の著書からロシア語も勉強を始めました。

https://twitter.com/RolanAC

英語の学習経験から、読みやすい本に沢山触れること、オリジナルの音声に触れることはとても大切と思っていますが、ロシア語の教科書や書籍の値段、高いんですよね。

そんな時にLitRes (ЛитРес)を見つけたときは狂喜乱舞しました。値段も紙の本よりははるかに安いしオーディオブックまで手に入る。

日本のAmazonではドストエフスキーのロシア語版が手に入るかもしれませんが、いくらなんでも初学者に「アンナ・カレーニナ」やら「罪と罰」は厳しい。もう少し手ごろな本がないかと思っていたら、こんなところにあったのか!という感じです。

2)LitRes (ЛитРес)とは?

LitRes (ЛитРес)の会社概要を見ると、こんなことが書いてあります。

- 2005年設立
- ロシア語および外国語の電子書籍が100万冊以上
- 無料の本が48,000冊
- オーディオブックが65,000冊
- 毎月5,000冊の新刊発行

うん。いくらAmazonが優秀でも、さすがに毎月5,000冊のロシア語の本は出版できないと思います。(調べてないけど。)

ロシア語で書籍やオーディオブックを探すならAmazonよりもこちらのLitRes (ЛитРес)一択かなと思います。

ЛитРес=Литературная Республика(文学共和国)?

ところで、LitRes(ЛитРес)って一体、何の略なんでしょうね?
サイトを探してもLitRes(ЛитРес)がなんの略称なのかについての言及はされていないのです。ロゴの仕様規定まで公開されているのですけどね。

とは言え、文学共和国(Литературная Республика)のような気がします。

これはあくまで推測です。しかし映画会社の名前がモスフィルムとかレンフィルムといった命名でした。この連想からも非常にわかりやすいロシア的な略称ですし、それほど大きく間違ってはいないのではないかと思います。もし情報があれば、アップデートしたいと思います。

日本で入手したロシア語の副読本の音声を探す場合にも有効

本記事を投稿した後に、日本で出版されているロシア語読本・副読本の音声がないものについても、LitResを使って音源が探せることが分かったので、それらをまとめてみたのが以下の記事です。

大学書林さんのような老舗で、副読本を出版した時には音声テープなどを点けるのが難しかった、という作品はもちろんですが、最近に出版された者でもすべての教材に音源がないものもあります。

そういう場合にもLitResは有効に使えることが多いです。とはいえ、LitResも万能ではなく、作品によってはどんなに探しても見つからないこともありました。
しかし、LitResで見つからないものも無料で公開されていることに気が付きました。

LitResでも見つからないものはYouTubeにあるかも

本記事を投稿してから約10か月後、東京外国語大学のロシア語科在籍中のさのまるさんが「罪と罰」の朗読音源を聞きながらテキストにアクセント記号を振っていたらイントネーションが上手くなったとツイートしていました。

貼付されている画像はYouTubeっぽくないのですが、ものは試しでYouTubeで検索してみたところ、YouTubeで探してもいくらでもロシア語の朗読が公開されていました。
これは衝撃で、LitResではどんなに探しても見つからなかった朗読音源が検索するだけでいくらでもでてきました。
その時の気分のまま、記事をまとめたのがこちら。

驚くのは、YouTubeで「Аудиокнига」で検索してでてくるものは、プロの朗読のようなのです。これ、無料で公開しても良いの?

上述の通り、YouTubeで無料の朗読音源がいくらでも公開されていたのですが、それでもどうしても見つからない作品もあります。

しかし、日本でも副読本が出版されるような詩や散文はロシアでは暗唱が必須の教材になっているようです。このためロシアの文学の授業の宿題として提出されたような暗唱動画が多数、YouTubeで見つけられます。

大学書林語学文庫のツルゲーネフ『散文詩』だけはLitResでもうまく見つけられなかったのですが、下記の記事の通り、語学文庫に取りあげられていた14作品はすべてYouTubeで見つけることができました。

この記事で取り上げた動画をご覧いただくと分かりますが、ツルゲーネフ『散文詩』はプロの朗読というよりは学校の宿題対応としての朗読が多いようです。
その点ではプロの朗読には劣りますが、我々のようにロシア語を母語としない者からすれば、無料でこれだけの音源が入手できるのは奇跡のようなものです。

LitResへの会員登録は後にしたい、という方はYouTubeで探すという方法もあります。上述の二つの記事も参考にしてください。

3)月額会費メンバーシップ(サブスクリプション)

