第69話 兄:先にゲームを進められるとめちゃくちゃ怒る
エピソードタイトルが長くなりそうなので少し端折ったが、兄は自分が買ったゲームにおいて、先に進められることに対し、いつもめちゃくちゃ怒っていた。
まぁそれもそうだ。
せっかく自分が買ってきたのに、弟が自分よりゲームを進めているなんて理不尽この上ない。
毎回よく怒られていたのに、毎回ボクはそれを破っていた。
だって仕方がないじゃないか、ゲームをやりたいんだから(笑)
どうやら兄は、自分がプレイした所からボクが先に進んでいる所までの差の部分が楽しめないようだ。
一気にやる気を無くすとよく言っていた。
だから毎回、ボクの進んでいる所に追いつくまでは腹を立てながらやっていた。
その部分はボクに対する憎悪でしかなかったみたいだ。
一番よく怒っていたのは「ファイナルファンタジーⅥ」だった。
あれは怒った、怒った(笑)
兄が買ったゲームを弟のボクがプレイするのを許されるのは、大概兄が不在の時だ。
ボクはいつも兄のプレイを後ろから見ているので、自分がやるときは困ることなくサクサク進めてしまうのだ。
だからついつい先に進んでしまった。
本当に悪気はないのだ、悪気は。
神がこれを罪とするならば、ボクはその神に抗うべく立ち上がる。
そのくらいボクにはしょうがないことのように思えた。
起こり終えた兄は、ボクに追いつくべくゲームを開始する。
それで兄が面白いのは、ボクをその場に拘束することだ。
普通なら、
「おめぇ、どっか行け!!」
と言うと思うのだが、兄はそれを良しとしなかった。
「俺がプレイするのをしっかりと見てろ。宝箱の取り忘れがあったらすぐに言え」
というスタンスだった。
小学生のボクはゲームが大好きだったので、それはご褒美みたいな物だった。
「はい!!」
と大きな声で返事をして、いつものように斜め後ろから兄とゲームキャラの勇姿を見守っていた。
あれから時間経って、兄はゲームを全くやらなくなってしまったし、ボクもゲームの情熱は薄れてしまった。
時というものは、ときに残酷だ。
あれだけ2人とも好きだったのに。
諸行無常である。
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