第43話 父:存在感のあるおなら

 うちの父はおならがすごい。
 いつ何時でも素晴らしいおならをする。
「ブー!!」
 爆音が部屋中に響き渡る。
「どうだ、俺のおならすごいだろ?」
 そんな自己主張をしているように、毎回見事なおならをする。
 ボクは父がすかしっ屁するところを見たところがない。
 絶対に大きな音と共にケツからガスを噴き出すのだ。
 逃げも隠れもしないところは世の政治家に見習ってほしいものだ。

 そんな父のおなら。
 自己主張が強いのは音だけじゃない。
 臭いもすごい。
 寧ろ、音は前菜でメインディッシュが臭いと言ったところか。
 もうアルマゲドンだ。
 鼻がひん曲がるんじゃないかと思うほど強烈なおならをする。
 あまりの臭さに内臓が腐ってるんじゃないかと心配したほどだ。
 でも父は至って健康だ。
 悪いところは別に何もない。

 でもそんな臭いおならをする父をボクら家族は決して許さない。
 だってあまりの臭さで腹がたつほどだから。
「もう~、止めてよ~」
「おいー!!」
 などとボクと兄は言う。
 しかし、母は
「んん゛――!!」
 と声にならない声でよく怒っている。
 昔、母に聞いたのだが、父はこのアルマゲドンを寝ながらかますらしい。
 所謂、寝っ屁だ。
 ちなみに父はいびきもかく。
 もう、うるさいわ臭いわで大変らしい。
 ある晩、父はアルマゲドンをかまして母は必死にその臭いに耐えていて、やっと臭いが落ち着いてきたときに
「ぷぅ~」
 と音だけかわいい寝っ屁を再度かましたらしい。
 でも臭いはちゃんとアルマゲドンで母は殺意を覚えたらしい。

 そんな不満をボクらがどれだけ父に訴えても父は動じない。
「あっはっは!!」
 と笑っている。
 たくましいと言えばたくましいがこちらとしてはやはり腹が立つ。

 しかし、現在は父が年老いてきたせいか、その臭いは落ち着きつつある。
 父のおならが無臭になるそんな日も近いのかもしれない。

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