第64話父:オセロがクソ弱い
小学校4年生の頃、一時期オセロにハマった。
というか、オセロを覚えたと言った方がいいかもしれない。
今まで一度も触ったことがなく、初めて遊んだのが小学校4年生だった。
オセロのルールは簡単だ。
将棋やチェスのような駒の動かし方など覚えなくてよい。
挟んで裏返す。
バカなボクにとってはもってこいのゲームだった。
初めて遊んだときは友達と触った程度。
だからもっとやりたいと思った。
そんなこんなでボクは父に頼んでスーパーファミコンの「オセロワールド」というゲームを買ってもらった。
実物を買うより、ゲームの方がコンピュータとも戦えるという理由でゲームにした。
最初は全然勝てなかった。
4つ角の重要性を知らなかったボクはとにかくたくさんめくることだけを考えていた。
「よしよし、優勢、優勢」
そんなことを言っていたのだが、終盤はほとんどコンピュータのコマになっていた。
それもそのはず。4つ角を全て取られているのだから。
勝てるわけがない。
ちなみにこの「オセロワールド」というゲームはコンピュータが差すときに毎回何かセリフを吐く。
自分の戦況に応じてしゃべるのだが、ボクと戦ったときのコンピュータはいつも上機嫌だった。
「お前さんはホントにバカだねぇ」
そんなセリフを打つたびに吐いてくるのだ。
腹が立って仕方なかった。
結局ボクはちょっとの間、1面さえもクリアすることができなかった。
1週間か2週間くらい経っただろうか?
1面はクリアすることができ、2面のコンピュータともいい勝負をできるようになっていた。
そんなとき、ボクは仕事が休みの父に勝負を挑んだのだ。
父もやる気満々で、
「近所でめちゃくちゃ将棋の強いおじいさんが居て、俺はその人に唯一本気を出させた。だからオセロだって強いぞ!!」
マジか…ボクはそれを聞いて身構えた。
父は意気揚々とコントローラを握る。
きっとボロクソにされてしまうんだろうなと思った。
だから父に胸を借りるつもりで挑んだ。
結果…ボロ勝ちしました(笑)
日にちは開けたけど、全部で10回くらい戦って1度だけ負けた。
後は全部ボクが勝った。
父は負ける度に
「あれ?おかしいな~」
と呟いていた。
父は本当に将棋も強かったのだろうか?
近所のおじいさんも本当に強かったのだろうか?
「本当に俺強かったんだって!!」
「あはははは、分かった、分かった」
親と子のセリフが逆転していた。
ちなみに兄にも父と戦わせてみたが、やっぱり兄が勝った。
それもそのはず、兄はボクよりも強いのだ。
負けるはずがない。
じゃあボクらがものすごく強いのか?
と思われるかもしれないが、それはない。
「オセロワールド」の3面で早々にボクらは匙を投げた。
3面から鬼のように敵が強くなり、全然勝てなくなったのだ。
ということでボクと兄もオセロは弱い。
そしてボクらに負ける父はクソ弱いのだ。
父とはもう戦わなくていいが、オセロワールドにはいつかリベンジしたい。
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