第63話 兄:みんなと一緒に倒したベガ
毎年、お盆とお正月は母の実家であるおばあちゃんの家に遊びに行っていた。
ボクはおばあちゃん家に行くのが大好きだった。
ある夏の暑い日、ボクらは外で遊ばず家の中でゲームをしていた。
従妹を含め、ボクらはある1人の男に戦いを挑んでいたのだ。
その男の名前は「ベガ」。
「ストリートファイターⅡ」に出てくるラスボスキャラである。
従妹兄弟の中で一番年上のお兄ちゃんが
「おい、ベガみんなで倒そうぜ!!」
この鶴の一声で始まった。
ちなみにこのお兄ちゃんはボクの兄のことではない。
兄はみんなを引っ張るタイプではなかった。
どちらかと言うと、
「分かりました!!」
というタイプだった。
特にこの一番年上のお兄ちゃんに対しては犬のように言うことを聞いていた(笑)
ボクらは一致団結してこのベガに挑んだはいいが、この「ストリートファイターⅡ」のベガさん…とにかく強かった。
彼の繰り出す技と技が組み合わさり、流れるような動きをしていた。
それにボクらは成す術がなかった。
自分たちが動かすキャラクターが、
「うーおうーおうーお…」
と叫びながらKOされていた。
確か難易度が1(優しい)~8(難しい)まであり、ボクらは初期設定の4でプレイしていたが、それでもベガはめちゃくちゃ強かった。
一度負けると次の人へコントローラーを回すのだが、ボクらは何度もコントローラーを回した。
ちっとも勝てなかった。
彼に「忖度」という言葉を覚えてほしいくらい容赦なかった。
非情だった。
正にラスボスだった。
70回くらい倒されただろうか?
これもう無理なんじゃないか?とみんなが諦めムードだったとき、1人の男がベガを倒した。
それがボクの兄だった。
「はどぅーけん!!」
兄が操作するリュウが放った波動拳がベガにヒット。
ベガは弧を描くように宙を舞い、そして地面に叩きつけられた。
ボクらが上げた声は「やったあ」ではなく、
「あっ…倒した!!」
だった。
あれだけ強かったのに最後はあっけなく倒れて…何か拍子抜けだった。
そして何より、兄がベガを倒したことがボクの中で許せなかった。
「ボクがベガを倒すはずだったのに!!」
悔しい気持ちでいっぱいだった。
ベガにはもうちょっと根性を見せて欲しかった。
今思い出してもあのときみんなでやった「ストリートファイターⅡ」はめちゃくちゃ楽しかった。
やっぱりみんなで遊ぶゲームに勝るものはないと思う。
大人になってしまった今、あのときの楽しさを味わうのはちょっと無理そうだ。
だから今ボクの心の中にある、この思い出を大切にしようと思う。
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