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なつやすみの嘘日記

記録をつけたい。そんな理由から毎日日記をつける事にした。
寝る前に机に向かい、Rollbahnの手帳にその日あった事や感じたことを思い出しながら書く。

人生で日記を書くのは久しぶりの事で、おそらく小学生の夏休みの宿題振りではなかろうか。

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典型的な後回し小学生だった私は(今もそうだが。)、毎年夏休みの宿題といえば8月後半、特に4週目に入ってから宿題を始めるのが常だった。

ドリルや工作、自由研究なんかは頑張れば時間を詰めて終わらせる事はできる。
だが、毎日の日記ともなると別だ。
夏休みのような超長期休暇ともなると、夏祭りや家族旅行、祖父母の家に遊びに行ったり、友達と朝から晩まで遊んだりイベントには事欠かないようなイメージがあるが、平日ともなると両親は働きに出ているし、今みたいにスマホがあるわけでもないので、友達とLINEして遊びの計画を立てられるわけでもないが故に、実際は何事もなかった日の方が多いのである。

そんな何事も起こらなかった日の日記は特に書くこともなく、
何かイベントをでっちあげる他ない。
しかし、同じクラスのやつらとのエピソードをでっちあげるわけにはいかない。クラス全員の日記に目を通す担任の先生に矛盾がばれてしまうからだ。

仮に8月4日の土曜日にA君とプールに行ったエピソードをでっちあげたとして、私とプールに行ったことになっているA君は家族で7泊8日のヨーロッパ周遊旅行に出かけていたとしたら…..。

日本に存在しないはずのA君とプールに行くことなんかはできないわけで、
私の日記が嘘日記だったということが簡単にばれてしまうのである。

もし担任の先生がヨーロッパ旅行に精通していて、
「7泊8日ではヨーロッパを周遊できないよ」と思ってくれた場合のみ私の嘘日記が正とされ、Aくんのヨーロッパ旅行が嘘として扱われることになるかもしれないのだが、そんな可能性はほぼ0%に等しい。

そもそも毎日なにかしら予定があるような小学生はいるのだろうか。
毎日学習塾の夏季講習に行く予定があったとしても、そんな日の日記なんかは書くことが少ないだろう。まさか、その日学んだことを日記にまとめて復習としろということだったのだろうか。いやそんなわけない。

ただ、もしかしたら毎日何かあったかどうかと考えてしまうのは、
大人になった今だからこそ考えてしまう事なのかもしれない。
今はあの当時よりも人生経験を積み重ねて、人生で新しい発見というものが少なくなってきたように感じる。そのため日々に新鮮味がなくなったように感じられ、毎日同じような一日を過ごしていると錯覚している。

昔はいろんな事にフレッシュに驚き、喜んでいただろう。
トカゲに噛まれてもそんなに痛くない事とか、捕まえたザリガニを放置したらめっちゃくちゃ臭くなる事とか、ワックスがけをした後の教室は滑りやすいこととか!

何事にも驚き、感動していたあの頃の知的好奇心は今では懐かしくもあり、また同時にちょっと面倒な感情だなと感じるのは完全な大人になってしまったからだろうか。



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