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【TreePlanting.3】「文字を置くだけ」の難しさ。

(前回記事【TreePlanting.2】の続きです)


外側に向けよう。


「下川を表現する」
という楽曲の制作。
それとほぼ同時進行で、「制作した楽曲をCDとしてまとめる」という話が浮上してきました。

制作した楽曲は、「下川町のイベントでの演奏」という形で披露される予定です。
それってつまり、ライブパフォーマンスの演目という「水モノ」としての発表で、聞いた人の「記憶の中」にしか残らない。
しかも、それが聞けるのは下川町の「町民」がほとんどで、町外の方にはほぼ聞かれないまま、楽曲は儚く消えてく。

…それだけで、いいんだろうか?


「作品」として見れば、「そういうものだ」と捉えることも、もちろんできる。
打ち上げ花火のように、一瞬の美しさを誇るのでもいい。

でも、この取り組みは、下川町の「プロモーション」だよな。

発信し、魅力を伝え、興味を持ってもらい、好きになってもらう。

町に関わりたいと思ってもらえて、移住してきてもらえるところまでを目指すのが、成果なはずで。

もし、制作過程の動画を見て興味を持ってくれた人が下川の「外」いたとして、その人は楽曲の完成形は、聞いてみたいと思うんじゃないかな。

現時点、「イベントでの披露」の形だけだと、その完成形を聞けるのは下川町民がほとんどになってしまうわけで、それは「プロモーション」としてはいいのかな?

「自分たちの町はこんなことをやってる」って町民に誇ってもらうため、っていうインナーブランディングとしては間違っていないだろうけど、もっと直接的な「外に向けてのプローモーション」もすべきじゃないかな。
この楽曲制作は、それができるんじゃないかな。

何より今、「外の人間」の僕は町の思いやストーリーを知ることができて、「下川」がとても素敵に見えている。きっとそれを「外」に伝えられれば、同じように素敵に感じてくれる人はたくさんいるだろうって思ったんですね。

…あれ?岩見沢のワイナリーでも同じこと言ってたな笑


僕らの心に響いた「下川」のストーリーから、楽曲は生み出されていく。
それはきっと、聞いた人に「下川」を伝えるものになる。
だから「形」にしよう。
形にして、多くの「外の人」にそのストーリーが届けられるように

そんなわけで、CD制作が始まったのでした。


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「下川」のピアノ。


作るCDは「下川」というテーマです。
楽曲は「下川」に滞在して、そこで生まれたもの。
であれば、「音」も「下川」であるべきじゃないだろうか。
楽器も、奏られる音も、その音の響き方や、受け止める空気も。

下川の町には、「スタインウェイ」のピアノがありました。
ただ、これを弾きこなせる演奏者が、この町にはいない。

…じゃあ、そんな素晴らしいものが、なぜあるの?笑

ま、そのへんの経緯はわかりかねますが…、この素晴らしいピアノが道北の田舎町に所有されてるって時点で、意識の高さはうかがえるよね。


レコーディングは、観光協会の全面協力のもと下川町の公民館を貸し切り、この「スタインウェイ」のピアノをメインで行われることになりました。

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さて。
「CDとして形にする」という着地点なので、整えとして、CDジャケット等のグラフィックデザインが必要となってきます。
そのデザインは、僕が担当いたしました。

幸い、というか、おそらくそこまでの業務を僕が担当できることを認識した上で、観光協会長は「イベント出演の提案」をしてきたんだと思う。きっとCDを制作するところまでの話になるだろうと見越して
だから、僕も一緒に下川に滞在させ、同じ景色を見せた。きっとそうだ。

…デキル男は、これだからコワイわ。。笑

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ニヤリ


「下川」のデザイン。


CDのジャケットに使用する写真は、楽曲制作の時点で、もう決まっていました。

あの写真でしょ?

