消費者を集団としてとらえてはならない
[要旨]
現在は、自社商品の販売相手を、集団としてとらえると、反応が得られにくくなっています。そこで、効果的なマーケティング活動を行うには、商品の販売対象は、性別、年齢、職業だけでなく、居住地、価値観、趣味、個性などで絞り込んでいき、あたかもひとりの顧客像、すなわち、ペルソナを描き、それを対象に販売活動を行うことが求められています。
[本文]
今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、マーケティング活動の最初の手順の市場調査である、フィージビリティスタディについて説明しました。そして、市場調査に続くマーケティング活動は、STP、すなわち、ポジショニング、ターゲティング、ポジショニングですが、これに関し、鈴木さんは、絞り込みの重要性についてご説明しておられます。
「広告史上、最も偉大なコピーライターとされ、広告の神様とも呼ばれる、クロード・C・ホプキンズは、『消費者を集団としてとらえてはならない』、『重要なのは、個人に照準を合わせることだ、広告でも対面販売と同じように消費者と扱う、消費者の欲求に焦点を合わせる、相手が目の前に立ち、何らかの欲求を訴えていると考える』と言っています。今日では、『ペルソナ』と呼ばれる、象徴的な架空の顧客像を、具体的に詳しく描き出して、顧客イメージを絞り込む手法が使われるようになっています。年齢や性別といった、単純な顧客の属性だけによって、顧客をひとくくりにできなくなってきたからです。
氏名、年齢、性別、外見(写真)、居住地、家族、趣味、学歴、職業、勤務先、役職、個性、価値観、生活パターンなどといった内容までつめます。そして、絞り込んだ顧客以外は、思い切って捨て去る覚悟が必要です。(中略)そもそも、経営資源には限りがあります。その資源を集中して投下してこそ、効果を発揮します。孫氏の兵法が強調するように、戦いの基本は戦力の集中です。十をもって一をせめる、10人がかりでひとりと戦うように、戦場を絞り込んで、圧倒的に有利な状況を作り出して行けば、必ず勝てます」(86ページ)
鈴木さんがご指摘しておられるように、絞り込みの重要性については、多くの方がご理解されると思います。しかし、鈴木さんも、別のところでご指摘しておられるのですが、事業活動を行っている側とすれば、多くの顧客を得ようとして、「総合○○」とか、「トータル○○」などと、自社が幅広い人たちに対応できるというようなアピールをしてしまいがちです。
しかし、それは、現在のマーケティングの観点からは、誰からも見向きもされなくなる活動であり、逆効果になります。そこで、ホプキンズが指摘しているように、「消費者を集団としてとらえてはならない」という言葉を頭の中に入れておくとよいと思います。現在は、自社の商品を売りたい相手は、年齢や性別だけでなく、居住地、職業、価値観などで絞り込んで、架空の顧客像である「ペルソナ」を描き出して、それを対象に販売活動をしなければ、効果的な事業活動が不可能になっているわけです。
ただ、一方で、顧客を絞り込み過ぎると、売上額の確保が難しくなるのではないかという心配をする人もいると思います。これについては、私は、一定の関係ができた顧客に対して、自社の提供する別の商品を販売したり、または、別のペルソナに対応した別の販売チャネルを作るなどの方法があると考えています。ただし、これも鈴木さんがご指摘しておられますが、経営資源は限られていることから、それを効率的に活用するには、まず、ひとつのペルソナを描くところから始めることが大切だと言えるでしょう。
2023/3/1 No.2268
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