第51話 兄:バイト先でゲームが流行る

 兄が大学生になり、学校が終わるとバイトに勤しむようになった。
 平日、休日関係なく。
 今までに比べ、目に見えて家にいる時間が減っていた。
 まぁ、大学生は人生の夏休み。
 存分に謳歌していたのだろう。

 そんな兄のバイト先でゲームが流行っているようだった。
 兄のバイト先にいる女性たちがゲームのクオリティに驚いていたようだ。
 当時はプレステ2が活躍していた。
 だんだんと現在のゲームに近づきつつある頃である。
 今までゲームをしたことがない女性たちにとって、衝撃的だったらしい。
「ゲームってこんなにも面白かったの!?」
 みんな口を揃えてそう言ったようだ。

 それから兄がバイトへ行くたびにバイトの休憩室に新品のプレステ2があったらしい。
 兄が、
「これどうしたの?」
 と尋ねると、
「あ~、それ私の。バイト来る前に買ってきた」
 というように、続々とバイト先の女性がゲームの世界に入り込んだそうだ。
 その頃の兄は、そこまでゲームをしなくなっていたが、それでもゲームの楽しさを知ってもらって嬉しかったようだ。
 ちなみにそのバイト先ではファイナルファンタジーⅩが流行っていたそうだ。
「FF楽しい!!映像すごい!!」
 ものすごく感動していたそうな。
 家に帰って来た兄がそれを楽しそうにボクに話してくれた。
 ただ、
「俺たちの時代ってさぁ、FFって言わずに「ファイファン」って言ってたよなぁ?」
 と主張していた。
 俺たちの時代ってなんだよと正直思ったが、
「あぁ…そうだね」
 と答えておいた。
 まぁおそらく、兄の言っている俺たちの時代とは「ファイナルファンタジーⅢ」の頃だろう。
 ファイナルファンタジーⅩよりも10年以上前の作品だ。
 ボクと兄のファイナルファンタジー処女作でもある思い入れのある作品だ。

 確かに今のファイナルファンタジーは「FF」という感じだ。
 こ洒落た感がある。
 しかし、「ファイナルファンタジーⅢ」の頃は「ファイファン」という感じだった。
 兄は懐かしさを感じるのと同時に、消えゆく「ファイファン」に寂しさを覚えていたのかもしれない。
 ゲームをあまりやらなくなっても、なんだかんだ言ってゲームが好きなんだなぁと思った。

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