第71話 母:仕返し

 これもまた幼稚園の頃の話なのだが、昔、母に怒られてどうにも納得できないことがあった。
 肝心の怒られた内容は覚えていないのだが、とにかく
「なんでそんなことで怒られなきゃいけないの?」
 と、強く思ったのだけは覚えている。
 だからボクは決心した。
「仕返しじゃーーー!!」
 しかし、幼稚園児が一体どう仕返しするというのか?
 行動範囲もそして思考能力も限られている。
 でも考えたよ。
 考えに考えたよ。
 そして思いついたんだ。

 ボクはおもむろに玄関へと移動した。
 そしてボクは母がいつも履いている靴に狙いを定めた。
 母の靴を隠す?
 そんなのスマートじゃない。
 バレるに決まっている。
 いたずらというものはもっとクールにやらなきゃいけないのだ。

 ボクは自分の靴を左手に取る。
 トントントン。
「ふふっ」
 いい具合だ。
 ボクはもう片方の右手に母の靴を持つ。
 そして、左手に持った自分の靴を裏返し、母の靴へドッキングした。
 サラサラサラサラ~
 ボクは自分の靴に入った砂を全て母の靴へと流し込んだのだ。
 しかしそれだけでは手を止めない。
 続いて兄の靴。そして父の靴。
 こうしてボクは全ての靴の砂を母の靴に流し込むことに成功した。
 これぞいたずら!!
 これぞ完全犯罪!!
 ボクは見事仕返しをやり遂げたのだ!!

 この地味にいたずらをボクは継続的に行った。
 毎日、毎日。
 自分に課せられた使命のように欠かさずに行った。
 でもそれが仇となった。
 見つかった(笑)
 バレた(笑)
「なんで外に出かけてないのに砂が靴に入ってると思ったら…あんたやったんか!!」
 怒られると思ったが母は笑っていた。
 呆れていたのかもしれない。
 とりあえずお咎めなしだった。

 皆さんもこの地味ないたずら、ぜひやってみてほしい。
 毎日やるとさすがにバレるが、1度や2度なら絶対にバレない。
 ちきしょうと思ったときにおススメだ。

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