日本のAudibleのような月額会費制度(АБОНЕМЕНТ:今ならサブスクリプションでしょうか)というのもあって、1か月299ルーブル(1ルーブル1.41円/2020年12月19日の為替レートで422円/月)を払うと、3冊まで電子書籍またはオーディオブックを読めるようです。

Audibleとおなじく解約しても購入した書籍・オーディオブックは引き続き利用可能と書いていますし、メンバーシップの期間を続けると、本を買うときの価格の割引率も上がっていくようです。1か月目が10%、2か月目で20%、3か月目で30%とありますから、それ以後は30%割引が続くようです。

会員権の説明はこちら。月額450円で三冊まで購入可能とはAudibleなどから比べると奇跡のような値段設定ですが、自分はまだ月額を支払って3冊も読んだり聞いたりできるほどの実力はないので、利用はもう少し先でしょうか。

4)オーディオブックの音質など

私はあまり音質などにこだわりはないのでこの点に関してレビューする資格があまりないのですが、数冊ほど購入して聞いてみた限りにおいては、美しい朗読で録音されていると思います。

サンプル視聴の時間が10分から20分近く設定されているものもあります。
この点はAudibleよりはるかに「サンプル視聴」の役割を果たしています。
作品によっては1分程度しかサンプルがないものもあります。後述しますがアンナ・カレーニナも作品によっては1分程度しかサンプルがありませんでした。

こちらは20分もサンプル視聴が可能な作品の一つ。

サンプル試聴の改善

以前は会員登録しないとサンプルも聞けませんでしたが、現在は改善されたようです。現在は会員登録をしていなくてもサンプルが聞けます。
一点だけ、これだけは改善してもらいたいと思うのは、会員登録しないとサンプル視聴もできないこと。会員登録だけ済ませればサンプルも聞けます。ロシア語の豊かな書籍やオーディオブックの海に漕ぎ出そうとする人なら、ここで躊躇したりすることはないのかもしれませんが、サンプル視聴ぐらい会員になる前に聞かせて欲しいというのは無理なお願いではないと思うのですけれども。

数多くのロシア語講師が、ロシア語は朗読した時にその美しさが現れると発言していますが、独特の響きやリズムは意味が分からなくても美しいと感じます。ロシア語学習者の方も同意されるのではないでしょうか。

英語のオーディオブックでも同じことが言えますが、気に入った声質の朗読者の本は、今まで興味がなくても聞いてみたくなるといったことが起こります。ロシア語でも同様に聞いていて美しい朗読の作品は、同じ朗読者の別の作品を探して聞いてみたくなります。

5)スマホ用のアプリ:書籍用と音声用は別提供

スマホ用のアプリもあります。電子書籍用とオーディオブック用が別になっています。これはAmazonもKindleとAudibleのアプリが別提供されているのと同じですね。データ形式を考えれば、別々のアプリになるのは自然です。

iPhone 用アプリはこちら。

Android用はこちらをどうぞ。

iPhone、Andoroidのどちらも本だけのようなアイコンのアプリが、いわゆるKindleのように書籍用のアプリ。こんな感じのアイコンのアプリの方です。

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電子書籍用アプリ

そして、ヘッドフォンが本にかぶさっているようなアイコンの方がオーディオブック用のアプリになります。

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オーディオブック用アプリ

6)LitResのアンナ・カレーニナと価格 

2005年からサービスを開始して、膨大な電子書籍・オーディオブックを提供しているLitResです。冒頭で紹介したAudibleの「アンナ・カレーニナ」と同じものが提供されていないか調べてみました。

Audibleと同じアンナ・カレーニナ の朗読音源

Audibleのナレーターは「Vyacheslav Gerasimov」。
ロシア語では「Вячеслав Герасимов」なので、「Вячеслав Герасимов Анна Каренина」で検索してみましたが、なぜかヒットなしとなりました。

あれ?ほんと?