ピアノのハジメさんと話したとき、僕らのイメージはすでに一致していた


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僕のプロフ写真もそうなんだけど、被写体の芯を捕まえている写真って、一見するだけでそう思わせる強さを持ってる


ちなみにCDジャケット用に写真を採用させていただいたフォトグラファーさんも、呼び寄せられるように「下川」に入ってきた人でした。
同じく「外の人」が切り取る写真だからこそ、下川の「魅力」と感じる部分が、僕らとも一致するのかもしれないと思った。


よし。
写真はもう、決まっている。
デザイン業務の「作業量」としては、あとはそれに少し文字を置くだけ。


…だけど、それがすごく難しかった。。



ジャケットのデザインを考えるのは、「札幌」の自分の事務所でのPC作業。
でも、「文字を置くだけ」の簡単な作業が、なかなか進まない。。
もっと紐解いていえば、

「ここに文字を置く」というのが正解なのか、
ちゃんと、それが「下川」という表現になっているのか、
でも、そのジャッジさえも正しいかどうか、札幌での作業では判断できない。

そんな感じ。
車の騒音が聞こえる国道沿いの「札幌」の事務所で、研ぎ澄まされた「下川の空気」を考えることが、これほどまでに難しい。

なんでミュージシャンがロンドンまでレコーディングに行くのかとか、ちょっとわかった気がした。


そして、僕は思いたって、「下川」に向かうことにしました。


楽曲制作で滞在させてもらった貸別荘を予約し、一人きりで2泊3日の滞在。
2泊にしたのは、

その空間で朝目覚めて、時間が経過していく移ろいや光、音、空気を感じるため

そのために、「中1日」がどうしても必要だったからです。


「写真に少し、文字を置く」
という、作業のためだけに。

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ミリ単位で「存在感」を調節する。


「音を聞いてイメージするもの」と、ジャケットのビジュアルが乖離してはいけない。逆に、「ジャケットを手に取って想像したイメージ」と、聞こえる音が乖離してもいけない。
そして、それらはともに「下川」を、同じ印象で表現していないといけない。

たかがジャケット。されどジャケット。

気づけばいつの間にか、表現者であるピアノのハジメさんと、僕は同じ土俵に立たされていることに気づいたのでした。

あわわ。

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下川に一人滞在して向き合った「デザイン作業」は、驚くぐらいスムーズに、導かれるようにすぐにまとまりました。

具体的に、札幌でやっていたときと、何が変わったんだろう?


きっとハジメさんが前回記事のインタビュー動画で言っていた「存在感の調節」というやつだと思います。
それが如何に重要で繊細なものか、実際に制作に向き合ってみて、体感することができた。
ほんとにミリ単位のズレで、いとも簡単に、しっくりいかないものになってしまうんだなぁ。みつを。



「Tree Planting」


「下川町」のCD。
どこらへんが下川かと問われれば、「存在感の具合」でしょうね。
ネーミングや意味も含め、「らしい」存在感。

もちろん、音も。

ピアノ曲ですが、アンビエントな空気感もありつつ、
ハジメさんのフィールドでもある、現代音楽や即興演奏のカラーもあって。
それらが、「下川」らしい存在感の具合で、まとめられた楽曲。

僕は作業をするときや眠る前、「空気としての音楽」を求めたいときに、このCDをよく聞いています。
この「空気感」が心地よいのです。

試聴の動画を貼ってみますので、よろしければお聞きいただけると嬉しいです。


ちなみにCDの1曲目は、元「営林署」の庁舎で録ったもの。
今は昭和の建物をそのままに、地域のコミュニティ施設となっていて、そこに1台の古いアップライトピアノがありました。
下川の「森」を見守ってきた建物の空気感、それをどうしても収録したかった。

5曲目は、イベントで披露した際の楽曲演奏の録音です。
即興演奏が入って別の趣きになっています。
下川の中の「イベントや会場の空気」のフィーリングを、即興演奏で表現したということ。

この上記2曲は、スタインウェイではない違うピアノを使用しています。


…ということで、これまで散々と記事を書いてきて、やっと実際に届けられるものについて書けましたw

「プロモーション」の一環で制作したものですので、一般の流通には出ていないCDです。
よろしければ是非お手にとって、耳にして、「下川」を感じていただけたら嬉しく思います。



読んでいただき、ありがとうございました!
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!頑張って書き重ねていきますので、是非またお越しください。