第８０話　父：アイスは１日１個だけれど…

　アイスは１日１個まで。
「贅沢は敵だ！！」
　とまでは言わないが、やっぱりアイスは１日１個までにしようね。
　誰かが言ったわけじゃないけれど、それが我が家のルールだった。
　この方針は良かったと思う。
　うん、本当に。
　これが無かったら、ボクは今よりもっと我慢ができない人間だっただろう。

　しかし、このルールを破る奴がいた。
　それが父だ！！
　でもこれは本当にファインプレーだった。
　父はときどきハーゲンダッツを買ってきてくれたのだ。
　そんなときは２個目のアイスが食べられた。
　今より若干安かったかな？
　１個２５０円だった。
　４人家族だったから４つで１０００円。
　普通のアイスなら当時１０個近く買える。
　なんとも高級品だ。
　でもその価格に見合う味だった。
　家族の誰もがおいしい、おいしいと口を揃えて言った。
　しかも食べる時間帯が夜の９時くらいで、何か悪いことをしている気分がして余計においしく感じられた。

　我が家で１番人気だったのが、クッキー＆クリームだった。
　あれを開発した人、マジ天才！！超すげぇ！！
　語彙力がないのでそんな表現になってしまうが、本当に素晴らしい発明だと思う。
　ただ、クッキー＆クリームは我が家だけでなく世間でも人気だったようで、在庫が少なく家族の人数分買えないということが度々あった。
　そんなときは仕方ないので、バニラを食べたり、チョコレートを食べたり。
　ボクはチョコレートが多かった気がする。
　クッキー＆クリームと同じくらい好きだった。

　そんなボクも大人になる。
　アイスは１日１個まで。
　あれだけ守っていたのに…毎日破るようになってしまった。
　あのちょっと容量が控えめなハーゲンダッツ６個入りで１０００円弱の商品を買って、それを１日に４つくらい食べるようになってしまった。
　ボクはお酒もタバコも一切やらない。
　その代わり、お菓子やアイスが大好きになってしまった。
　注意する者がいないと、好きなだけ食べてしまう。
　人間の欲は際限がないから恐ろしい。
「さすがにこれはやばいぞ！！」
　そう思うようになって、アイスを買い控えるようになった。

　また、クッキー＆クリームが１番好きだったのに、いつの間にか王道のバニラが１番好きになってしまった。
　お腹の脂肪を気にしてアイスを控え、みんなが選ぶ王道のバニラを好む。
　つまんねぇ大人になっちまったぜ！！