第82話 兄:どうしても遊びたい!!

 これは多分、ボクが生まれる前の話。
 母がときどき思い出しかのように話し出す。
 幼い頃の兄はよくうんちするのを我慢して遊んでいたらしい。
 母方の祖父と祖母の家に遊びに行ったときに限って。
 とにかく楽しくて楽しくて仕方がなかったらしい。
 でもうんちはしたい。
 お尻をふりふりしながらごまかしながら遊んでいたらしい。
 それを見かねた祖母が、
「うんちしたいんでしょ~?してらっしゃい」
 と諭しても、
「んんー!!」
 と拒んで遊ぶことを選んだそうな。

 ボクはそれを聞いてゲラゲラ笑った。
「バカじゃん!!」
 肝心の兄も全然覚えてないらしく、
「そんなん覚えてねぇや」
 と本人もゲラゲラ笑っていた。

 それにしても生理的現象を我慢してまで遊びたいとは一体どれほど楽しかったのだろうか?
「うんちをする時間が勿体ない」
 ボクは今までそんな境地にたどり着いたことがない。
 全身全霊とは正にこういうことを言うのだろう。

 ちなみに、ボク自身はよくお話を書いていてその現象に陥る。
「全部書き切ってからトイレに行くんだ!!」
 兄と同じようにお尻をふりふりさせながら書いていることが度々ある。
 でも大概の場合、断念する。
 トイレに駆け込み寺だ。
 それに書き切ったとしても、内容がふりふりで結局やり直すはめになる。
 全身全霊の道のりはまだまだ遠そうだ。

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