いや、ロシア語のアンナ・カレーニナの朗読音声なんてロシア以外の国で独自に作成するマーケットはないと思います。
きっとあるはずと思って今度は「Анна Каренина」で検索し、ヘッドフォンのマークがついているもの(オーディオブックのマーク:下図参照)をクリックしてみていきます。

LitResでのアンナ・カレーニナ検索結果

AmazonのAudibleと同じ様な形式で、情報が簡潔にまとまっているわけでもないのですが、ナレーター情報も画面をスクロールしていくと記載されています。
こうしてチェックしてみると、LitResのオーディオブックのアンナ・カレーニナの4番目の作品に、同じナレーターの名前を発見しました。

このリンクをクリックしてスクロールした画面が下図。

アンナ・カレーニナ ナレーター :Вячеслав Герасимов

朗読時間は秒単位まで記載されていますが、Audibleの41時間とほぼ同じ。
サンプル音源(こちらは残念ながら10分も提供されていなかったのはなぜでしょうね?)を聞くと、同じ方の朗読のようです。

結果として見つかりましたが、検索機能が若干残念なことも確認できてしまいました。これは若干、マイナスですね。

それでもリストをクリックすれば見られますし、それよりもアンナ・カレーニナのような大作の朗読音源がいくつもあるというのは、好みのナレーターさんのものを選ぶことも出来るという意味で、非常にメリットが大きいのではないかと思います。

そして次の項目は、大幅なプラスポイントになろうと思います。

LitResでのアンナ・カレーニナの価格

上述の通り、アンナ・カレーニナの朗読だけでも複数(ざっと見ただけで8種類以上)あります。「アンナ・カレーニナの講義」といったタイトルの音源もありますので、そういうのは除外しての数。
もしかしたら、重複したものもあるかもしれませんが、半分にしても4種類もあります。

こちらのリストに表示されていたオーディオブックの上から4つをピックアップしてみると、それぞれお値段が違いますが、高い順に並べて2020年12月19日の為替レート(1ルーブル=1.41円)で計算してみました。
それぞれのオーディオブックへのリンクも設定しています。

275.20ルーブル(384円):34時間38分
271.20ルーブル(382円):44時間50分
183.20ルーブル*(258円):41時間2分
159.20ルーブル(224円):43時間43分

LitRes 『アンナ・カレーニナ』オーディオブックの価格比較

3番目の*が付いているのが、「Вячеслав Герасимов」版のお値段。
一番値段が高いものでも、この時の為替レートでは400円以下なので、驚くほかありません。
カードで購入する場合はこれよりも手数料がのると思いますが、Audibleの会員価格の4分の1です!
この値段で仕入れているなら、Audibleが41時間で1,700円で売っても十分、利益になることでしょう。

ちなみに、その朗読が一番、録音時間が短いのですが、サンプルと聞くと確かに他の作品よりも朗読のペースが早いようです。

他の作品での比較まではやっていません。それでもこれまでざっくりと見た感じでは、LitResでの価格帯はほぼこのような値段でした。
ロシア語の小説や文学作品、そしてその朗読音源などを探している人にとっては、Audibleで1冊分のお値段でその2~4倍は購入できるのであれば、LitResを利用しない理由がないと思います。

7)これまでに買った本で印象的だったもの

コロレンコ『マカールの夢』

まだ何冊かしか買っていないですし、そもそもロシア語の原書を読むほど実力ないのですが、そもそもLitResを見つけ出す契機となったコロレンコの『マカールの夢』は1時間程度のもので、一通りは耳を傾けました。

プーシキン『ベールキン物語』

そして、現代ロシア語を確立したプーシキンの『ベールキン物語』(『ドゥブロフスキー』『大尉の娘』も収録)。

どの言語にも特有のリズムがあり、美しい朗読があるものです。プーシキンの作品の中でも、日常を切り取った本作品はロシア人が愛した「ロシア語」の美しいリズムであり、これを範として現代ロシア語が形作られていったのでしょう。
短編小説でもあり、詳細な注釈付きの語学文庫も出ていますので、『ベールキン物語』くらいは暗唱できるほどに読み込んでおくのが良いのかもしれません。

ツルゲーネフ『猟人日記』

正直、これは身の程を知らないにもほどがあるだろうと思っている購入品でもあります。それでもあまりに値段が安いのでツルゲーネフの猟人日記のオーディオブックを買ってしばらく流していたことがあります。

当時のロシアの上流階級ではフランス語が教養として学ばれ使われていたことは知識としては知っていましたが、猟人日記でもフランス語の小説の数ページが紛れ込んだかと思うくらいはフランス語が読まれているところがあったりします。

当時のロシア語文学をやろうとするとフランス語もやらないといけないのか?(ここは踏み込まないようにしておこう)

LitResの使い方(補足)

本投稿の後で、もう少し調べた内容をこちらにまとめました。
補足というほどでもないのですが、LitResの著者ページは武骨なデザインながら地味に便利だったり、ということでそれらについて記載したものです。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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